ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
75 / 697

他人を攻撃する人に

しおりを挟む
で、調子が出てきたのかアオはさらに続けた。

「読者や視聴者はとにかく自分の好みばかりを押し付けてくる。でも、実は大多数の読者や視聴者は<サイレントマジョリティ>なんだ。やたら声が大きいのはほとんどが<ノイジーマイノリティ>なんだよ。特に攻撃的なのはそれ。

本人らは<読者や視聴者の代表>みたいに思ってるのかもだけど、実はそうじゃないことの方が圧倒的に多いんだ。

その中でも『自分達の意見が作品の質を良くする』とか思ってるタイプが厄介なんだよね。自分はいいことをしてるつもりだから、実際には創作の足を引っ張っててもそれに気付かない。

私と同時期にデビューした作家さん達の中にも、自分の作品が叩かれたことで心が挫けて筆を折った人は何人もいる。

叩いてる方は、

『その程度で折れるとかwwwww』

とか嗤うが、これは本当は大きな損失だぞ?

私は割とそういう部分では打たれ強いが、そんな私はいまだに『知る人ぞ知る』どまりの、メガヒットのない、大多数の読者にウケる作品を作れない、でもそこそこの数は見込めるというだけの作家だ。

私みたいなのだけが残って、それで全体のレベルが上がると思うのか?

もちろん、中には面白いものが作れてその上で打たれ強いという人もいるだろう。しかしそんな人は一部の例外に過ぎない。『面白いものを作れる可能性は秘めてるけど打たれ弱い』人は、『自分達の意見が作品の質を良くする』と信じて疑わない連中の無思慮な攻撃に心を折られて筆も折るんだ。

そんなことをしてたら損失だとは思わんか?

『面白いものを作れる創作者はメンタルも鋼』

だなどと、どこの主人公キャラだ? そんなチート主人公がポンポン誕生するとでも思っているのか? 

現実を見ろ。何百万部、何千万部も売り上げてる創作者でさえ、アンチと呼ばれる人間はつく。神様と称された創作者の作品でさえ『つまらない』と評されることもある。

すべての人間が『面白い』と言う、誰一人『つまらない』と評する者がいない作品など、一つとしてない。

そういうものだ。

そして人間なんてのは弱い生き物だ。『面白いものは書けても本人のメンタルは豆腐』なんていう創作者だっている。それが現実だ。

余計なことを言わなくても売れない創作者は消え行くのみだ。商売はそんなに甘くない。

自分の好みじゃないからと叩くのは、創作そのものを萎縮させるだけの行為なんだよ」

などと、<仕事の時に出る作家先生モード>全開で熱く語る母親を、悠里ユーリは苦笑いを浮かべながらも受け止めていた。

彼女がそれを語るのは、悠里自身に、『自分が気に入らないから』という理由で他人を攻撃する人になってほしくないからだというのを、彼は知っているのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...