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第三幕
何かを一から作り上げるという情熱
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吸血鬼が<創造への情熱>に欠ける傾向にあるのは、セルゲイを見ていても分かる。
彼は、確かに知的好奇心にあふれ、それを深く追求する方向には情熱も見せるけど、だけど、
<何かを一から作り上げるという情熱>
については、明らかに希薄なんだ。それは、悠里についても感じる。すでにあるものをよく知ろうとはしつつ、何かを創造することは、決して得意じゃない。
一方、安和は、母親であるアオの影響なのか、<創作>に興味を見せつつある。ただ、彼女の<作品>を読むと、基本的には、
<既存の作品の焼き直し>
という印象も否めない。まだ始めたばかりだからこれから先にどう変化していくのかは分からないというのもありつつ、少なくとも今の時点ではそういう印象かな。
ただ、創作についても、最初は<模倣>から入るというのも一般的なことだと言うし、本人が納得するまでやってもらえればいいと僕は思う。
それに、<創作>でさえ、完全に<無>から<有>を作り出すんじゃなく、本人の経験を分解・再構築することで作り上げられるものでもあるからね。
『いろんなことを経験することで創作の幅が広がる』
という趣旨のことを口にする創作者もいるそうだし、自身が幼かった頃に見たもの触れたもの耳にしたもの感じたものを創作の中に落とし込んでいく創作者も多いと聞く。
結局、
『自分の中に存在しないものは創作という形でも生み出すことはできない』
ということなんだろうな。
アオ自身、自らの人生経験や人間観察から得たものを創作に落とし込んでいってるのは事実だそうだ。
だとすれば安和だって、いろんなことを経験した上で、それを解析・分解・再構築するという形で、創作を行うこともできるかもしれない。
となれば、こうして世界を訪ね歩いている経験は、いつか彼女の創作の役に立つこともあるんじゃないかな。
僕は、その手伝いをしたいと思う。
「……人間って、馬鹿で愚かで卑屈で卑怯でどうしようもない奴らだけど、でも、こういうのを見ると、捨てたもんじゃないんだなって思うよ……」
セルゲイに抱かれて、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)の内部を見て回る安和が、呟くようにそう言った。
それでいい。ダンピールである彼女が人間の何もかもを称賛し全肯定するのもむしろ歪なことだと思う。ダンピールは人間じゃない。れっきとした<別の種族>なんだ。別であるということは、必ずしも都合のいい部分ばかりじゃないんだ。その事実を認め、向かい合うことが必要だと、僕は思うんだ。
彼は、確かに知的好奇心にあふれ、それを深く追求する方向には情熱も見せるけど、だけど、
<何かを一から作り上げるという情熱>
については、明らかに希薄なんだ。それは、悠里についても感じる。すでにあるものをよく知ろうとはしつつ、何かを創造することは、決して得意じゃない。
一方、安和は、母親であるアオの影響なのか、<創作>に興味を見せつつある。ただ、彼女の<作品>を読むと、基本的には、
<既存の作品の焼き直し>
という印象も否めない。まだ始めたばかりだからこれから先にどう変化していくのかは分からないというのもありつつ、少なくとも今の時点ではそういう印象かな。
ただ、創作についても、最初は<模倣>から入るというのも一般的なことだと言うし、本人が納得するまでやってもらえればいいと僕は思う。
それに、<創作>でさえ、完全に<無>から<有>を作り出すんじゃなく、本人の経験を分解・再構築することで作り上げられるものでもあるからね。
『いろんなことを経験することで創作の幅が広がる』
という趣旨のことを口にする創作者もいるそうだし、自身が幼かった頃に見たもの触れたもの耳にしたもの感じたものを創作の中に落とし込んでいく創作者も多いと聞く。
結局、
『自分の中に存在しないものは創作という形でも生み出すことはできない』
ということなんだろうな。
アオ自身、自らの人生経験や人間観察から得たものを創作に落とし込んでいってるのは事実だそうだ。
だとすれば安和だって、いろんなことを経験した上で、それを解析・分解・再構築するという形で、創作を行うこともできるかもしれない。
となれば、こうして世界を訪ね歩いている経験は、いつか彼女の創作の役に立つこともあるんじゃないかな。
僕は、その手伝いをしたいと思う。
「……人間って、馬鹿で愚かで卑屈で卑怯でどうしようもない奴らだけど、でも、こういうのを見ると、捨てたもんじゃないんだなって思うよ……」
セルゲイに抱かれて、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)の内部を見て回る安和が、呟くようにそう言った。
それでいい。ダンピールである彼女が人間の何もかもを称賛し全肯定するのもむしろ歪なことだと思う。ダンピールは人間じゃない。れっきとした<別の種族>なんだ。別であるということは、必ずしも都合のいい部分ばかりじゃないんだ。その事実を認め、向かい合うことが必要だと、僕は思うんだ。
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