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第三幕
楽しい道行じゃなかった
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確かに、こうやって美しい自然を破壊する人間は、愚かなのかもしれない。そして、
『人間は愚かだ! 排除しなければいけない!』
などと大きな声を上げて暴力に訴えるようなのもまた、確かに人間だ。
吸血鬼の立場でそういう人間達を見ていると、
『人間なんて不要な存在なのでは?』
と思ってしまいそうになるのも、偽らざる印象だったりもする。
けれど、ダヴィトやケテヴァンのように、穏当に問題を解決するために地道な活動をしている人間がいることもまた、事実なんだ。
一部の極端な行動に出る人間だけを見て、
『人間なんて全部死ねばいい』
と考えるのは、論理的じゃないんだよ。それはただの感情論なんだ。
だから僕は、悠里と安和に、自然を破壊するような人間もいればダヴィトやケテヴァンのような人間もいるという事実を知ってもらいたくて、こうして世界を巡ってるんだ。
PCやスマホの画面の中で見たものだけを<この世のすべて>だとは思ってほしくないんだよ。
特に、悠里と安和は<ダンピール>だから、椿以上に人間のことをよく知ってもらわないといけないんだ。
人間の好ましくない部分については、ジャカルタやトロントやベネズエラの油田での件でも見てきたし、ロシアでは密猟者の話についても聞いた。だからこそ、そんな人間ばかりじゃないということも実際に見てもらいたいんだ。
ダヴィトやケテヴァンは、確かに、分かりやすく華々しいフィクションの中のヒーローのような活躍はしていないかもしれない。でも、そういう形ばかりが必要なわけじゃない。
<地道で堅実な人間の姿>も存在するんだよ。
その後も、何ヶ所かを回り、やはりどこも惨憺たる有様だったのを確認。悠里も安和も、陰鬱な様子でマイクロバスの中に座っていた。
「さすがに疲れたのね」
二人がとても沈んだ表情をしているのを<疲れ>だと判断したケテヴァンが、気遣ってくれる。今は運転を担当しているダヴィトも、
「無理もない。子供にとっては楽しい道行じゃなかっただろうからな」
すっかり日が暮れた真っ暗な道を走らせながら応えた。
「とにかく、今日はもうこれで終わり。お詫びも兼ねて今夜は私達にご馳走させて。娘の一人が務めてるレストランを予約してあるの」
先に聞いていたけれど、改めてそう告げてくれた。
「ありがとうございます」
僕は、悠里と安和の代わりにお礼を述べた。
「本当にいい子ね」
ケテヴァンがすごく優しい笑顔を僕に向けてくれる。
そんな中、悠里と安和は、ようやく舗装路をスムーズに走り始めたマイクロバスに揺られながら、また眠ってしまったのだった。
『人間は愚かだ! 排除しなければいけない!』
などと大きな声を上げて暴力に訴えるようなのもまた、確かに人間だ。
吸血鬼の立場でそういう人間達を見ていると、
『人間なんて不要な存在なのでは?』
と思ってしまいそうになるのも、偽らざる印象だったりもする。
けれど、ダヴィトやケテヴァンのように、穏当に問題を解決するために地道な活動をしている人間がいることもまた、事実なんだ。
一部の極端な行動に出る人間だけを見て、
『人間なんて全部死ねばいい』
と考えるのは、論理的じゃないんだよ。それはただの感情論なんだ。
だから僕は、悠里と安和に、自然を破壊するような人間もいればダヴィトやケテヴァンのような人間もいるという事実を知ってもらいたくて、こうして世界を巡ってるんだ。
PCやスマホの画面の中で見たものだけを<この世のすべて>だとは思ってほしくないんだよ。
特に、悠里と安和は<ダンピール>だから、椿以上に人間のことをよく知ってもらわないといけないんだ。
人間の好ましくない部分については、ジャカルタやトロントやベネズエラの油田での件でも見てきたし、ロシアでは密猟者の話についても聞いた。だからこそ、そんな人間ばかりじゃないということも実際に見てもらいたいんだ。
ダヴィトやケテヴァンは、確かに、分かりやすく華々しいフィクションの中のヒーローのような活躍はしていないかもしれない。でも、そういう形ばかりが必要なわけじゃない。
<地道で堅実な人間の姿>も存在するんだよ。
その後も、何ヶ所かを回り、やはりどこも惨憺たる有様だったのを確認。悠里も安和も、陰鬱な様子でマイクロバスの中に座っていた。
「さすがに疲れたのね」
二人がとても沈んだ表情をしているのを<疲れ>だと判断したケテヴァンが、気遣ってくれる。今は運転を担当しているダヴィトも、
「無理もない。子供にとっては楽しい道行じゃなかっただろうからな」
すっかり日が暮れた真っ暗な道を走らせながら応えた。
「とにかく、今日はもうこれで終わり。お詫びも兼ねて今夜は私達にご馳走させて。娘の一人が務めてるレストランを予約してあるの」
先に聞いていたけれど、改めてそう告げてくれた。
「ありがとうございます」
僕は、悠里と安和の代わりにお礼を述べた。
「本当にいい子ね」
ケテヴァンがすごく優しい笑顔を僕に向けてくれる。
そんな中、悠里と安和は、ようやく舗装路をスムーズに走り始めたマイクロバスに揺られながら、また眠ってしまったのだった。
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