ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
109 / 697

人間にもいろいろいる

しおりを挟む
「ホント、人間にもいろいろいるんだね」

美千穂をアパートメントまで送り届けた後、自分達もホテルに帰る途中、悠里ユーリがそう口にした。

それに対して安和アンナも、

「ホントだよね。びっくりする」

と相槌を打った。

するとミハエルが、

「確かに。だから画一的な対処法では上手くいかないことが多いんだ。僕達吸血鬼やダンピールでもそう。事例ごとに何が適切かを考えなきゃいけない。

ミチホの場合も家族が画一的な対処法に拘ったから、それに合わない彼女は辛い想いをすることになった。

だけど、彼女は幸運にもいい友達に恵まれてここまでこれた。

例外的で少数派だから多数に合わせてただ我慢しろというのは、実は合理的な考え方じゃない。

抑圧された側も抵抗を試みるんだ。それは歴史が証明してる。

そしてミチホだって海外に出て家族の目の届かないところでフードファイターの道を目指すことにした。

彼女の家族にとってそれは好ましい選択じゃないかもしれないけど、抑圧されたことが彼女の選択を促したという面もあると思うんだ。

世の中にはフードファイターという仕事を快く思わない人が少なくないというのも現実だと思う。確かに見た目には『食べ方が汚い』とか『食べ物を粗末にしてる』という印象もあるかもしれない。

でも、ミチホの場合は、元々、人並み外れた食欲という事情もあるみたいだし、それを逆手にとって活かそうというのはむしろいいことだと僕は思うよ。

だいたい、吸血鬼という特異な資質を持った僕が彼女の姿勢に対してあれこれ口出しできるはずもないし」

父親のその言葉に子供達も、

「そうだね」

「私達はそれこそ自分の特性や資質みたいなものと向き合わなきゃ人間の世界ではやってけないし」

と応えてくれた。

子供達のそんな様子に、しっかりと人間の世界と折り合いをつけて生きようとしてくれているのが実感できて、ミハエル自身、胸があたたかくなる。

何しろ、吸血鬼やダンピールは、数こそ少数派ではあるものの圧倒的な強者でもある。『少数派だから』という理由で蔑ろにすれば痛い目を見るのは多数であるはずの人間の方だ。

相手を少数だと侮って力尽くで抑え付けようとした結果が、テロリズムの蔓延をもたらしたのではないだろうか。

ミハエルは決してテロを容認はしない。けれど、冷静に客観的に、それこそ傍観者の視点から見ればそういう事実が見えてきてしまう。

だからこそ、自身が強者の立場だからといって人間を侮ることもしない。虐げられた者が何をするのかを見てきたから。

自分のその姿勢が子供達にも受け継がれているのが嬉しい。

『本当にいい子に育ってくれてるな……』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ひきこもり瑞祥妃は黒龍帝の寵愛を受ける

緋村燐
キャラ文芸
天に御座す黄龍帝が創りし中つ国には、白、黒、赤、青の四龍が治める国がある。 中でも特に広く豊かな大地を持つ龍湖国は、白黒対の龍が治める国だ。 龍帝と婚姻し地上に恵みをもたらす瑞祥の娘として生まれた李紅玉は、その力を抑えるためまじないを掛けた状態で入宮する。 だが事情を知らぬ白龍帝は呪われていると言い紅玉を下級妃とした。 それから二年が経ちまじないが消えたが、すっかり白龍帝の皇后になる気を無くしてしまった紅玉は他の方法で使命を果たそうと行動を起こす。 そう、この国には白龍帝の対となる黒龍帝もいるのだ。 黒龍帝の皇后となるため、位を上げるよう奮闘する中で紅玉は自身にまじないを掛けた道士の名を聞く。 道士と龍帝、瑞祥の娘の因果が絡み合う!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...