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第二幕

親が子供に教育を施す

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『親が子供に教育を施す』

これは、子供を普通に人間の学校には通わせられないことがどうしても多くなる吸血鬼の間ではごく普通のことだった。

かつてはごく小規模の吸血鬼だけのコミュニティの中で<学校>に相当するものが作られてそこに子供達を通わせるということも行われていたものの、これだけ人間の数が増え、しかも情報が瞬時に世界中を駆け巡るような社会になってしまうと、人間の目を避けてそのような形をとることもなかなか大変になり、長命であるが故に知識量も経験も人間を上回ることの多い吸血鬼の親達は、それぞれ自力で自分の子供に教育を施すことが普通になっていったのだという。

それに、情報が瞬時に世界中を巡るということは、裏を返せば自分達も人間が発信した情報を容易く手に入れられるということでもあり、日常レベルで必要な<知識>はもうすべてネット上に保存されているので、必要に応じてそこから取り出せばそれで済む。

吸血鬼達はそういう形での教育を実践して来た。

そしてミハエルも。

『それで社会性が身に付くのか?』

と心配する者もいるかもしれないけれど、<学校>で社会性を学んだはずの人間達が、パワハラやセクハラや職場イジメやネットでの罵詈雑言や誹謗中傷をやめられない実情を見る限り、

『<社会性>と称されるものが身に付いているなどとは到底思えない』

ので、あてにならない幻想だとも承知している。

その上で、いずれは悠里ユーリ安和アンナにも、学校というものをあえて経験させるのもいいかもしれないとミハエルは思ってもいた。

もっとも、二人の場合は、年齢的には<成人>とされるようになってから通うことになるので、正直、問題のある学校でもそれほど心配はしなくて済むだろうとも。なにしろ大半の教師よりも上の年齢になっているはずなわけで。

一般的には五歳くらいまでは人間とそう変わらない感じで成長することの多い吸血鬼やダンピールだけれども、それはあくまで日常生活の範囲において自分で自分の身を守れるようになるまでは早く成長するということなので、三歳くらいで成長がゆっくりになったということはつまり、悠里ユーリ安和アンナも、潜在能力が非常に高いということを示していた。

実際、一対一なら相手の人間が拳銃を持っていようと今の悠里や安和でも決して負けることはないだろう。赤ん坊の手をひねるよりも容易く屈服させることができるはずだ。

むしろ心配なのは、悠里や安和をイジメようとした人間の子供が勝手に自滅することである。

悠里や安和を突き飛ばそうとして、でもまるで壁を押したようにびくともしなくて、逆に、突き飛ばそうとした子の方が転倒したり手を挫いたりすることだってあるだろうから。

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