ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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第二幕

秋生の日常 その18

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学校近くで美登菜みとなと合流し、

「おはよ~♡」

教室では先に来ていた麗美阿れみあに美登菜が満面の笑顔で手を振った。

いかにもな<ラブコメもの>でありそうな光景を、美登菜は演出する。

「おはよう……」

麗美阿としては、正直、照れくささもあるものの、悪い気はしない。

そんな二人に迎えられ、秋生あきお美織みおりも教室に入る。

とは言え、他の生徒達の表情はどこか冷やかだったり、中には明らかに侮蔑を込めた笑みを浮かべた者もいた。

けれど、秋生はそれに気付きながらも気にしない。気にしても無駄なことを知っているし、気にして得られる物はほとんどないことも知っているから。

<他人を蔑む側>に回れば、その時は確かに楽かもしれないものの、それは結局、ちょっとしたことで今度は自分が<蔑まれる側>になるだけの話でしかないことも知っているから。

他愛ない<遊び>でも、彼女達にとって必要なことであれば、秋生は馬鹿にするつもりはなかった。

それに、最近は、秋生自身も、何となく楽しめてきている気がする。

少なくとも、嫌じゃない。

加えて、自分を好いてくれている彼女達が幸せそうにしているのを見るのも、悪い気はしない。

『不幸な生い立ちだった父さんでも幸せになれるためには、それこそ彼女達ぐらいの境遇の人達なら当たり前みたいに幸せになれなきゃおかしいと思う。じゃなきゃ、父さんなんて絶対に幸せになれないよ……』

そんなことを考えていた秋生に気付いたわけではないだろうけれど、隣に立った美織が話しかけてくる。

「秋生くん。私達みたいなのに付き合ってくれて本当にありがとう。秋生くんのおかげで、私達は生きられてるようなものなんだよ。

だから私も、秋生くんが幸せになれるお手伝いをしたい。美登菜みとなも、麗美阿れみあもそう思ってるよ」

「あ…うん。ありがとう」

美織は、曖昧な指示や空気を察するのは苦手なはずなのに、時折、

『心でも読んでるのか?』

と思わされるくらい確信を突いてくることもある。それはたぶん、空気が読めないからこそ惑わされることなく本題に触れることができるからだろう。

そういう部分も、『空気を読む』ことを当然と考える者には疎まれてきた。

秋生は思う、

『何だかんだ言ったって、『空気を読め!』とか言ってる人達も自分が読みたくない空気については従わなかったりわざと無視したりするよな……

他人の悪口で憂さを晴らしてる人達は、『他人の悪口を言うのは良くないこと』っていう<空気>は読もうとしない。

結局、そういうことなんだよな……<空気>なんて……』

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