ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
274 / 697
第二幕

恵莉花の日常 その16

しおりを挟む
恵莉花えりかが通う学校では、いかにも露骨な<イジメ>については対処される。

具体的には、<刑法犯>に当たるもの、当たるとみられるものについては指導が入る感じだろうか。

殴られる→暴行

金品を要求される→恐喝

危害を加えると脅される→脅迫

する必要のないことを強引にやらされる→強要

上靴などの持ち物を隠される→窃盗

教科書などの持ち物に落書きされる。壊される→器物損壊

等々。

以上に該当するような事例についてはまず<指導>が入り、それでも改まらないとなれば警察への通報も辞さないと明言されている。

ただ、

『積極的に挨拶しない』

『積極的にコミュニケーションを図らない』

等については、さすがにそれを学校側が強要することもできないので、

『クラス運営に支障が出ると担任教師が判断するレベルに達している』

くらいまで行かないと、精々、

『クラスの仲間なんだから仲良くしろよ』

と口頭で告げられるくらいに留められていた。

なので、

『<関わりたくない相手>に対しては積極的には関わらない』

ことがまかり通っている状態だろうか。

だから、恵莉花も千華も、そういう対応をされているというわけだ。

けれど、恵莉花も千華も、いい気はしないものの、

『まあ、関わりたくないってんなら、関わらなくていいじゃん』

と割り切るようにしている。

それに恵莉花の場合は、家に帰れば丸ごと癒してもらえるので、気にする必要もなかった。

一方、千華の方は、高校進学を機にシッターとの契約も終了し、現在、両親も彼女とは積極的に関わろうとせず、ほぼ一人暮らしに近い生活をしている。

しかし、だからといって家に<不良仲間>を招いてたまり場にするようなこともなく、時々、礼司れいじを招いて甘い時間を過ごすだけだ。

もっとも、何かと言えば衝突する二人なので、本当に<甘い時間>を過ごせることは滅多にないけれども。

その分、千華は、学校で恵莉花に会うことで癒されているというのもある。

「エリといるとさ、ホッとするんだよね。あんたといる時が一番の幸せかな」

千華はことあるごとにそんなことを言う。

「でもそれじゃ、レイジの立場がないじゃん」

恵莉花がそう返すと、千華は手の平をひらひら振りながら、

「いいのいいの、あいつはあたしにとっては二番目だから。あたしにとっての一番はエリなんだよ」

と言い切ったりもする。

「もう、またそんなこと言って。そんなだからケンカになるんでしょ?」

苦笑いを浮かべる恵莉花だったものの、実は、礼司の方からも、

「あいつにはエリが必要なんだよ。だからさ、俺じゃ足りない分はエリに頼みたいんだ」

と言われていたりもする。

そう言えるくらい、実は分かり合えているのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。

新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ
恋愛
 伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。  最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。 「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。  そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。  そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。

処理中です...