ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第三幕

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こうして、僕達の、モスクワ滞在生活が始まった。期間は四日だけど、セルゲイと悠里ユーリはまた<昆虫の観察>という目的があるから、必ずしものんびりとしてられるわけじゃない。

でも、その前に睡眠だ。

僕達はシャワーを浴びた後、三時間の睡眠をとる。

そして日が暮れ始めた頃に目覚めると、セルゲイと悠里はモスクワ郊外へと昆虫を探しに出て、安和アンナは、例の猫のブローチのレビューを自身のサイトにアップした。

『カワイイ♡』

『目は宝石なんですか? <デマントイドガーネット>って初めて聞きました』

『綺麗な緑色ですね♡』

早速、そういう反応が返ってくる。今ではそれなりに知られたサイトだからね。ファンも多い。

でも、そんなコメントの中に、

『どうせニセモノだろ。つかまされたな、バカガキw』

というのがあった。更新するたびに早々に侮辱的なコメントを付けてくる常連だった。

だけど、他のユーザー達はそれには反応しない。安和も反応しない。

特定のユーザーのコメントを見えなくする機能がそのサイトにはあるので、ほとんどのユーザーがその機能を利用しているからだった。

それでも、最近、見るようになったユーザーの中にはその機能をよく理解していない者もいて、

『何こいつ! ムカつく! 嫌なら見なきゃいいのに!』

的に反応するのもいるんだ。そういうユーザーもしばらくすると機能に気付いて見えなくするんだけど、それまではそうやって<正義漢>ゆえに食って掛ってしまうことが多かった。

「やれやれまったく……」

安和はそれに頭を抱えつつ、でも特になにもしない。彼女が対応すれば、マナーの悪いユーザーをむしろ喜ばせるだけだというのを知っているから。

「安和、君は立派だよ」

僕は、そんな彼女を抱き締めながらそう言った。

「ありがと…パパ……」

安和だって当然、不愉快なコメントされていい気がするわけじゃない。だけど、そういうことをする人間は、結局、

<そういうことをせずにいられない状況>

にあるということだから、安和が何をやっても当人が置かれている状況が変わらない限りはすべてが徒労に終わることももう理解してるんだ。

そして、当人のその状況を変えることができるのは、身近な人間だけ。

ごくまれに、縁もゆかりもない赤の他人の働きかけが状況を変えることもないわけじゃないけど、それはあくまで例外的な事例。いつも上手くいくわけじゃないし、むしろ状況を悪化させることの方が多いのも事実なんだ。

他人を罵って事態が好転するなんて、そんな、<ご都合主義>と呼ばれるような展開はないんだよ。

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