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第二幕
悠里の日常 その3
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現在の悠里の日課は、セルゲイと一緒に観察した昆虫をはじめとした生き物達のデータを丁寧にまとめることだった。
現時点では、将来はセルゲイと同じく生物学者を目指しているが、それも特に確定というわけでもない。
ダンピールである自分には時間が豊富にあるので、その時その時に興味のあることを丁寧にやっていけばいいと思っていた。
実際、セルゲイもそれで様々な仕事もしてきた。コンシェルジュやバトラーをしていた時期もある。
人間では絶対にセルゲイには勝てないという実感がある。
それなのに人間は、優れていれば劣っている者を見下して蔑んでいいいと考えている節がある。
『だったら、人間のほとんどはセルゲイに対して平伏する必要があるよね?』
とも思う。
けれど、悠里は、ミハエルやアオから、
<他者を敬う>
ことを教わってきたから、自然とそうしようと思えた。
他者を敬うことができれば、それ以外は別にどうでもいいと思えた。
そうするだけで十分だと。
『相手を一人の人間として扱う』
というのは、相手が自分より強いか弱いかで態度を変えることを言うのではない。
『相手が誰であっても最低限の礼儀礼節をわきまえる』
それが『相手を敬う』ということであると、ミハエルとアオは子供達に対して実際の態度で示してきた。
子供達を、『一人の人間として』接してきた。
それが『相手を敬う』ということであると、身をもって教えてきたのだ。
だから、悠里も安和も、まだ小学生である椿でさえ『相手を敬うとはどういうことか?』を知っている。
だから相手を敬うことができる。
もちろん、まだまだ未熟だから常に完璧にはできないものの、少なくとも目先の感情に任せて相手を罵ることが『敬う』ことではないのは理解している。
また、悠里は、自分の妹の安和や椿に対して理不尽なことをほとんどしない。
ついテンションが上がって咄嗟に無茶なことをしたこともあったものの、少なくとも意図的にはやらない。
怒鳴ったり叩いたり玩具を取り上げたり馬鹿にしたりということもしない。
これらはすべて、ミハエルとアオが悠里に対して示してきたことだった。怒鳴ったり叩いたり馬鹿にしたりしなかった。
悠里はただ、その真似をしているだけに過ぎない。
しかも、安和も椿も、悠里と同じように両親に接してきてもらっているから、やっぱりわざと理不尽なことはしてこない。
だから余計に、怒鳴ったり叩いたりせずにいられないことがなかった。
悠里には、大人が子供を叩く必要性が理解できない。
そして、大人が子供を叩くことを推奨しようとする人間のことも理解できなかったのだった。
現時点では、将来はセルゲイと同じく生物学者を目指しているが、それも特に確定というわけでもない。
ダンピールである自分には時間が豊富にあるので、その時その時に興味のあることを丁寧にやっていけばいいと思っていた。
実際、セルゲイもそれで様々な仕事もしてきた。コンシェルジュやバトラーをしていた時期もある。
人間では絶対にセルゲイには勝てないという実感がある。
それなのに人間は、優れていれば劣っている者を見下して蔑んでいいいと考えている節がある。
『だったら、人間のほとんどはセルゲイに対して平伏する必要があるよね?』
とも思う。
けれど、悠里は、ミハエルやアオから、
<他者を敬う>
ことを教わってきたから、自然とそうしようと思えた。
他者を敬うことができれば、それ以外は別にどうでもいいと思えた。
そうするだけで十分だと。
『相手を一人の人間として扱う』
というのは、相手が自分より強いか弱いかで態度を変えることを言うのではない。
『相手が誰であっても最低限の礼儀礼節をわきまえる』
それが『相手を敬う』ということであると、ミハエルとアオは子供達に対して実際の態度で示してきた。
子供達を、『一人の人間として』接してきた。
それが『相手を敬う』ということであると、身をもって教えてきたのだ。
だから、悠里も安和も、まだ小学生である椿でさえ『相手を敬うとはどういうことか?』を知っている。
だから相手を敬うことができる。
もちろん、まだまだ未熟だから常に完璧にはできないものの、少なくとも目先の感情に任せて相手を罵ることが『敬う』ことではないのは理解している。
また、悠里は、自分の妹の安和や椿に対して理不尽なことをほとんどしない。
ついテンションが上がって咄嗟に無茶なことをしたこともあったものの、少なくとも意図的にはやらない。
怒鳴ったり叩いたり玩具を取り上げたり馬鹿にしたりということもしない。
これらはすべて、ミハエルとアオが悠里に対して示してきたことだった。怒鳴ったり叩いたり馬鹿にしたりしなかった。
悠里はただ、その真似をしているだけに過ぎない。
しかも、安和も椿も、悠里と同じように両親に接してきてもらっているから、やっぱりわざと理不尽なことはしてこない。
だから余計に、怒鳴ったり叩いたりせずにいられないことがなかった。
悠里には、大人が子供を叩く必要性が理解できない。
そして、大人が子供を叩くことを推奨しようとする人間のことも理解できなかったのだった。
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