272 / 697
第二幕
恵莉花の日常 その14
しおりを挟む
時間の経過と共にどうにか現実と折り合いを付けられるようになっていった千華は、それに伴って周囲への反発も再び見せるようになっていった。
とは言え、それは、他人に対しては以前ほど苛烈なものではなく、教師の言うことには素直には従わないものの、罵詈雑言を浴びせたりというほどではなくなってもいた。
彼女の反発は両親に対して強く向けられ、特に実の母親に対しては、
「お前のコーディネートとか着れるか!!」
と宣言。母親が推奨する組み合わせや着方を無視。徹底的にだらしなく着崩して、母親の作った服を貶めるようにした。
母親はそれに対して顔を合わせる度に叱責したものの千華は応じず、そして遂に怒りが頂点に達した母親は、千華の小学校卒業直前、家にあった服を全て処分してしまうという暴挙に出た。
すると千華は、母親の行為について自ら児童相談所に通告。さすがに、
『着る服が一着もないのは異常』
『子供が自分の提唱するコーディネートに従わないという理由で服を与えないのは、親の監督権、懲戒権の濫用である』
と判断されて行政が介入する事態へと至った。
だが、小学校の卒業式には間に合わず、千華は卒業式を欠席。集合写真も撮れずに、クラスの集合写真の右上に丸く囲われた別撮り写真が組み合わされるという形の写真となってしまった。
しかも、中学は制服であり、シッターが取りに行ってくれたので制服だけは着ることができたものの、実は母親は下着や靴下の類さえ全て処分しており、千華は、
『制服の下は体操服。靴下はなし』
という状態で、入学式に参加している。
体操服はともかく靴下を着けていない状態での参加は、普通ならば学校としても認め難いものの、児童相談所を通じて事情が学校側にも告げられていたので、特例として参加が認められたという経緯があった。
さらにその後も、行政による指導に母親が譲歩するまで数週間を要し、その間、千華は、
『体操服を下着代わりに身に着け、靴下は学校が用意したものを履いて』
一日を過ごしたのだった。
ちなみに、家の中にいる時には開き直って全裸である。何しろ、母親は彼女が自分で服を買うこともできないように小遣いすら渡さなかったのだ。
そしてこの頃、同じクラスとなった月城恵莉花や朔也礼司と出逢い、なぜか互いにシンパシーを感じて意気投合、友人となった。
実は、礼司の境遇もなかなかに波乱万丈なものであったのだが、まあそれについては次の機会に譲るとして、『人間とダンピールの間に生まれた』恵莉花にとっても千華の存在は何かを訴えかけるものであったのかもしれない。
いずれにせよ、こうして恵莉花と千華は友人となったのだった。
とは言え、それは、他人に対しては以前ほど苛烈なものではなく、教師の言うことには素直には従わないものの、罵詈雑言を浴びせたりというほどではなくなってもいた。
彼女の反発は両親に対して強く向けられ、特に実の母親に対しては、
「お前のコーディネートとか着れるか!!」
と宣言。母親が推奨する組み合わせや着方を無視。徹底的にだらしなく着崩して、母親の作った服を貶めるようにした。
母親はそれに対して顔を合わせる度に叱責したものの千華は応じず、そして遂に怒りが頂点に達した母親は、千華の小学校卒業直前、家にあった服を全て処分してしまうという暴挙に出た。
すると千華は、母親の行為について自ら児童相談所に通告。さすがに、
『着る服が一着もないのは異常』
『子供が自分の提唱するコーディネートに従わないという理由で服を与えないのは、親の監督権、懲戒権の濫用である』
と判断されて行政が介入する事態へと至った。
だが、小学校の卒業式には間に合わず、千華は卒業式を欠席。集合写真も撮れずに、クラスの集合写真の右上に丸く囲われた別撮り写真が組み合わされるという形の写真となってしまった。
しかも、中学は制服であり、シッターが取りに行ってくれたので制服だけは着ることができたものの、実は母親は下着や靴下の類さえ全て処分しており、千華は、
『制服の下は体操服。靴下はなし』
という状態で、入学式に参加している。
体操服はともかく靴下を着けていない状態での参加は、普通ならば学校としても認め難いものの、児童相談所を通じて事情が学校側にも告げられていたので、特例として参加が認められたという経緯があった。
さらにその後も、行政による指導に母親が譲歩するまで数週間を要し、その間、千華は、
『体操服を下着代わりに身に着け、靴下は学校が用意したものを履いて』
一日を過ごしたのだった。
ちなみに、家の中にいる時には開き直って全裸である。何しろ、母親は彼女が自分で服を買うこともできないように小遣いすら渡さなかったのだ。
そしてこの頃、同じクラスとなった月城恵莉花や朔也礼司と出逢い、なぜか互いにシンパシーを感じて意気投合、友人となった。
実は、礼司の境遇もなかなかに波乱万丈なものであったのだが、まあそれについては次の機会に譲るとして、『人間とダンピールの間に生まれた』恵莉花にとっても千華の存在は何かを訴えかけるものであったのかもしれない。
いずれにせよ、こうして恵莉花と千華は友人となったのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜
古亜
キャラ文芸
たまたま出会ったヤクザをモデルにBL漫画を描いたら、本人に読まれた。
「これ描いたの、お前か?」
呼び出された先でそう問いただされ、怒られるか、あるいは消される……そう思ったのに、事態は斜め上に転がっていった。
腐(オタ)文化に疎いヤクザの組長が、立派に腐っていく話。
内容は完全に思い付き。なんでも許せる方向け。
なお作者は雑食です。誤字脱字、その他誤りがあればこっそり教えていただけると嬉しいです。
全20話くらいの予定です。毎日(1-2日おき)を目標に投稿しますが、ストックが切れたらすみません……
相変わらずヤクザさんものですが、シリアスなシリアルが最後にあるくらいなのでクスッとほっこり?いただければなと思います。
「ほっこり」枠でほっこり・じんわり大賞にエントリーしており、結果はたくさんの作品の中20位でした!応援ありがとうございました!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる