ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第三幕

椿と紫音 その12

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自分の母親が、父親とは違う男性とあられもない姿で絡み合ってた光景を目の当たりにしてしまった上に母親に怒鳴られて、紫音しおんは、家を飛び出してしまった。母親が気まずさから感情を制御できなくなったのと同じく、彼も、キャパシティを超えてしまったんだ。

これはさすがに、場合によっては命にも関わりかねない事態。

椿のことは悠里ユーリ安和アンナに任せ、僕は紫音しおんを追った。

できればうちに来てほしかったけど、さすがに椿に対してあんな態度を見せてしまったからか、来なかった。

しばらくあてもなく走って、走り疲れたら歩いて、紫音しおんは自分の家から遠ざかっていった。

『もう帰れない』

と思ってるのが分かる。

僕は、気配を消して彼の後をつける。

彼が思い直して家に帰ってくれればいいけど、もしこのまま、<家出>や<突発的な行動>に出てしまわないか、僕は見守らなくちゃいけない。

そこまでじゃなくても、今の彼はそれこそ視野狭窄に陥ってる状態だ。事故などに遭う危険性も高い。

彼がもし、事故などで命を落とすようなことがあったら、椿が悲しむ。

僕は、椿のために彼を守らなきゃいけないんだ。

けれど、間の悪い時というのは本当に悪いもので、あてもなく歩いていた紫音しおんが交差点を青信号で渡った時、車道側の赤信号を見落とした自動車が交差点に突っ込んできた。

運転手はスマホを操作してたことで見落としてしまったみたいだ。そして気付いて慌ててハンドルを切った時には手遅れだった。

もう自動車側の対応じゃ間に合わないから、僕が介入する。

紫音しおんの体を抱きかかえて、僅かに位置をずらす。すると自動車は彼と僕を掠めて、中央分離帯にガツンと音を立てながら乗り上げた。

僕の目には、バンパーが割れて、右前輪のサスペンション周りが激しく歪み、それでも吸収し切れなかった応力によって車体のモノコックにも歪が出るのが見えてしまった。

厳密に全体の歪も修正するとなれば修理費は百万円を上回るかもね。

だけどそれは、スマホを運転していた運転手自身の責任だ。紫音しおんは確かに青信号を渡ってた。

なのに運転手は、乱暴に自動車のドアを開けて、

「どこ見てんだクソガキ!!」

紫音しおんを怒鳴りつける。おそらく五十代くらいの、見た目だけで言えば<立派な大人>のはずだった。

それが、法律で禁止されている<ながら運転>で赤信号を見落とし、歩行者を撥ねそうになった…ううん、僕が介入しなければ確実に紫音しおんを撥ねていたにも拘らず、事故を彼の所為にしようとしたんだ。

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