ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第三幕

心理を利用する

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魅了チャーム>は、これまでにも何度か触れてきたように、

『本質は認識を誘導する能力で、これによって相手に好意を抱かせる』

ことができる能力だ。それを使って相手の行動を操るというのは、つまり、

『好意を持っている相手、信頼している相手の言うことなら、従ってもいい』

という心理を利用するということだね。今回の置き引きについても、魅了チャームを使った上で、

「やあ、元気?」

と声を掛けただけだった。すると相手も、とてもいい笑顔で、

「ああ、もちろん」

って応えて、そのまま立ち去っていった。向こうにとっては、

<人生最高の友人>

とばったり再会したような気分だっただろうな。だから、

『その<最高の友人>の荷物を奪おうとしたという後ろめたさでいたたまれなくなる』

形で、早々に立ち去ってしまうんだ。そして今回の<置き引き未遂犯>も、

「じゃあ、またな」

少し申し訳なさそうな笑顔を見せつつ手を振りながら去っていった。もっとも、しばらくすると、

『俺は何でやめたんだ……?』

的に困惑するだろうけどね。

ああいう人間達は、いずれ、

<決して手を出してはいけない相手>

に手を出して、結果、取り返しのつかないことになる可能性が高い。必ずそうなるというわけではないけど、そもそも置き引きなんかしない人間なら最初から可能性がないからね。

実際、エンディミオンを誘拐しようとして家族もろとも命を奪われたという事例もある。エンディミオンの行為は決して許されるものではないし正当化されるべきではないけど、きっかけを作ったのは誘拐犯の側だからね。そんなことをしなければその結果はなかったのも事実だと思う。

だけど、それを根拠に、

『イジメられる側が悪い』

的な話に持っていくのは、卑劣だよね。だってエンディミオンの行為そのものが、正当化されるべきものじゃないんだから。

なにより、<イジメ>というのは、その場の一回だけ、自身の身の安全を守ろうとして行うことじゃなく、継続的に執拗に行うことだから、エンディミオンの行いとはそもそもまったく別種の行為だ。

でも同時に、

<強者が弱者を虐げる行為>

という面では共通している部分もある。ダンピールであるエンディミオンにとって人間は、たとえナイフや拳銃で武装していても、決して負けることのない相手だった。そして、<イジメ>も、相手が反撃できない、相手の反撃を封じられる確信があればこそできる行為だよね。相手の力を見誤って強い反撃を受ける場合もあるとしても、行為を行う時点では、自分は安全だと思うからこそできることなんじゃないの?

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