ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
148 / 697

人間が嫌い

しおりを挟む
アオは、とてもたくさんのことを子供達に対して話す。でもそれは、一方的な<お説教>じゃなかった。だから、

「私ね、正直言ってさ、人間ってあんまり好きじゃないんだ……」

そう言う娘に対しても、アオは、頭ごなしに、

『ダメよ、そんなこと言っちゃ!』

的に否定はしない。まずは、安和が言いたいことに耳を傾ける。

「だってそうじゃん? いっつもいっつもくだらないことで争ってばかりで、ママが言ってたみたいな矛盾ばっかりのことをガーガー喚き立てて、自分が気に入らないものは叩き潰そうとするんだよ?

カナダでのことだってベネズエラでのことだって、あんな身勝手な人をのさばらせてる…ううん、違うな。あんな人達を作る人間が嫌い。

どうしてママやパパみたいにできないの? ママやパパは普通にやれてるじゃん。こんな簡単なことがどうしてできないの?」

そんな安和の疑問に、アオは、あくまで穏やかに答える。

「…そうだね。安和の言うことはもっともだと思う。ってか、私も本音ではそう思ってたりもする……」

と前置きした上で、

「でもね、ママやパパがしてるみたいなことができるようになるのだって、結局、何かの形で教わってきたからなんだ。別に、自力でそうなれたわけじゃない。

だったらさ、

『とにかく相手を殴っておとなしくさせてから言うことを聞かせる』

ってのが当たり前として育ってきたらさ、そういうものだって思っちゃうじゃん? 安和がそういうのはおかしいって感じるのだって、『そういうのは良くない』ってママやパパが思ってて、安和や悠里ユーリ椿つばきに教えなくちゃって思うから今みたいに思えるようになっただけなんだよね。

安和や悠里はダンピールだけどそう思えるのは、ダンピールだからそう思えるんじゃないよ。ダンピールだって人間と同じだよ。教わってない考え方はできないんだ。

知ってるよね? さくらの旦那さんのエンディミオンのこと。

彼は、安和や悠里と同じダンピールだけど、まるで怪物みたいに生きてきたんだ。それは、結局、そう生きるしかない環境で育ったから。

人間もダンピールも、なんだかんだ言っても環境によって考え方が決まっちゃうのは、安和と悠里が教えてくれたんだよ。

昔は、ダンピールはとにかく邪悪なだけの怪物だと思われてた。吸血鬼をとにかく憎んでて、一切、対話もできないような存在だと思われてた。

でもそれは間違いだった。現実を認めたくない者達の甘えだったんだ。それを安和と悠里が立証してみせてくれたんだ。

『欲しいものがあれば他人から奪えばいい』

『気に入らない相手はとにかくぶちのめせばいい』

それが当たり前の環境に育ったらほとんどがそうなるし、たまにそうじゃない人がいたとしたら、それはそうじゃなくなる<きっかけ>があったんだよ。

人を傷付けることが当たり前の環境を変えていれば、そこで育つ人達の考え方も変わっていくよ。

まあ、それが難しいんだけどね」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...