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第四幕
たとえ紫音を
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ううん。<出逢い>によって救われることもあるのは、吸血鬼やダンピールだって同じかな。エンディミオンだってさくらとの出逢いで救われた一人だし。
ただ、人間よりもはるかに寿命が長い吸血鬼やダンピールの場合、出逢った人間に依存してしまうと、その人間を喪った時には元の木阿弥ということも少なくないという事実はある。
たいていは、人間の方が先に死ぬから。
その点、紫音が椿に依存しているのは、時間的な余裕はあると思う。少なくとも僕は、椿を早々に死なせるつもりはないし。
たとえ紫音を見捨てることになったとしてもね。
その紫音を、ガレージを改造した<遊び部屋>に招き入れ、椿は彼の宿題を見てあげていた。それが今の習慣だった。それどころか紫音は日が暮れる寸前までこうして椿と一緒に過ごし、軽く夕食まで食べてお風呂にまで入って家に帰る。自宅に帰ってからも夕食を食べることにはなるけど、それは栄養価などまったく考えていないレトルト食品やインスタント食品だけというそれだった。
決して、
『子供にレトルト食品やインスタント食品を与えるのはよくない』
と言ってるんじゃない。あくまで、
『偏り過ぎた食生活は好ましくない』
と言ってるだけだ。だから、不足してるであろう栄養価を、うちでの食事で補っているだけなんだ。
加えて、椿と二人きりとはいえ、<団欒>を彼に経験してもらうという意味もある。彼は椿以外を信頼していないこともあって、<遊び場>以外には上がってこない。
だから僕達も安心して彼を迎え入れることができてるというのもある。ガレージを改造した<遊び場>は、そのための場所でもある。トイレと一体になったユニットバスもガレージ内にある。いざとなったらIHクッキングヒーターや電子レンジを置いてミニキッチンにできる流し台もある。
完全にそこだけで暮らせるようにもできる、<独立した住居>なんだ。
ある意味、<シェルター>と言ってもいい。
紫音のような子供を保護することもできるシェルターかな。
実際、不審者と遭遇した際に逃げ込める場所としても登録してある。だから定期的に警官が訪問し、何か変わったことがないか気になることがないか尋ねても行く。
あくまで自分達家族が最優先でありつつ、余裕がある範囲では、紫音のような子供を受け入れることもする。
椿やアオがそれを望むならだけど。
そうして今日も、紫音は、椿と一緒に宿題を済まし、遊んで、僕と悠里と安和で用意した夕食の一部を椿と一緒に食べて、お風呂に入って、そうして自宅に帰っていった。
この時、彼は、『バイバイ』とは言わない。
「行ってきます」
と言うんだ。彼にとってはもうすでにこの遊び場が自宅であり、本来の自宅は、
<仕方なく出掛けていく親戚の家>
のようになっていたんだ。
ただ、人間よりもはるかに寿命が長い吸血鬼やダンピールの場合、出逢った人間に依存してしまうと、その人間を喪った時には元の木阿弥ということも少なくないという事実はある。
たいていは、人間の方が先に死ぬから。
その点、紫音が椿に依存しているのは、時間的な余裕はあると思う。少なくとも僕は、椿を早々に死なせるつもりはないし。
たとえ紫音を見捨てることになったとしてもね。
その紫音を、ガレージを改造した<遊び部屋>に招き入れ、椿は彼の宿題を見てあげていた。それが今の習慣だった。それどころか紫音は日が暮れる寸前までこうして椿と一緒に過ごし、軽く夕食まで食べてお風呂にまで入って家に帰る。自宅に帰ってからも夕食を食べることにはなるけど、それは栄養価などまったく考えていないレトルト食品やインスタント食品だけというそれだった。
決して、
『子供にレトルト食品やインスタント食品を与えるのはよくない』
と言ってるんじゃない。あくまで、
『偏り過ぎた食生活は好ましくない』
と言ってるだけだ。だから、不足してるであろう栄養価を、うちでの食事で補っているだけなんだ。
加えて、椿と二人きりとはいえ、<団欒>を彼に経験してもらうという意味もある。彼は椿以外を信頼していないこともあって、<遊び場>以外には上がってこない。
だから僕達も安心して彼を迎え入れることができてるというのもある。ガレージを改造した<遊び場>は、そのための場所でもある。トイレと一体になったユニットバスもガレージ内にある。いざとなったらIHクッキングヒーターや電子レンジを置いてミニキッチンにできる流し台もある。
完全にそこだけで暮らせるようにもできる、<独立した住居>なんだ。
ある意味、<シェルター>と言ってもいい。
紫音のような子供を保護することもできるシェルターかな。
実際、不審者と遭遇した際に逃げ込める場所としても登録してある。だから定期的に警官が訪問し、何か変わったことがないか気になることがないか尋ねても行く。
あくまで自分達家族が最優先でありつつ、余裕がある範囲では、紫音のような子供を受け入れることもする。
椿やアオがそれを望むならだけど。
そうして今日も、紫音は、椿と一緒に宿題を済まし、遊んで、僕と悠里と安和で用意した夕食の一部を椿と一緒に食べて、お風呂に入って、そうして自宅に帰っていった。
この時、彼は、『バイバイ』とは言わない。
「行ってきます」
と言うんだ。彼にとってはもうすでにこの遊び場が自宅であり、本来の自宅は、
<仕方なく出掛けていく親戚の家>
のようになっていたんだ。
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