ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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顔くらい見せろバカ~!

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なんだかんだでネットワークには接続できるようにしたものの、当然、無線機を介したネット接続では画像すら送れず、音声だけのやり取りとなった。

「まあ、ギアナ高地じゃ仕方ないんだろうけど、顔くらい見せろバカ~!」

と、アオは不機嫌だ。

「ごめんね。愛してる」

ミハエルがそう言ってなだめようとするものの、

「それくらいで誤魔化されるか~っ!」

と返ってくる。でも、その声は本気で怒ってる時のそれじゃないことは、ミハエルだけじゃなく悠里ユーリ安和アンナにも分かった。甘えているだけなんだと。

アオのこういうところは、安和もしっかりと受け継いでいる。

表面上は怒っているように見えて、でもちゃんと相手の言葉には耳を傾ける余裕は残している。自分の素直な感情を表しつつ、でもそれだけじゃない。セルゲイやミハエルがやろうとしていることの意義も理解はしている。その上で家族の心配をしていることも伝えようとしているアオの姿勢から学んだわけだ。

ただただ自分を抑え付けて我慢しているだけでは人間関係は破綻する。自分の気持ちを相手に伝え、そして同時に相手の気持ちも理解しようとすることで初めて上手くいく可能性が高まることを、アオもミハエルも知っていた。

それを、自分達の子供である悠里と安和にも伝えていこうとしているのだろう。

自分の都合ばかり押し付けようとすることで何が起こるかという実例も学びつつ。

ベネズエラでのことも結局はそうだ。政府もゲリラ側も自分達の都合ばかり一方的に押し付けようとしておいて、最初の段階でお互いに相手の話に耳を傾けようとせずに、そのクセ、武力衝突するところまで拗れてから形ばかりの譲歩の姿勢を見せ、それを相手が受け入れないからと、

『話し合いに応じないのは向こうだ!』

と言うためのアリバイ作りにすぎない<話し合う用意があるフリ>をしているだけでしかないという状況なのだと思われる。本気で話し合うつもりがあるのなら最初からするべきだったというのに。

これが、相手が<国家>であればお互いに消耗して国力が削がれることを嫌ってある程度のところで妥協することも考えるのだろうけれど、片方がゲリラやテロリストという、実体など有って無いような、損耗すれば世界のどこからでも、国も地域も人種も関係なしでただ<同じ敵を攻撃したい者>を集めてくればいいだけ、傷付いた味方の補償や支援など放っておけばいいだけのゲリラ組織やテロ組織をいくら叩いたところで妥協を求めてはこないのも当然ではないだろうか。

ましてや背後に大国の思惑がある<代理戦争>のようなものの場合、それこそ大国は自分達の腹は痛まないのだから、いくらでも使い捨てるだろうし。

『とにかく自分の都合や要求をゴリ押すことが正しい』

という考えが何をもたらしたのか、いい加減に気付くべきなのかもしれない。

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