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第二幕

ミハエルの日常 その4

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登下校中の子供達を見守るために、ミハエルは毎日、街角に立った。

そして、子供達が悪ふざけをしていると、敢えて気配を消さずに近付き、

「危ないよ」

と声を掛けたりもした。

昨今、顔見知りでもない子供に声を掛けると、

<声掛け事案>

などと言われたりもするものの、さすがにミハエル自身がまだ小学生にも見える姿なので、この辺りはさすがに大丈夫だろう。

大丈夫なはずなのだが、声を掛けられた方の子供達は、

「うわ~! 不審者だ~!!」

「声掛け事案だ~!!」

などと、明らかに怯えているわけでもなんでもない感じで声を上げつつ逃げ去ったりもした。

しかも、その数日後にはまた、同じようにふざけていたりする。

こういうのを見ると、

『口で言っても分からない糞ガキ!!』

などと罵るのが現れるが、それは自分自身を見てない人間の言うことだろう。

『他人を罵るのは礼節を欠く』

『他人を口汚く罵るのは良くない』

というのが本来は常識であると教わってはいないだろうか? なのに『糞ガキ』などと罵るということは、それを言ってる本人が、何度も『他人を口汚く罵るのは良くない』的に言われて来ているはずにも拘らず、自らの行いを改めていないということではないか。

ミハエルに注意されても行いを改めない子供達もそれと同じことでしかない。

ではなぜ、改まらないのだろう?

自分自身の経験を振り返って欲しい。

『他人を罵るのは礼節を欠く』『他人を口汚く罵るのは良くない』的にお説教してきた相手を、自分は信用してただろうか? 信頼してただろうか? 『お前が言うな!』的なことを思ってはいなかっただろうか?

もし、信用している信頼している尊敬している相手から諭されても態度を改めなかったり、言い訳を並べて自身を正当化したりしているなら、それは、自分を諭してくれた、信用しているはずの、信頼しているはずの、尊敬しているはずの相手を愚弄していることにはならないだろうか? 軽んじていることにはならないだろうか?

信用しているなら、信頼しているなら、尊敬しているなら、どうしてその人の言葉に耳を傾けない?

ミハエルはそれをよく理解していた。

信用しているはずの、信頼しているはずの、尊敬しているはずの相手の言葉にさえ耳を傾けない人間もいるくらいなのだから、完全に見ず知らずの、信用も信頼も尊敬もしているはずのない相手の注意など素直に聞かないのはむしろ当然のことだと。

だから、その子供達のことを『糞ガキ』などと罵ったりもしない。残念には思いつつも、いつか何らかの形で自身の行いを振り返った時に、

『あれは注意されて当然だった』

と思ってくれればそれでいいと考えていたのだった。

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