434 / 697
第四幕
家族内でさえマウントを
しおりを挟む
アオも起きてきたことだし、夕食の用意を始めることにする。
「やったあ♡」
喜ぶアオも、僕達がいない間は、椿と一緒に二人で食事の用意をしてたそうだ。だけど、必ずしも料理が得意というわけじゃないアオは、むしろ、
『椿を手伝ってただけ』
というのが正直なところだったみたいだね。椿は、僕や悠里や安和と一緒になって料理をしていたことでいろいろと覚え、自分でもできるようになっていったから。
だけど、
「でも、ハンバーグはママが作ってくれるのが好き♡」
すっかり調子を取り戻した椿が笑顔で言う。
「それは僕も同感だ」
悠里が続く。さらには安和も、
「私も。不思議と一番口に合うんだよね。美味しいだけならプロが作ったもののが美味しい気もするけど、すごく安心するんだよ。ママのハンバーグ」
とか言うものだから、
「え~? そうかなあ」
アオが照れくさそうに笑いながら、
「じゃあ、私もみんなにハンバーグをご馳走することにしますか」
そう言って、結局、家族全員で料理を作ることになった。我が家のキッチンは、元々、こうして家族全員で料理を作ることを前提にリフォームしたものだから、それができるんだ。
そして、僕と悠里と椿でカニクリームコロッケ。アオと安和でハンバーグをそれぞれ作る。と言っても、安和はアオを手伝うだけで、ハンバーグそのものを作るのはアオだけどね。
「ミラノ大聖堂ってのも見に行ったんだけど、なんて言うか、『すごい』というの以上に<狂気>を感じたね。今みたいに重機や便利な道具もなかった時代にあれだけのものを作ろうなんて、はっきり言って正気じゃないよ」
ハンバーグ用の具材の用意をしつつ安和がそんな風に旅の思い出を語ると、アオは嬉しそうに笑顔で、
「へえ! そうなんだ!」
応えてくれる。アオにとっても、悠里や安和が語ってくれるあれこれが創作に活きるからね。そういう意味でも嬉しいんだろうな。そこに僕が、
「そんな人間達に比べると、僕達吸血鬼は、ああいった荘厳な建築物のようなものはほとんど残していないんだ。それはたぶん、僕達吸血鬼は<ハッタリ>を必要としていなかったんだろうね」
と付け足すと、
「あはは♡ そりゃそうか。人間の場合は、権威とかなんとかで『自分はすごいんだぞ!』ってのを示す必要もあるけど、吸血鬼はそんなことをしなくても強いもんね」
そう理解してくれた。こんな風に『打てば響く』から、話していて楽しい。これが僕の<家族>だ。
なのに人間は、家族内でさえマウントを取り合ったりもする。自分の気に入らない発言をした相手は、徹底的に叩き潰そうとしたりする。
そうやって自分がマウントを取れる相手を作るために、家庭を作ったの?
「やったあ♡」
喜ぶアオも、僕達がいない間は、椿と一緒に二人で食事の用意をしてたそうだ。だけど、必ずしも料理が得意というわけじゃないアオは、むしろ、
『椿を手伝ってただけ』
というのが正直なところだったみたいだね。椿は、僕や悠里や安和と一緒になって料理をしていたことでいろいろと覚え、自分でもできるようになっていったから。
だけど、
「でも、ハンバーグはママが作ってくれるのが好き♡」
すっかり調子を取り戻した椿が笑顔で言う。
「それは僕も同感だ」
悠里が続く。さらには安和も、
「私も。不思議と一番口に合うんだよね。美味しいだけならプロが作ったもののが美味しい気もするけど、すごく安心するんだよ。ママのハンバーグ」
とか言うものだから、
「え~? そうかなあ」
アオが照れくさそうに笑いながら、
「じゃあ、私もみんなにハンバーグをご馳走することにしますか」
そう言って、結局、家族全員で料理を作ることになった。我が家のキッチンは、元々、こうして家族全員で料理を作ることを前提にリフォームしたものだから、それができるんだ。
そして、僕と悠里と椿でカニクリームコロッケ。アオと安和でハンバーグをそれぞれ作る。と言っても、安和はアオを手伝うだけで、ハンバーグそのものを作るのはアオだけどね。
「ミラノ大聖堂ってのも見に行ったんだけど、なんて言うか、『すごい』というの以上に<狂気>を感じたね。今みたいに重機や便利な道具もなかった時代にあれだけのものを作ろうなんて、はっきり言って正気じゃないよ」
ハンバーグ用の具材の用意をしつつ安和がそんな風に旅の思い出を語ると、アオは嬉しそうに笑顔で、
「へえ! そうなんだ!」
応えてくれる。アオにとっても、悠里や安和が語ってくれるあれこれが創作に活きるからね。そういう意味でも嬉しいんだろうな。そこに僕が、
「そんな人間達に比べると、僕達吸血鬼は、ああいった荘厳な建築物のようなものはほとんど残していないんだ。それはたぶん、僕達吸血鬼は<ハッタリ>を必要としていなかったんだろうね」
と付け足すと、
「あはは♡ そりゃそうか。人間の場合は、権威とかなんとかで『自分はすごいんだぞ!』ってのを示す必要もあるけど、吸血鬼はそんなことをしなくても強いもんね」
そう理解してくれた。こんな風に『打てば響く』から、話していて楽しい。これが僕の<家族>だ。
なのに人間は、家族内でさえマウントを取り合ったりもする。自分の気に入らない発言をした相手は、徹底的に叩き潰そうとしたりする。
そうやって自分がマウントを取れる相手を作るために、家庭を作ったの?
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
幼馴染はとても病院嫌い!
ならくま。くん
キャラ文芸
三人は生まれた時からずっと一緒。
虹葉琉衣(にじは るい)はとても臆病で見た目が女の子っぽい整形外科医。口調も女の子っぽいので2人に女の子扱いされる。病院がマジで嫌い。ただ仕事モードに入るとてきぱき働く。病弱で持病を持っていてでもその薬がすごく苦手
氷川蓮(ひかわ れん)は琉衣の主治医。とてもイケメンで優しい小児科医。けっこうSなので幼馴染の反応を楽しみにしている。ただあまりにも琉衣がごねるととても怒る。
佐久間彩斗(さくま あやと)は小児科の看護師をしている優しい仕事ができるイケメン。琉衣のことを子供扱いする。二人と幼馴染。
病院の院長が蓮でこの病院には整形外科と小児科しかない
家は病院とつながっている。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
金沢ひがし茶屋街 雨天様のお茶屋敷
河野美姫
キャラ文芸
古都・金沢、加賀百万石の城下町のお茶屋街で巡り会う、不思議なご縁。
雨の神様がもてなす甘味処。
祖母を亡くしたばかりの大学生のひかりは、ひとりで金沢にある祖母の家を訪れ、祖母と何度も足を運んだひがし茶屋街で銀髪の青年と出会う。
彼は、このひがし茶屋街に棲む神様で、自身が守る屋敷にやって来た者たちの傷ついた心を癒やしているのだと言う。
心の拠り所を失くしたばかりのひかりは、意図せずにその屋敷で過ごすことになってしまいーー?
神様と双子の狐の神使、そしてひとりの女子大生が紡ぐ、ひと夏の優しい物語。
アルファポリス 2021/12/22~2022/1/21
※こちらの作品はノベマ!様・エブリスタ様でも公開中(完結済)です。
(2019年に書いた作品をブラッシュアップしています)
堕天使の詩
ピーコ
キャラ文芸
堕天使をモチーフにして詩や、気持ちを書き綴ってみました。
ダークな気持ちになるかも知れませんが、天使と悪魔ーエクスシアーと一緒に読んでいただければ、幸いです!( ^ω^ )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる