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第三幕

保護のための活動

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「僕がアナスタシアに出会ったのは、今から十二年前。まだ悠里ユーリ安和アンナもとても小さかった頃だ。

当時、僕は、密猟者を取り締まる人間と一緒に、ヒグマの密猟について調べてたんだ。

ヒグマは、人間にとっては大変な脅威であり、実際に大きな被害が出ることもある危険な動物だ。でも、だからといって、ちゃんと距離を取って平穏に暮らしているヒグマをも一方的に殺していいわけじゃない。もしそれを許すのなら、吸血鬼にとっては<人間>こそが危険な動物であり、吸血鬼の利益だけを考えるなら、人間こそが<駆除の対象>になるからね。それを認めないためには、『危険だから』というだけで一方的に駆除することは許されないんだ。

そのために、『自分達は害獣を駆除してそれを利用してるだけだ』という密猟者達の<言い分>を認めるわけにはいかない。

そうしてあの日も、僕は、密猟者達の情報を得て、タイガに入っていた。

僕達のチームは、僕以外は全員人間で、僕は、表向きは<学者>という立場で参加してたんだけど、実際には人間達の護衛としての役目もあったな。

何しろ、危険なのは、銃などで武装してる密猟者だけじゃなくて、自分達が守ろうとしているヒグマも、とても恐ろしい脅威だったから。ヒグマからすれば、密猟者もそれ以外も区別なんてつかない<危険な動物>でしかないわけで。

事実、ヒグマの保護のための活動中にヒグマに襲われて命を落とす事例もある。

そういうこともわきまえないといけない仕事で、彼らはそれをしっかりと理解してる人間だった。

そんな彼らと共に密猟者を追っていた僕は、その途中に何度もヒグマに遭遇したよ。と言っても、あくまで吸血鬼としての知覚で捉えたものだったから、人間の仲間達は気付いていなかったけどね。そして僕は、敢えてヒグマに自分の存在を悟らせて、近付いてこないようにしていた。

野性の動物は基本的に憶病だから、無駄な争いは好まない。圧倒的に強い相手がいると、自分から距離を置くようにする。ヒグマにとっても僕達吸血鬼は危険な存在だから。

それでも、<例外>はいる。特に、人間の味を覚えたヒグマは危険だ。非力で、しかも筋肉が柔らかい人間は、野生の肉食獣にとってはご馳走なんだよ。それもあって多少の危険を冒してでも狙ってくる。

この時の僕達も、そういうヒグマにつけ狙われていた。僕がいるからいきなりは襲ってこないものの、間合いは取りつつずっと後をつけてきていたんだ」



次の演目までの準備中、セルゲイは語った。

内容が内容だから、あくまで僕達にだけ聞こえる声でね。

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