175 / 697
第二幕
自分の選択に後悔してない
しおりを挟む
<生活保護でいい暮らししてる未婚の母>
近所の主婦を中心にそういう噂が出ているのは事実だった。
まあ、確かに、外に仕事に行ってる気配がなく、スーツを着た同じ女性が何度も出入りしているとなれば、そんな風にも解釈できなくはないのかもしれない。
しかし、非常に無責任な邪推であることは事実。
けれど、アオとしても詳細を話すこともできないし、何より、相手をするつもりもないので勝手にしててくれて構わない。そんな事実はないし。
恵莉花は言う。
「自分の選択に責任持てる人間と出逢える可能性なんてあんの? って思っちゃうんだよねぇ……」
肩を竦め首を横に振りながら。
「確かに……」
これにはアオも頷くしかできない。
自分が幸せじゃないからって、自分の選択に満足してないからって、他人について無責任な噂を流してストレス発散しているようなのがこんなに当たり前にいるんじゃ、そしてそんなのを結婚相手に選ぶようなのばかりじゃ、とても<自分の選択に責任持てる人間>に出逢える気がしない。
アオがこれまで出逢えたのは、女性であるさくらと、吸血鬼であるミハエルやセルゲイだけだし。
だから、とても、
『いつか良い人に出逢えるよ』
なんて無責任なことは言えない。自分だってミハエルと出逢うまでは、
『結婚なんてしない!』
と思っていたのだから。
自分がそうだったから、子供達に対しても、
『結婚しろ!』
『結婚すれば幸せになれる!』
『結婚こそが幸せだ!』
とは言えるはずもない。
その上で、アオは言う。
「結婚すれば幸せになる、ワケじゃないよ。結婚しなくても幸せになれる人はなれると思う。
私も、ミハエルに出逢ってなかったら男性と一緒になんて暮らしてなかった。相手がミハエルじゃなかったら無理だった。
だってさ、私みたいなメンドクサイのを理解してくれる人ってそんなにいる?
いないよ。いままで出逢った中でも人間はさくら一人だったよ。
さくらが男の人だったら結婚してたかもだけどさ。
ああでも、さくらって恋愛対象って感じじゃないんだよな~。どこまでいっても<友達>って言うか<仲間>って言うか……
うん……? あ、そうだ。でも結婚相手って、要するに、
<一緒に生きていく仲間>
なんだよね。
結婚なんかしないって言ってる人の中にはさ、『一生の友達がいればいい』って言ってる人もいるじゃん? 結婚して幸せになってる人ってさ、その、『一生の友達』がまさに結婚した相手だと思うんだよ。そういう相手とだったら、結婚しても幸せになれると思うんだ。
私にとってのミハエルがまさにそれ。
結婚したから幸せなわけでも、結婚しなかったから幸せなわけでもないよ。自分の選択に後悔してないから幸せになれてるだけだよ。
逆に、結婚してても結婚してなくても、自分の選択を後悔して泣き言並べてる人って少なくとも幸せじゃないよね?」
その言葉に、恵莉花も悠里も秋生も、
「あ~、かもしれない」
と呟いたのだった。
近所の主婦を中心にそういう噂が出ているのは事実だった。
まあ、確かに、外に仕事に行ってる気配がなく、スーツを着た同じ女性が何度も出入りしているとなれば、そんな風にも解釈できなくはないのかもしれない。
しかし、非常に無責任な邪推であることは事実。
けれど、アオとしても詳細を話すこともできないし、何より、相手をするつもりもないので勝手にしててくれて構わない。そんな事実はないし。
恵莉花は言う。
「自分の選択に責任持てる人間と出逢える可能性なんてあんの? って思っちゃうんだよねぇ……」
肩を竦め首を横に振りながら。
「確かに……」
これにはアオも頷くしかできない。
自分が幸せじゃないからって、自分の選択に満足してないからって、他人について無責任な噂を流してストレス発散しているようなのがこんなに当たり前にいるんじゃ、そしてそんなのを結婚相手に選ぶようなのばかりじゃ、とても<自分の選択に責任持てる人間>に出逢える気がしない。
アオがこれまで出逢えたのは、女性であるさくらと、吸血鬼であるミハエルやセルゲイだけだし。
だから、とても、
『いつか良い人に出逢えるよ』
なんて無責任なことは言えない。自分だってミハエルと出逢うまでは、
『結婚なんてしない!』
と思っていたのだから。
自分がそうだったから、子供達に対しても、
『結婚しろ!』
『結婚すれば幸せになれる!』
『結婚こそが幸せだ!』
とは言えるはずもない。
その上で、アオは言う。
「結婚すれば幸せになる、ワケじゃないよ。結婚しなくても幸せになれる人はなれると思う。
私も、ミハエルに出逢ってなかったら男性と一緒になんて暮らしてなかった。相手がミハエルじゃなかったら無理だった。
だってさ、私みたいなメンドクサイのを理解してくれる人ってそんなにいる?
いないよ。いままで出逢った中でも人間はさくら一人だったよ。
さくらが男の人だったら結婚してたかもだけどさ。
ああでも、さくらって恋愛対象って感じじゃないんだよな~。どこまでいっても<友達>って言うか<仲間>って言うか……
うん……? あ、そうだ。でも結婚相手って、要するに、
<一緒に生きていく仲間>
なんだよね。
結婚なんかしないって言ってる人の中にはさ、『一生の友達がいればいい』って言ってる人もいるじゃん? 結婚して幸せになってる人ってさ、その、『一生の友達』がまさに結婚した相手だと思うんだよ。そういう相手とだったら、結婚しても幸せになれると思うんだ。
私にとってのミハエルがまさにそれ。
結婚したから幸せなわけでも、結婚しなかったから幸せなわけでもないよ。自分の選択に後悔してないから幸せになれてるだけだよ。
逆に、結婚してても結婚してなくても、自分の選択を後悔して泣き言並べてる人って少なくとも幸せじゃないよね?」
その言葉に、恵莉花も悠里も秋生も、
「あ~、かもしれない」
と呟いたのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる