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第二幕

自分の結婚相手に

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アオは思う。

『結婚相手の親の介護とか本心ではしたくない。と思っている人間はきっと多いだろうな。と言うか、『結婚なんてしない!』と思う原因の一つだよね。間違いなく…』

と。なにしろ自分がそうだから、

『お世話になってるんだから恩を返すのは当たり前』

などという綺麗事で、

『配偶者の親の介護をするのは当たり前』

とは言えない。

『だいたいさあ、<介護>ともなれば、『家計を助けてもらった』とかなんていう程度の<恩>と釣り合うようなことなの? 

百歩、いや、万歩譲って実の子供にとっちゃ<育ててくれた人>という意味で恩があるとしても、配偶者にとっちゃ、どう足掻いたって<赤の他人>だよね。それを『タダで介護しろ』とか、やっぱり無理筋にしか思えないんだけど?』

とも。

さらに、

『ミハエルの場合は、お母さんは亡くなってるし、お父さんは消息不明らしいしで、しかもどっちも吸血鬼な訳だから、生きてたとしたって人間による介護なんて必要としてないよね。

私の場合はそんなこんなで<配偶者の親の介護問題>については完全に回避できちゃってるから、あれこれ言える立場じゃないんだよな~。

これはさくらも同じ。エンディミオンの両親はそれこそ二人とも亡くなってるし』

というわけで、それこそ口出しするのはおかしいとさえ思っていた。

その上で、

恵莉花えりか安和アンナの言うことはもっともだと思うよ。

あきらが私のことを大切に想ってくれてるのは嬉しいし、椿つばきがさくらを助けてあげたいと思ってくれてるのは、母親として誇りに感じる。

だけどさ、現実問題として、赤の他人のために自分の人生を費やすような<介護>を進んで行える人って滅多にいないんだよ。お金をもらって<仕事>としてやるのでさえ半端なく大変なことなんだ。

それなのに、『タダでやらせよう』と本気で思ってる相手とその親のために、奉仕できる? って話だよね。

椿もさ、洸やさくらのことを思い浮かべるんじゃなくて、クラスの男子と結婚してその親のって考えたら、どう思う?」

と口にすると、瞬間、椿も、

「!? それはない!! ムリムリムリムリムリ……っっ!!」

手を振り首を振って全力で否定した。

これにはあきらも苦笑いだ。悠里ユーリ秋生あきおも。

けれど、恵莉花と安和は、

「でしょう~?」

揃って声を上げる。そして、

「この人を育ててくれた御両親なら、自分にできる範囲で力になりたい。とは私だって思うよ」

と安和。加えて、

「そうそう。だけどそこまでじゃない相手と結婚してその親の面倒までなんて、綺麗事を抜きにしたら現実的じゃないよ」

と、恵莉花えりか。さらに、

「ましてさ、『自分の結婚相手に介護やらせたらタダじゃん』とか考えてるような人間と結婚したいと思える?」

とも。

「……確かに……」

椿もそう応えるしかなかったのだった。

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