上 下
253 / 697
第二幕

悠里の日常 その1

しおりを挟む
悠里ユーリは十四歳である。

学校に通っていれば中学三年生ということになる。

とは言え、どう見ても三歳から四歳くらいにしか思えない外見で中学に通うのは無理があるので、普段は自宅での学習だった。

しかし教師役のミハエル自身が、教師一筋で定年を迎えた人間に匹敵する経験の持ち主でありつつも肉体も頭脳も若いので、常に認識を更新し続けることもできている。

言ってしまえば並の人間の教師ではミハエルには到底敵わないということだ。

しかも、どんなに力自慢の不良が相手でも、たとえ権力を背景に持った者が相手でも、まったく怯む必要もない。

何しろ彼は<偉大なるノスフェラトゥ>。人間をはるかに超越した存在なのだから。

けれど、だからこそミハエルは自身の<力>を笠に着て子供達を威圧したりしない。自分の思っている通りに勉強が進まないからといってキレたりもしない。苛立つこともない。ただただ淡々と理解できるまで何度でも繰り返し教える。

だから子供達も、

『勉強で遊んでもらっている』

ようなものなので、毛嫌いする必要もなかった。

勉強が苦手な子供でも、自分が好きなアニメやゲームのキャラクターの名前や特徴をいくつでも覚えられたりするのと同じで、楽しいからすんなり頭に入ってくる。

さらにカリキュラムに縛られる必要もないこともあり、すでに高校三年生レベルまで進んでいた。

とは言え、<勉強>はあくまで見識を広めるためのものでしかなく、それ自体は目的じゃなかった。

アオも言っている。

「今の人間って、大学に行くのは当たり前って思ってるみたいだけど、私も大学には行ったけど、それって結局、自分の人生を作り上げていく<手段>の一つでしかなくて、大学に行くこと自体が目的じゃないんだ。

でも、大学に行くことを目的にしちゃってる人の中には、その時点で自分が何かを成し遂げられたみたいな勘違いしちゃって、それで『自分は偉い!』みたいに思っちゃったりするのもでてきちゃったりするんだろうね。

それか、大学に行った途端に燃え尽きちゃったりとか、気が緩んで遊びまくったりとか。

そうじゃないんだよなあ。大学に行ってから何をするかが大事なんだよ。

って、今なら思う。

だけど私の両親、悠里ユーリ安和アンナ椿つばきにとってはお祖父ちゃんお祖母ちゃんってことになる人は、私にそのことを教えてくれなかったんだ。だから私はそれをちゃんと教えておかなくちゃって思ってるんだ」

母親がそう言ってくれるから、悠里も学校に行けるかどうかについては特に気にしていなかった。

ダンピールである自分が人間の学校にはすんなりと入れないのは自明の理。

そんな<形>に拘らないでも、ただのんびりと構えていればいいのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

見知らぬ男に監禁されています

月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。 ――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。 メリバ風味のバッドエンドです。 2023.3.31 ifストーリー追加

処理中です...