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第四幕

乗っ取られた

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加えて人間はよく、

『外患に国の主要なメディアや企業を乗っ取られていいようにされている!!』

と口にするけど、そうやって『乗っ取られた』のなら、それは自分達の能力が劣っているからじゃないの? 外患に勝っているなら乗っ取られたりはしないと思うんだけどな。

<誠実な者>より<狡い者>を礼賛し<有能>と考えて主要ポストに据えてきた結果がそれじゃないの?

しかも、自らが努力しその主要ポストを奪い返すんじゃなく、ただ匿名の陰に隠れて、

『自分はこの社会の欺瞞を見抜いてる!!』

と口ばかり達者な人間達しかいなくて、どうやって国を守るって言うの? ネットに張り付いて悪口雑言をただ垂れ流している時間を惜しんで努力して、奪われた主要ポストを奪い返す努力をするべきだと僕は思うんだけどな。

もっとも、<声だけ大きい民衆>が、<周到な外患>に出し抜かれて国を蝕まれていくという光景はこれまでにも散々見てきたことだから、僕は積極的に肩入れするつもりはないよ。

『気に入らない相手は罵ればいい』

と考える人間ばかりが増えて、ただひたすら匿名の陰に隠れて自分が一方的に罵れる相手を探しているだけの間に外患に国を乗っ取られても、それはその国の民衆が被るべき報いだ。

僕には関係ない。

アオやさくらを育んでくれた風土が失われていくのは残念だけど、その国に住む民衆が、自分達が直接関わることによって支えるのではなく、口ばかり言葉ばかりで罵るだけで何とかなると考えているなら、それも仕方ないというものだよね。

そういう流れなんだから。

この国がどうなろうと、僕は僕が持つリソースを、家族と僕が仲間と認めた相手を守るためだけに集中する。理不尽にアオを攻撃する者達に割けるだけのリソースはないからさ。

でも、勘違いしないでほしいんだけど、僕はこちらから<攻撃>するつもりはないんだ。そんなことにリソースを割くつもりはない。あくまで守ることに集中するだけだ。

それが、この国を見捨てる形になってもね。

<一億の見知らぬ他人>よりも、<十人の仲間>を僕は優先する。他者への悪罵を<正義>だと考えるような者達を守ろうとは思わない。

あくまで、周囲に攻撃する口実を与えないために穏当に融和しようと思うだけで。

自分自身と自分の大切なものは、自分が守るべきだと僕は思う。他者を攻撃しておいて『自分だけは守ってほしい』なんてムシのいい話は通用しない。

自分は現実では何もせず『国を守るべきだ』と口先ばかり勇ましいだけの人間が守られるなんてムシのいい話もないんだよ。

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