上 下
174 / 697
第二幕

結婚するかどうか

しおりを挟む
正直、アオと出逢っていなければ、自分も、同じ吸血鬼の女性と結婚していただろうと思う。そもそも、人間として認められていない吸血鬼の場合、人間の制度上での<結婚>はできないし、実際、アオも、法律上は<未婚の母>だ。

それもあって、

「結婚するかどうかは、『一緒に生きていたい』と思える相手と出逢えたらでいいと思う」

と告げる。

するとアオも、

「そうだね。はっきり言って私だってミハエルと出逢ってなければ結婚なんてしてないよ。って、私もさくらも、法律の上では<未婚の母>だけどさ。

そんな私達が『結婚しろ』とか『結婚しない方がいい』とか、言えないって」

ミハエルと視線を交わしながら、そう言った。その上で語る。

「世の中には、やたらと結婚についてのデメリットを声高に叫ぶ人がいるけど、そうやって強調するってのは、たぶん、後ろめたさの裏返しだろうなって思うんだよね。

無意識に後ろめたいとかネガティブなことだと思ってるから、とにかく結婚のデメリットを強調して自分を正当化しようとしてるんだろうねえ。

と言うのも、私も覚えがあるんだ。私もミハエルと出逢うまでは一生結婚なんかしないって思ってたしさ。で、『結婚なんかする奴はバカだ』みたいに思ってたんだよ。なのにミハエルに出逢った途端に手の平返しちゃった。

かと思うと、結婚した人でもさ、『失敗した』とか『結婚するんじゃなかった』とか『結婚は人生の墓場だ』とか言う人いるじゃん? でも私はそれもどうなの?って思ってる。だって、結婚するっていう選択したのは自分じゃん? 自分の選択についてそんな態度ってどうなのよ? しかも自分以外の誰かの所為にして、あたかも自分は被害者だみたいな言い方してる人もいるし。

中には本当に自分じゃ選択できない形で無理やり結婚させられた人もいるだろうしそういう人は確かに<被害者>なんだろうけどさ、自分で結婚することを選択した人の場合、そうじゃないよね? そういう相手を選択したのは自分だよね?

自分の選択に責任を持てない大人の姿を見てたら、そりゃ子供だって結婚に夢なんて持てないよ。私も持てなかったよ。

私もね、近所の人が私のことを、

<生活保護でいい暮らししてる未婚の母>

みたいに噂してんのは知ってるよ。私がいっつも家にいるから生活保護受けてるって思われてて、それで、ちょくちょくうちに来るさくらのことは<ケースワーカー>だと思ってるみたいだね。

けどさ、そういう誤解を受けるような選択したのは私なんだ。私が自分でそれを選んだんだよ。だから事情を知らない人が何言ってても右から左だよ。私は自分の選択に責任を持ちたいんだ。誰かの所為になんてしたくない。

誰かの所為にして言い訳とか、最高にカッコ悪いと思うからさ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太
キャラ文芸
 これは廃部を賭けて大会に挑む高校生たちの物語。  挑むは★超絶! 悶絶! 料理バトル!★  そのルールは単純にて深淵。  対戦者は互いに「料理」「食材」「テーマ」の3つからひとつずつ選び、お題を決める。  そして、その2つのお題を満たす料理を作って勝負するのだ!  例えば「料理:パスタ」と「食材:トマト」。  まともな勝負だ。  例えば「料理:Tボーンステーキ」と「食材:イカ」。  骨をどうすればいいんだ……  例えば「料理:満漢全席」と「テーマ:おふくろの味」  どんな特級厨師だよ母。  知力と体力と料理力を駆使して競う、エンターテイメント料理ショー!  特売大好き貧乏学生と食品大会社令嬢、小料理屋の看板娘が今、ここに挑む!  敵はひとクセもふたクセもある奇怪な料理人(キャラクター)たち。  この対戦相手を前に彼らは勝ち抜ける事が出来るのか!?  料理バトルものです。  現代風に言えば『食〇のソーマ』のような作品です。  実態は古い『一本包丁満〇郎』かもしれません。  まだまだレベル的には足りませんが……  エロ系ではないですが、それを連想させる表現があるのでR15です。  パロディ成分多めです。  本作は小説家になろうにも投稿しています。

結婚までの120日~結婚式が決まっているのに前途は見えない~【完結】

まぁ
恋愛
イケメン好き&イケオジ好き集まれ~♡ 泣いたあとには愛されましょう☆*: .。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ 優しさと思いやりは異なるもの…とても深い、大人の心の奥に響く読み物。 6月の結婚式を予約した私たちはバレンタインデーに喧嘩した 今までなら喧嘩になんてならなかったようなことだよ… 結婚式はキャンセル?予定通り?それとも…彼が私以外の誰かと結婚したり 逆に私が彼以外の誰かと結婚する…そんな可能性もあるのかな… バレンタインデーから結婚式まで120日…どうなっちゃうの?? お話はフィクションであり作者の妄想です。

結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ
キャラ文芸
倉敷紗々(30歳)、独身。両親に結婚をせがまれて、嫌気がさしていた。 仕方なく、結婚相談所で登録を行うことにした。 本当は、結婚なんてしたくない、子供なんてもってのほか、どうしたものかと考えた彼女が出した結論とは? ※BL(ボーイズラブ)という表現が出てきますが、BL好きには物足りないかもしれません。  主人公の独断と偏見がかなり多いです。そこのところを考慮に入れてお読みください。 ※この作品はフィクションです。実際の人物、団体などとは関係ありません。 ※番外編を随時更新中。

秘伝賜ります

紫南
キャラ文芸
『陰陽道』と『武道』を極めた先祖を持つ大学生の高耶《タカヤ》は その先祖の教えを受け『陰陽武道』を継承している。 失いつつある武道のそれぞれの奥義、秘伝を預かり 継承者が見つかるまで一族で受け継ぎ守っていくのが使命だ。 その過程で、陰陽道も極めてしまった先祖のせいで妖絡みの問題も解決しているのだが…… ◆◇◆◇◆ 《おヌシ! まさか、オレが負けたと思っておるのか!? 陰陽武道は最強! 勝ったに決まっとるだろ!》 (ならどうしたよ。あ、まさかまたぼっちが嫌でとかじゃねぇよな? わざわざ霊界の門まで開けてやったのに、そんな理由で帰って来ねえよな?) 《ぐぅっ》……これが日常? ◆◇◆ 現代では恐らく最強! けれど地味で平凡な生活がしたい青年の非日常をご覧あれ! 【毎週水曜日0時頃投稿予定】

毎日記念日小説

百々 五十六
キャラ文芸
うちのクラスには『雑談部屋』がある。 窓側後方6つの机くらいのスペースにある。 クラスメイトならだれでも入っていい部屋、ただ一つだけルールがある。 それは、中にいる人で必ず雑談をしなければならない。 話題は天の声から伝えられる。 外から見られることはない。 そしてなぜか、毎回自分が入るタイミングで他の誰かも入ってきて話が始まる。だから誰と話すかを選ぶことはできない。 それがはまってクラスでは暇なときに雑談部屋に入ることが流行っている。 そこでは、日々様々な雑談が繰り広げられている。 その内容を面白おかしく伝える小説である。 基本立ち話ならぬすわり話で動きはないが、面白い会話の応酬となっている。 何気ない日常の今日が、実は何かにとっては特別な日。 記念日を小説という形でお祝いする。記念日だから再注目しよう!をコンセプトに小説を書いています。 毎日が記念日!! 毎日何かしらの記念日がある。それを題材に毎日短編を書いていきます。 題材に沿っているとは限りません。 ただ、祝いの気持ちはあります。 記念日って面白いんですよ。 貴方も、もっと記念日に詳しくなりません? 一人でも多くの人に記念日に興味を持ってもらうための小説です。 ※この作品はフィクションです。作品内に登場する人物や団体は実際の人物や団体とは一切関係はございません。作品内で語られている事実は、現実と異なる可能性がございます…

天界アイドル~ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら~

B-pro@神話創作してます
キャラ文芸
全話挿絵付き!ギリシャ神話モチーフのSFファンタジー・青春ブロマンス(BL要素あり)小説です。 現代から約1万3千年前、古代アトランティス大陸は水没した。 古代アトランティス時代に人類を助けていた宇宙の地球外生命体「神」であるヒュアキントスとアドニスは、1万3千年の時を経て宇宙(天界)の惑星シリウスで目を覚ますが、彼らは神格を失っていた。 そんな彼らが神格を取り戻す条件とは、他の美少年達ガニュメデスとナルキッソスとの4人グループで、天界に地球由来のアイドル文化を誕生させることだったーー⁉ 美少年同士の絆や友情、ブロマンス、また男神との同性愛など交えながら、少年達が神として成長してく姿を描いてます。

Sonora 【ソノラ】

キャラ文芸
フランスのパリ8区。 凱旋門やシャンゼリゼ通りなどを有する大都市に、姉弟で経営をする花屋がある。 ベアトリス・ブーケとシャルル・ブーケのふたりが経営する店の名は<ソノラ>、悩みを抱えた人々を花で癒す、小さな花屋。 そこへピアニストを諦めた少女ベルが来店する。 心を癒す、胎動の始まり。

折々再々

ハコニワ
キャラ文芸
※この作品はフィクションです。 産み落とされ、創造し、何度でも繰り返す。名前もないソレは、広大な宇宙で旅をしていた。いつしか、感情や温もりを知り、全知を創造した。ソレから始まった物語は後世へ渡り、様々な登場人物に〝再々〟を与える。 キャッチコピー〈魂を識る〉        〈産み落とされ、創造し、何度でも繰り返す〉

処理中です...