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エンディミオン
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月城さくらの夫で、恵莉花と秋生の父であるダンピール、<エンディミオン>。
しかも、悠里や安和とは違い、<呪われた存在>として蔑まれ虐げられてきたことで、人間を憎み、それ以上に吸血鬼を魂の奥底から憎悪し続けてきた者。
吸血鬼であるミハエルを執拗に狙い、そのためにさくらを利用していた闇よりの狩人。
セルゲイが生物学者を目指したのは、彼のような境遇に陥る者を一人でも減らしたいという想いからだった。エンディミオンの境遇はそれほどまでに過酷なものであったと言える。
けれどそんな彼も今では、妻であるさくらを愛し、子供達を大切にする、良き夫であり子煩悩な父親だった。
とは言え、彼と初めてあった者は一様にその冷淡で刺すような視線に怯まされるのだけれど。
見た目はミハエルと同じ、十歳から十一歳くらいの美麗な少年ではある。
その彼がどうやって忌まわしい過去を乗り越えたのか。
いや、実際には今なお乗り越えたわけではないと言える。他でもない彼自身が、吸血鬼に対する憎しみを捨てたわけじゃないから。
ただ単に、吸血鬼への憎しみよりも優先したいものができただけと言った方がいいのかもしれない。
それこそが、妻であるさくらであり、さくらが養子とした洸であり、さくらとの実子である恵莉花と秋生だった。
彼が自身の憎しみと折り合いをつけるにはそれだけのものが必要だったということか。
加えて彼は、植物、特に花が好きだった。と言うか、さくらと関わり始めてから自分がそうだったと気付かされた感じだろう。
そんな彼は、今では<主夫>として家を守りつつ花を育て、それを販売し、家計を支えるまでになっていた。
ただし、ダンピールである彼は表には出ず、高校に通う娘の恵莉花が育てたものとして、
<フラワーショップ・エリカ>
名義で販売している。
実際、恵莉花自身も花が好きで、父親のエンディミオンに引けを取らない知識と技術を有している状態だ。
なお、父親のエンディミオンはダンピールながら、恵莉花も秋生も<普通の人間>として生を受けた。そのおかげもあって、蒼井家のような形で<工夫>する必要もなく、ただエンディミオン一人が気配を消して人前に姿を現さないようにするだけで済んでいた。
しかもそんな暮らしも、家族に恵まれ花に触れていることで気にならないという。
おそらく、普通に<幸せ>と言って差し障りのない暮らしをしていると言えるに違いない。人前に姿を現さないことも、人間に対しても少なからず憎しみが残っている彼にとってはむしろその方が気楽なのだった。
しかも、悠里や安和とは違い、<呪われた存在>として蔑まれ虐げられてきたことで、人間を憎み、それ以上に吸血鬼を魂の奥底から憎悪し続けてきた者。
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セルゲイが生物学者を目指したのは、彼のような境遇に陥る者を一人でも減らしたいという想いからだった。エンディミオンの境遇はそれほどまでに過酷なものであったと言える。
けれどそんな彼も今では、妻であるさくらを愛し、子供達を大切にする、良き夫であり子煩悩な父親だった。
とは言え、彼と初めてあった者は一様にその冷淡で刺すような視線に怯まされるのだけれど。
見た目はミハエルと同じ、十歳から十一歳くらいの美麗な少年ではある。
その彼がどうやって忌まわしい過去を乗り越えたのか。
いや、実際には今なお乗り越えたわけではないと言える。他でもない彼自身が、吸血鬼に対する憎しみを捨てたわけじゃないから。
ただ単に、吸血鬼への憎しみよりも優先したいものができただけと言った方がいいのかもしれない。
それこそが、妻であるさくらであり、さくらが養子とした洸であり、さくらとの実子である恵莉花と秋生だった。
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そんな彼は、今では<主夫>として家を守りつつ花を育て、それを販売し、家計を支えるまでになっていた。
ただし、ダンピールである彼は表には出ず、高校に通う娘の恵莉花が育てたものとして、
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しかもそんな暮らしも、家族に恵まれ花に触れていることで気にならないという。
おそらく、普通に<幸せ>と言って差し障りのない暮らしをしていると言えるに違いない。人前に姿を現さないことも、人間に対しても少なからず憎しみが残っている彼にとってはむしろその方が気楽なのだった。
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