139 / 697
海外旅行あるある
しおりを挟む
<海外旅行あるある>の洗礼を受けた安和は、ベネズエラにいた時よりもよほど不機嫌になっていた。
とは言え、ここで文句を並べてもどうにもならないことは安和にも分かっている。分かっているけど口にせずにいられなかった。
「あーもう! 信じられない信じられない!!」
プリプリと頬を膨らます安和を膝に抱き、セルゲイはただ彼女をそっと包み込むようにしてくれた。
そのおかげで本当は少し気分がマシにはなっていたものの、せっかくなので今は甘えさせてもらう。
こうして満足するまで甘えさせてくれるから、納得いかないことがあってもなんとか受け止められるというのもある。
<我慢>というのは、心に余裕がないとできないものだ。心に余裕があるからこそ、満たされているからこそ、それと引き換えにして我慢もできる。
セルゲイもミハエルもそういう心理を良く理解しているから、ただただ我慢ばかりを強いることはしない。
どうしても我慢しなければいけないときに備えて普段はたっぷりと甘えてもらうようにしていた。
すると、怒ることにも疲れたのか、安和はセルゲイの膝でまぶたが重そうな表情になっていた。
染みだらけでボロボロのシーツのベッドでは寝られそうになかったのが、セルゲイの膝ならホッとできたというのもあるのかもしれない。
その点、悠里はまだ安和よりは割り切れていた。男の子だからその辺りに頓着しないという傾向もあるのだろう。
美千穂ともビデオ通話で話してお互いの無事を確認し、一眠りする。
セルゲイは、すっかり寝付いた安和を膝に抱いたまま、あちこちが破れて染みもあるソファに座って寝る。彼にとってはそれでも十分に休息になった。こういう経験も積んできてるので慣れているというのもある。
そうして『寛いで』とはいかなかったもの一休みして、
「こんなホテルに泊まるくらいなら、野宿の方がマシ」
と安和が言うので、ホテルでの宿泊はやめ、レンタカーを借りて、ホームセンター的な店でキャンプ用品一式を買い揃えて積み込み、改めてギアナ高地を目指した。
が、このレンタカーもひどいもので、日本でなら確実に車検は通らないだろうなというポンコツだった。だからか、走り出してから二十分でエンジンが止まってしまう。
しかし、ここでもセルゲイは慌てない。こういうこともにも慣れているからだ。自動車の構造もエンジンの構造も頭に入っている。こういう時はどこが故障しているのかということも経験上知っていた。
エンジンフードを開けるとすぐさまディストリビュータと呼ばれる部品を手馴れた様子で外しそれを開け、中をウエス(ボロ布)で清掃した。整備が十分じゃないと汚れがたまって電気的な接触が悪くなることがある。
その読みは見事に当たり、外したディストリビュータを戻してキーを捻ると一発でエンジンが掛かったのだった。
とは言え、ここで文句を並べてもどうにもならないことは安和にも分かっている。分かっているけど口にせずにいられなかった。
「あーもう! 信じられない信じられない!!」
プリプリと頬を膨らます安和を膝に抱き、セルゲイはただ彼女をそっと包み込むようにしてくれた。
そのおかげで本当は少し気分がマシにはなっていたものの、せっかくなので今は甘えさせてもらう。
こうして満足するまで甘えさせてくれるから、納得いかないことがあってもなんとか受け止められるというのもある。
<我慢>というのは、心に余裕がないとできないものだ。心に余裕があるからこそ、満たされているからこそ、それと引き換えにして我慢もできる。
セルゲイもミハエルもそういう心理を良く理解しているから、ただただ我慢ばかりを強いることはしない。
どうしても我慢しなければいけないときに備えて普段はたっぷりと甘えてもらうようにしていた。
すると、怒ることにも疲れたのか、安和はセルゲイの膝でまぶたが重そうな表情になっていた。
染みだらけでボロボロのシーツのベッドでは寝られそうになかったのが、セルゲイの膝ならホッとできたというのもあるのかもしれない。
その点、悠里はまだ安和よりは割り切れていた。男の子だからその辺りに頓着しないという傾向もあるのだろう。
美千穂ともビデオ通話で話してお互いの無事を確認し、一眠りする。
セルゲイは、すっかり寝付いた安和を膝に抱いたまま、あちこちが破れて染みもあるソファに座って寝る。彼にとってはそれでも十分に休息になった。こういう経験も積んできてるので慣れているというのもある。
そうして『寛いで』とはいかなかったもの一休みして、
「こんなホテルに泊まるくらいなら、野宿の方がマシ」
と安和が言うので、ホテルでの宿泊はやめ、レンタカーを借りて、ホームセンター的な店でキャンプ用品一式を買い揃えて積み込み、改めてギアナ高地を目指した。
が、このレンタカーもひどいもので、日本でなら確実に車検は通らないだろうなというポンコツだった。だからか、走り出してから二十分でエンジンが止まってしまう。
しかし、ここでもセルゲイは慌てない。こういうこともにも慣れているからだ。自動車の構造もエンジンの構造も頭に入っている。こういう時はどこが故障しているのかということも経験上知っていた。
エンジンフードを開けるとすぐさまディストリビュータと呼ばれる部品を手馴れた様子で外しそれを開け、中をウエス(ボロ布)で清掃した。整備が十分じゃないと汚れがたまって電気的な接触が悪くなることがある。
その読みは見事に当たり、外したディストリビュータを戻してキーを捻ると一発でエンジンが掛かったのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる