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第二幕

自分の選択に後悔してない

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<生活保護でいい暮らししてる未婚の母>

近所の主婦を中心にそういう噂が出ているのは事実だった。

まあ、確かに、外に仕事に行ってる気配がなく、スーツを着た同じ女性が何度も出入りしているとなれば、そんな風にも解釈できなくはないのかもしれない。

しかし、非常に無責任な邪推であることは事実。

けれど、アオとしても詳細を話すこともできないし、何より、相手をするつもりもないので勝手にしててくれて構わない。そんな事実はないし。

恵莉花えりかは言う。

「自分の選択に責任持てる人間と出逢える可能性なんてあんの? って思っちゃうんだよねぇ……」

肩を竦め首を横に振りながら。

「確かに……」

これにはアオも頷くしかできない。

自分が幸せじゃないからって、自分の選択に満足してないからって、他人について無責任な噂を流してストレス発散しているようなのがこんなに当たり前にいるんじゃ、そしてそんなのを結婚相手に選ぶようなのばかりじゃ、とても<自分の選択に責任持てる人間>に出逢える気がしない。

アオがこれまで出逢えたのは、女性であるさくらと、吸血鬼であるミハエルやセルゲイだけだし。

だから、とても、

『いつか良い人に出逢えるよ』

なんて無責任なことは言えない。自分だってミハエルと出逢うまでは、

『結婚なんてしない!』

と思っていたのだから。

自分がそうだったから、子供達に対しても、

『結婚しろ!』

『結婚すれば幸せになれる!』

『結婚こそが幸せだ!』

とは言えるはずもない。

その上で、アオは言う。

「結婚すれば幸せになる、ワケじゃないよ。結婚しなくても幸せになれる人はなれると思う。

私も、ミハエルに出逢ってなかったら男性と一緒になんて暮らしてなかった。相手がミハエルじゃなかったら無理だった。

だってさ、私みたいなメンドクサイのを理解してくれる人ってそんなにいる?

いないよ。いままで出逢った中でも人間はさくら一人だったよ。

さくらが男の人だったら結婚してたかもだけどさ。

ああでも、さくらって恋愛対象って感じじゃないんだよな~。どこまでいっても<友達>って言うか<仲間>って言うか……

うん……? あ、そうだ。でも結婚相手って、要するに、

<一緒に生きていく仲間>

なんだよね。

結婚なんかしないって言ってる人の中にはさ、『一生の友達がいればいい』って言ってる人もいるじゃん? 結婚して幸せになってる人ってさ、その、『一生の友達』がまさに結婚した相手だと思うんだよ。そういう相手とだったら、結婚しても幸せになれると思うんだ。

私にとってのミハエルがまさにそれ。

結婚したから幸せなわけでも、結婚しなかったから幸せなわけでもないよ。自分の選択に後悔してないから幸せになれてるだけだよ。

逆に、結婚してても結婚してなくても、自分の選択を後悔して泣き言並べてる人って少なくとも幸せじゃないよね?」

その言葉に、恵莉花えりか悠里ユーリ秋生あきおも、

「あ~、かもしれない」

と呟いたのだった。

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