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第二幕
洸の日常 その12
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こうしてA子の魔手から逃れた洸だったが、A子は諦めようとしなかったのだ。
ただ、自動車でラブホテルに入って行くところが知人に見られていたらしく学校で噂になり、PTA の活動においてもあからさまに避けられるようになっていった。
幸い、その時に一緒に乗っていたのは若そうな男性だったとしか分からなかったそうなので、A子が洸につきまとっていることは知られていたものの確証がなく、しかもラブホテルから全力で逃げ出した洸が飲み物を買おうとして立ち寄った、一キロ以上離れたコンビニでファンの女の子と遭遇して言葉を交わしたことでそれがアリバイとされ、大きな騒ぎにはならなかったという。
そしてこの噂はA子の夫も知るところとなり、お互いに不倫をしつつそれについては不干渉としていたものの、学校中に噂が広まってしまった以上は黙ってもいられず、不貞行為を理由に離婚を切り出され、A子の側も夫の不貞行為を暴露、数年をかけた訴訟合戦の間に家庭は崩壊。
娘は両親に対して強い嫌悪感を抱いて母方の祖父母の家に引き取られることになり転校。今では祖父母の家からも出奔し、消息は不明となっている。
両親も離婚が成立して、双方共に不貞行為があったということで慰謝料は発生しなかったものの財産分与のために当時の家は売却・現金化されて半分ずつ受け取り、今後一切、係わり合いにならないことを条件に和解に至った。
これだけを見るとA子が家庭崩壊の原因を作ったように見えるかもしれないものの、それよりずっと以前に実質的に夫婦関係は崩壊していたので、たまたまA子の方が先に表沙汰になったとしか言えないだろう。
事実、父親の方もこの後、改めて複数の女性と関係を持ち、それが交際相手に発覚して傷害事件にまで至っていたりするのだから。
仮面夫婦を続けて家庭を維持しようとしていたという点では我慢していたようにも見えるかもしれないものの、不貞行為を行っていたとなればそれはまったく『我慢していた』ことに当らないのではないだろうか?
結局、我慢が足りなかったことで結果として守ろうとしていた家庭を失うという形となった。
しかも、A子にとってこれはまだマシな結末だったかもしれない。未成年を相手の淫行として表に出ていたら、それこそどんなことになっていたか……
この話、洸がウェアウルフだったという以外は、他でも十分にありえる話かもしれない。
A子については、洸のことが本気で好きならば、きちんと離婚した上で彼が成人するまで待った上でなら、たとえフられたともしてもただの<失恋話>で済んだのだと思われる。
そして一番の被害者は、こんな両親の下に生まれた娘だっただろう。
ただ、自動車でラブホテルに入って行くところが知人に見られていたらしく学校で噂になり、PTA の活動においてもあからさまに避けられるようになっていった。
幸い、その時に一緒に乗っていたのは若そうな男性だったとしか分からなかったそうなので、A子が洸につきまとっていることは知られていたものの確証がなく、しかもラブホテルから全力で逃げ出した洸が飲み物を買おうとして立ち寄った、一キロ以上離れたコンビニでファンの女の子と遭遇して言葉を交わしたことでそれがアリバイとされ、大きな騒ぎにはならなかったという。
そしてこの噂はA子の夫も知るところとなり、お互いに不倫をしつつそれについては不干渉としていたものの、学校中に噂が広まってしまった以上は黙ってもいられず、不貞行為を理由に離婚を切り出され、A子の側も夫の不貞行為を暴露、数年をかけた訴訟合戦の間に家庭は崩壊。
娘は両親に対して強い嫌悪感を抱いて母方の祖父母の家に引き取られることになり転校。今では祖父母の家からも出奔し、消息は不明となっている。
両親も離婚が成立して、双方共に不貞行為があったということで慰謝料は発生しなかったものの財産分与のために当時の家は売却・現金化されて半分ずつ受け取り、今後一切、係わり合いにならないことを条件に和解に至った。
これだけを見るとA子が家庭崩壊の原因を作ったように見えるかもしれないものの、それよりずっと以前に実質的に夫婦関係は崩壊していたので、たまたまA子の方が先に表沙汰になったとしか言えないだろう。
事実、父親の方もこの後、改めて複数の女性と関係を持ち、それが交際相手に発覚して傷害事件にまで至っていたりするのだから。
仮面夫婦を続けて家庭を維持しようとしていたという点では我慢していたようにも見えるかもしれないものの、不貞行為を行っていたとなればそれはまったく『我慢していた』ことに当らないのではないだろうか?
結局、我慢が足りなかったことで結果として守ろうとしていた家庭を失うという形となった。
しかも、A子にとってこれはまだマシな結末だったかもしれない。未成年を相手の淫行として表に出ていたら、それこそどんなことになっていたか……
この話、洸がウェアウルフだったという以外は、他でも十分にありえる話かもしれない。
A子については、洸のことが本気で好きならば、きちんと離婚した上で彼が成人するまで待った上でなら、たとえフられたともしてもただの<失恋話>で済んだのだと思われる。
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