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第二幕
真夜中の団欒 その1
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「それにしてもママも鬼畜だよね。いくらWeb版だからって好きにやりすぎじゃないの?」
<仕事としての原稿>を書き終えて送信したアオが、リビングで、かつてさくらにボツにされてWebで発表することにした作品の更新をしていたのを覗き見ていた安和が、唐揚げを口にしながら言った。
続けて、
「ほのぼの日常ものだったはずのをメンドクサイ理屈で埋め尽くすとか、きっと、読者は置いてけぼりだよ? <ほのぼの日常もの>を期待してた読者への裏切りじゃないの?」
とも問い掛ける。
するとアオは、苦笑いを浮かべながらも、
「まあそう思う人もいるだろうね。でも、<作品>はあくまで作者のものであり権利者のものなんだ。
『作品は読者や視聴者のもの』
っていうのは、大いなる勘違いだよ。作品をどう料理するかは、作者や権利者の専権事項。それ以外の人間があれこれ言うのは勝手だけど、聞き届けなきゃいけない理由はない」
きっぱりと答えた。
それに対して安和は、
「え~? それじゃ読者や視聴者が期待してなかったり嫌がるような展開にしてもいいってこと?」
不満気に訊き返す。
けれどアオはやはり平然と、
「そうだよ」
と。
だから安和は、
「それじゃ売れないじゃん! 人気出ないじゃん!」
自分の感じたことを素直に口にする。
そんな我が子に、アオは穏やかに応えた。
「そうだね。そんなことをしてたら『売れない』。売れなきゃ商売にならない。商売にならないと困るから、あくまで仕事でやってる売り手側・作り手側は、読者や視聴者の望んでるものを作ろうと心掛ける。
でも、それだけ。そこにあるのは読者や視聴者に<媚び>を売ってる商売人の打算だけなんだよ。
だいたいさ、<商品>が本当に買い手のものだっていうのなら、パソコンメーカーや家電メーカーや自動車メーカーが、商品のサポートに期限を切ってるのはおかしいじゃん。それこそ買い手がその商品を『もう要らない』と思うまで何十年でもサポートしなきゃおかしいでしょ? <買い手のもの>のはずなのに、メーカーの都合で<修理不可能の無価値なもの>に変えちゃうんだよ?
漫画や小説だって、応援してくれる読者が、数は少なくても確かにいるのに、それが利益にならないからって打ち切ったりするよね?
おかしいじゃん。本当に読者のものなら、たとえ一人でも応援してくれる読者がいる限りは打ち切っちゃダメじゃん。でも現実は、そうじゃない。
だけど結局はそれと同じことなんだよ。
『作品は読者や視聴者のもの』
なんてのは、ただの建前論。綺麗事のお題目でしかないってこと」
「え~……?」
困惑する安和に、アオは笑顔で告げたのだった。
<仕事としての原稿>を書き終えて送信したアオが、リビングで、かつてさくらにボツにされてWebで発表することにした作品の更新をしていたのを覗き見ていた安和が、唐揚げを口にしながら言った。
続けて、
「ほのぼの日常ものだったはずのをメンドクサイ理屈で埋め尽くすとか、きっと、読者は置いてけぼりだよ? <ほのぼの日常もの>を期待してた読者への裏切りじゃないの?」
とも問い掛ける。
するとアオは、苦笑いを浮かべながらも、
「まあそう思う人もいるだろうね。でも、<作品>はあくまで作者のものであり権利者のものなんだ。
『作品は読者や視聴者のもの』
っていうのは、大いなる勘違いだよ。作品をどう料理するかは、作者や権利者の専権事項。それ以外の人間があれこれ言うのは勝手だけど、聞き届けなきゃいけない理由はない」
きっぱりと答えた。
それに対して安和は、
「え~? それじゃ読者や視聴者が期待してなかったり嫌がるような展開にしてもいいってこと?」
不満気に訊き返す。
けれどアオはやはり平然と、
「そうだよ」
と。
だから安和は、
「それじゃ売れないじゃん! 人気出ないじゃん!」
自分の感じたことを素直に口にする。
そんな我が子に、アオは穏やかに応えた。
「そうだね。そんなことをしてたら『売れない』。売れなきゃ商売にならない。商売にならないと困るから、あくまで仕事でやってる売り手側・作り手側は、読者や視聴者の望んでるものを作ろうと心掛ける。
でも、それだけ。そこにあるのは読者や視聴者に<媚び>を売ってる商売人の打算だけなんだよ。
だいたいさ、<商品>が本当に買い手のものだっていうのなら、パソコンメーカーや家電メーカーや自動車メーカーが、商品のサポートに期限を切ってるのはおかしいじゃん。それこそ買い手がその商品を『もう要らない』と思うまで何十年でもサポートしなきゃおかしいでしょ? <買い手のもの>のはずなのに、メーカーの都合で<修理不可能の無価値なもの>に変えちゃうんだよ?
漫画や小説だって、応援してくれる読者が、数は少なくても確かにいるのに、それが利益にならないからって打ち切ったりするよね?
おかしいじゃん。本当に読者のものなら、たとえ一人でも応援してくれる読者がいる限りは打ち切っちゃダメじゃん。でも現実は、そうじゃない。
だけど結局はそれと同じことなんだよ。
『作品は読者や視聴者のもの』
なんてのは、ただの建前論。綺麗事のお題目でしかないってこと」
「え~……?」
困惑する安和に、アオは笑顔で告げたのだった。
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