ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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人間にもいろいろいる

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「ホント、人間にもいろいろいるんだね」

美千穂をアパートメントまで送り届けた後、自分達もホテルに帰る途中、悠里ユーリがそう口にした。

それに対して安和アンナも、

「ホントだよね。びっくりする」

と相槌を打った。

するとミハエルが、

「確かに。だから画一的な対処法では上手くいかないことが多いんだ。僕達吸血鬼やダンピールでもそう。事例ごとに何が適切かを考えなきゃいけない。

ミチホの場合も家族が画一的な対処法に拘ったから、それに合わない彼女は辛い想いをすることになった。

だけど、彼女は幸運にもいい友達に恵まれてここまでこれた。

例外的で少数派だから多数に合わせてただ我慢しろというのは、実は合理的な考え方じゃない。

抑圧された側も抵抗を試みるんだ。それは歴史が証明してる。

そしてミチホだって海外に出て家族の目の届かないところでフードファイターの道を目指すことにした。

彼女の家族にとってそれは好ましい選択じゃないかもしれないけど、抑圧されたことが彼女の選択を促したという面もあると思うんだ。

世の中にはフードファイターという仕事を快く思わない人が少なくないというのも現実だと思う。確かに見た目には『食べ方が汚い』とか『食べ物を粗末にしてる』という印象もあるかもしれない。

でも、ミチホの場合は、元々、人並み外れた食欲という事情もあるみたいだし、それを逆手にとって活かそうというのはむしろいいことだと僕は思うよ。

だいたい、吸血鬼という特異な資質を持った僕が彼女の姿勢に対してあれこれ口出しできるはずもないし」

父親のその言葉に子供達も、

「そうだね」

「私達はそれこそ自分の特性や資質みたいなものと向き合わなきゃ人間の世界ではやってけないし」

と応えてくれた。

子供達のそんな様子に、しっかりと人間の世界と折り合いをつけて生きようとしてくれているのが実感できて、ミハエル自身、胸があたたかくなる。

何しろ、吸血鬼やダンピールは、数こそ少数派ではあるものの圧倒的な強者でもある。『少数派だから』という理由で蔑ろにすれば痛い目を見るのは多数であるはずの人間の方だ。

相手を少数だと侮って力尽くで抑え付けようとした結果が、テロリズムの蔓延をもたらしたのではないだろうか。

ミハエルは決してテロを容認はしない。けれど、冷静に客観的に、それこそ傍観者の視点から見ればそういう事実が見えてきてしまう。

だからこそ、自身が強者の立場だからといって人間を侮ることもしない。虐げられた者が何をするのかを見てきたから。

自分のその姿勢が子供達にも受け継がれているのが嬉しい。

『本当にいい子に育ってくれてるな……』

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