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第二幕
安和の日常 その4
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自分のレビューサイトや、レビューサイトの閲覧者のSNSを見ているだけでも、いかに攻撃的な人間が多いかが分かってしまう。
それを見ていると、安和は暗澹たる気持ちにもなる。
『人間なんてこんなもの』
と思ってしまいそうにもなる。
『人間なんか全部眷属にしちゃえばいいのに』
と思ってしまいそうにもなる。
けれど、『そうじゃない』。
一部を見ただけで全体を一括りにするのは、
<自分は賢いと思い込んでいる愚者の発想>
だ。
<自分は世界を見渡せていると思い込んでいる暗愚>
でしかない。
と、安和は考えることができている。
でも、そこで<愚者>や<暗愚>と考えてしまう辺りがまだまだ未熟と言えるだろう。
そうやって見下すことでお手軽に安心を得ようとしてしまうのは、まさに未熟さゆえなのだから。
それらの部分が改まっていくにはさらに時間と経験が必要だった。
十三歳になったからといって、
『後はもう自分で考えろ!』
とは、ミハエルもアオも決して言わない。年齢で一括りにして思考を放棄することはない。いつだって<本人>を見る。
それがまた、子供にとっても親が自分をちゃんと見てくれていることの実感になる。
そして、<親の目>がしっかりと自分に届いていることの実感にもなり、
『親が見ていないから悪いことをしてもいい』
みたいな発想も抑止する。
<放任>は<責任の放棄>であって、自主自立を促す手段ではない。
『手出し口出しはしないがちゃんと見ている。それが大事』
ミハエルとアオはそう考えている。
だから自分の子供達が他人を傷付け苦しめていたら放ってはおかない。
親の責任として、
『その行いは好ましくない』
と、子供がしっかりと理解するまで、何回でも何回でも何回でも何回でも諭す。五年でも十年でも理解してくれるまで諦めない。
自分の数分の一も生きてない子供相手にそれを諦めていて、何が<大人>か。
何のための<人生経験>か。ただ漫然と生きて歳だけ取った<子供>ではないか。
ミハエルもそう思っているし、特にアオは自分にそう言い聞かせている。
そしてそんな両親の姿を間近で見ているから、安和も人間を見限らない。
『人間なんてこんなもの』
とは考えないようにしている。
なぜなら、『人間なんて』と言ってしまうと、そこに、母親のアオや妹の椿や、<もう一人の母親>に等しいさくらや、さくらの子で自分にとっても姉や兄同然の恵莉花や秋生まで含まれてしまう。
それは嫌だった。
つい『人間なんて』と思ってしまいそうになることはあっても、その考えに呑まれてしまうことはない。
アオが、敢えて<眷属>にならないのは、吸血鬼になってしまわないのは、実はそういう点も深慮してのことだった。
それを見ていると、安和は暗澹たる気持ちにもなる。
『人間なんてこんなもの』
と思ってしまいそうにもなる。
『人間なんか全部眷属にしちゃえばいいのに』
と思ってしまいそうにもなる。
けれど、『そうじゃない』。
一部を見ただけで全体を一括りにするのは、
<自分は賢いと思い込んでいる愚者の発想>
だ。
<自分は世界を見渡せていると思い込んでいる暗愚>
でしかない。
と、安和は考えることができている。
でも、そこで<愚者>や<暗愚>と考えてしまう辺りがまだまだ未熟と言えるだろう。
そうやって見下すことでお手軽に安心を得ようとしてしまうのは、まさに未熟さゆえなのだから。
それらの部分が改まっていくにはさらに時間と経験が必要だった。
十三歳になったからといって、
『後はもう自分で考えろ!』
とは、ミハエルもアオも決して言わない。年齢で一括りにして思考を放棄することはない。いつだって<本人>を見る。
それがまた、子供にとっても親が自分をちゃんと見てくれていることの実感になる。
そして、<親の目>がしっかりと自分に届いていることの実感にもなり、
『親が見ていないから悪いことをしてもいい』
みたいな発想も抑止する。
<放任>は<責任の放棄>であって、自主自立を促す手段ではない。
『手出し口出しはしないがちゃんと見ている。それが大事』
ミハエルとアオはそう考えている。
だから自分の子供達が他人を傷付け苦しめていたら放ってはおかない。
親の責任として、
『その行いは好ましくない』
と、子供がしっかりと理解するまで、何回でも何回でも何回でも何回でも諭す。五年でも十年でも理解してくれるまで諦めない。
自分の数分の一も生きてない子供相手にそれを諦めていて、何が<大人>か。
何のための<人生経験>か。ただ漫然と生きて歳だけ取った<子供>ではないか。
ミハエルもそう思っているし、特にアオは自分にそう言い聞かせている。
そしてそんな両親の姿を間近で見ているから、安和も人間を見限らない。
『人間なんてこんなもの』
とは考えないようにしている。
なぜなら、『人間なんて』と言ってしまうと、そこに、母親のアオや妹の椿や、<もう一人の母親>に等しいさくらや、さくらの子で自分にとっても姉や兄同然の恵莉花や秋生まで含まれてしまう。
それは嫌だった。
つい『人間なんて』と思ってしまいそうになることはあっても、その考えに呑まれてしまうことはない。
アオが、敢えて<眷属>にならないのは、吸血鬼になってしまわないのは、実はそういう点も深慮してのことだった。
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