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負の感情をぶつけられると

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アオは思う。

『人間は、負の感情をぶつけられると、つい自分も負の感情を返してしまう傾向がある。

怒りをぶつけられると怒りを、

憎しみをぶつけられると憎しみを、

って感じで。

あと、悲しみを前にすると、同じく悲しんでしまうこともあるのもそうだけど、それとは別に『ウザい』とか、さらに『ザマあw』みたいに嘲笑う人もいる。

つまり、負の感情を他人に向けるとだいたいロクなことにならないということか……

<憐憫の情>も、たぶん、自分を上に見て相手を下に見る、負の感情の一種だから、反感を買ったりもするんだろうな。

負の感情を向けられても優しくできるのは、それができる理由を持ってる人だけ……

これは、吸血鬼やダンピールも大きくは違わない。

そして、虐げられてきたエンディミオンには、当然、そんな理由がない。だから憎しみや怒りや恐怖を向けられると負の感情を返さずにいられない。

一方、あたたかい家庭に育ち、その上で辛い経験もし、しかもそれを乗り越えてきたさくらは、エンディミオンに対して強い負の感情を向けることがなかった。恐怖は感じてても、それだけに支配されていなかった。

だからエンディミオンの方も、強い攻撃心を向ける理由を保てなかった……?

これは、ミハエルに対しても同じ。

ミハエルも私も、彼に対しては強い負の感情を向けなかった。

でも、そうすると逆に分からないこともある。

今の吸血鬼達の多くも、ダンピールに対する憎しみは抑えられてるはず……

それなのにどうして……?

考えられる理由としては、彼に狩られた吸血鬼達は、彼に対して<憐憫の情>を向けてしまった可能性…だろうか。

自分達は高みにあり、ダンピールという卑しい生まれの彼を、憐れんでしまったのかもしれない。それが、彼の加虐性に火をつけてしまった…感じなのかな……

難しい…ホントに難しい……<心>って難しいよ……

吸血鬼達が彼を憐れんでしまったとしても、それは決して悪気があったわけじゃないと思う。

もっとも、悪気がないから余計に厄介なのかもしれないけどさ。

さくらは、彼を憐れんではいなかったと思う。彼の境遇に胸を痛めてても、それを憐れんではいなかったんだろうな。

なにしろさくら自身、今も多くの人間から見れば、むしろ憐れみを受ける側だから。

弟くんを事故で喪い、その所為で母親は心が壊れ、今もなお自分の世界に閉じこもり、先が見えないっていう状況にもあるんだ。

だけどさくらはそれを憐れんでほしいとは思ってない。

だからこそ、エンディミオンのことも憐れんだりはしなかったんだろうな……』

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