ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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海外旅行あるある

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<海外旅行あるある>の洗礼を受けた安和アンナは、ベネズエラにいた時よりもよほど不機嫌になっていた。

とは言え、ここで文句を並べてもどうにもならないことは安和にも分かっている。分かっているけど口にせずにいられなかった。

「あーもう! 信じられない信じられない!!」

プリプリと頬を膨らます安和を膝に抱き、セルゲイはただ彼女をそっと包み込むようにしてくれた。

そのおかげで本当は少し気分がマシにはなっていたものの、せっかくなので今は甘えさせてもらう。

こうして満足するまで甘えさせてくれるから、納得いかないことがあってもなんとか受け止められるというのもある。

<我慢>というのは、心に余裕がないとできないものだ。心に余裕があるからこそ、満たされているからこそ、それと引き換えにして我慢もできる。

セルゲイもミハエルもそういう心理を良く理解しているから、ただただ我慢ばかりを強いることはしない。

どうしても我慢しなければいけないときに備えて普段はたっぷりと甘えてもらうようにしていた。

すると、怒ることにも疲れたのか、安和はセルゲイの膝でまぶたが重そうな表情になっていた。

染みだらけでボロボロのシーツのベッドでは寝られそうになかったのが、セルゲイの膝ならホッとできたというのもあるのかもしれない。

その点、悠里ユーリはまだ安和よりは割り切れていた。男の子だからその辺りに頓着しないという傾向もあるのだろう。

美千穂ともビデオ通話で話してお互いの無事を確認し、一眠りする。

セルゲイは、すっかり寝付いた安和を膝に抱いたまま、あちこちが破れて染みもあるソファに座って寝る。彼にとってはそれでも十分に休息になった。こういう経験も積んできてるので慣れているというのもある。

そうして『寛いで』とはいかなかったもの一休みして、

「こんなホテルに泊まるくらいなら、野宿の方がマシ」

と安和が言うので、ホテルでの宿泊はやめ、レンタカーを借りて、ホームセンター的な店でキャンプ用品一式を買い揃えて積み込み、改めてギアナ高地を目指した。

が、このレンタカーもひどいもので、日本でなら確実に車検は通らないだろうなというポンコツだった。だからか、走り出してから二十分でエンジンが止まってしまう。

しかし、ここでもセルゲイは慌てない。こういうこともにも慣れているからだ。自動車の構造もエンジンの構造も頭に入っている。こういう時はどこが故障しているのかということも経験上知っていた。

エンジンフードを開けるとすぐさまディストリビュータと呼ばれる部品を手馴れた様子で外しそれを開け、中をウエス(ボロ布)で清掃した。整備が十分じゃないと汚れがたまって電気的な接触が悪くなることがある。

その読みは見事に当たり、外したディストリビュータを戻してキーを捻ると一発でエンジンが掛かったのだった。

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