ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
78 / 697

これ以上ない<実例>

しおりを挟む
一連の家族のやり取りを、ミハエルは目を細めて見守っていた。

このあたたかい家族の姿に、ミハエル自身が癒されていた。

彼はもはや三桁にも届こうかという年齢ではあったものの、たくさんの人生経験を積み、その辺りの人間の<大人>など鼻で笑ってしまえるほどの厚みをもった人格者であるものの、それでも吸血鬼としてはまだまだ<子供>と言える年齢で、未熟なところもあると言えた。

だからこうやってあたたかな家族の団欒の中で精神的に満たされる必要がある。

そうして満たされていないと、やはり吸血鬼としての<闇>は、上手く制御できなくなる危険性もあるものだった。

悠里ユーリに対して説いていたことは、ミハエル自身に対して言い聞かせているものでもある。いくつになってもそうして言い聞かせ続けないといけない。でないとついついそれを忘れて、思い上がってしまう。

吸血鬼は実際に人間より遥かに強靭で高い能力を持った生命体であり、その気になりさえすれば人間をたやすく滅ぼすこともできてしまうが故に。

言い伝えとして残っている<吸血鬼の弱点>は、ほとんどが眉唾物でしかない。

あれこれ試して何とか倒せた時にしたことの一つでしかないのが事実だった。なので、実際には複合的な要因で倒せたにも拘らず、それぞれが一人歩きしているだけである。

『心臓に杭を打つ』

というのもそれだった。

確かに吸血鬼と言えど心臓を破壊されればダメージは大きい。しかしそれだけではいずれ回復されてしまう。諸々やったことで弱ったところにとどめとしてそうしたから倒せただけに過ぎなかった。

『十字架に弱い』

というのも、十字架そのものに弱いわけではなく、狂信的な人間の行動には辟易していて、十字架はその象徴なのでいい気はしないという程度のものでしかない。

かつては、狂信が行き過ぎてほぼほぼ人間をやめてしまっている者さえいたが、実はそれも、<ダンピール>がその事実を隠して吸血鬼退治をしていたのが真実だったりする。

今現在は、それらのこともかなり改善されてきている。

<ダンピール問題>はいまだ完全な解決に至っていないものの、悠里と安和アンナというこれ以上ない<実例>がある以上、それを認めないのは人間の狂信と同じと言えるかもしれない。

また、悠里と安和のように生まれた時から幸せに暮らせていることでダンピールとしての攻撃性を抑えることに成功しているのとは別に、

<ダンピールらしい、吸血鬼に対する激しい憎悪>

を滾らせた幼少期を送ってきたものの、現在ではその制御に成功している事例もある。

それについては今後機会があれば改めて触れることになるだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...