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他人を攻撃する人に
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で、調子が出てきたのかアオはさらに続けた。
「読者や視聴者はとにかく自分の好みばかりを押し付けてくる。でも、実は大多数の読者や視聴者は<サイレントマジョリティ>なんだ。やたら声が大きいのはほとんどが<ノイジーマイノリティ>なんだよ。特に攻撃的なのはそれ。
本人らは<読者や視聴者の代表>みたいに思ってるのかもだけど、実はそうじゃないことの方が圧倒的に多いんだ。
その中でも『自分達の意見が作品の質を良くする』とか思ってるタイプが厄介なんだよね。自分はいいことをしてるつもりだから、実際には創作の足を引っ張っててもそれに気付かない。
私と同時期にデビューした作家さん達の中にも、自分の作品が叩かれたことで心が挫けて筆を折った人は何人もいる。
叩いてる方は、
『その程度で折れるとかwwwww』
とか嗤うが、これは本当は大きな損失だぞ?
私は割とそういう部分では打たれ強いが、そんな私はいまだに『知る人ぞ知る』どまりの、メガヒットのない、大多数の読者にウケる作品を作れない、でもそこそこの数は見込めるというだけの作家だ。
私みたいなのだけが残って、それで全体のレベルが上がると思うのか?
もちろん、中には面白いものが作れてその上で打たれ強いという人もいるだろう。しかしそんな人は一部の例外に過ぎない。『面白いものを作れる可能性は秘めてるけど打たれ弱い』人は、『自分達の意見が作品の質を良くする』と信じて疑わない連中の無思慮な攻撃に心を折られて筆も折るんだ。
そんなことをしてたら損失だとは思わんか?
『面白いものを作れる創作者はメンタルも鋼』
だなどと、どこの主人公キャラだ? そんなチート主人公がポンポン誕生するとでも思っているのか?
現実を見ろ。何百万部、何千万部も売り上げてる創作者でさえ、アンチと呼ばれる人間はつく。神様と称された創作者の作品でさえ『つまらない』と評されることもある。
すべての人間が『面白い』と言う、誰一人『つまらない』と評する者がいない作品など、一つとしてない。
そういうものだ。
そして人間なんてのは弱い生き物だ。『面白いものは書けても本人のメンタルは豆腐』なんていう創作者だっている。それが現実だ。
余計なことを言わなくても売れない創作者は消え行くのみだ。商売はそんなに甘くない。
自分の好みじゃないからと叩くのは、創作そのものを萎縮させるだけの行為なんだよ」
などと、<仕事の時に出る作家先生モード>全開で熱く語る母親を、悠里は苦笑いを浮かべながらも受け止めていた。
彼女がそれを語るのは、悠里自身に、『自分が気に入らないから』という理由で他人を攻撃する人になってほしくないからだというのを、彼は知っているのだから。
「読者や視聴者はとにかく自分の好みばかりを押し付けてくる。でも、実は大多数の読者や視聴者は<サイレントマジョリティ>なんだ。やたら声が大きいのはほとんどが<ノイジーマイノリティ>なんだよ。特に攻撃的なのはそれ。
本人らは<読者や視聴者の代表>みたいに思ってるのかもだけど、実はそうじゃないことの方が圧倒的に多いんだ。
その中でも『自分達の意見が作品の質を良くする』とか思ってるタイプが厄介なんだよね。自分はいいことをしてるつもりだから、実際には創作の足を引っ張っててもそれに気付かない。
私と同時期にデビューした作家さん達の中にも、自分の作品が叩かれたことで心が挫けて筆を折った人は何人もいる。
叩いてる方は、
『その程度で折れるとかwwwww』
とか嗤うが、これは本当は大きな損失だぞ?
私は割とそういう部分では打たれ強いが、そんな私はいまだに『知る人ぞ知る』どまりの、メガヒットのない、大多数の読者にウケる作品を作れない、でもそこそこの数は見込めるというだけの作家だ。
私みたいなのだけが残って、それで全体のレベルが上がると思うのか?
もちろん、中には面白いものが作れてその上で打たれ強いという人もいるだろう。しかしそんな人は一部の例外に過ぎない。『面白いものを作れる可能性は秘めてるけど打たれ弱い』人は、『自分達の意見が作品の質を良くする』と信じて疑わない連中の無思慮な攻撃に心を折られて筆も折るんだ。
そんなことをしてたら損失だとは思わんか?
『面白いものを作れる創作者はメンタルも鋼』
だなどと、どこの主人公キャラだ? そんなチート主人公がポンポン誕生するとでも思っているのか?
現実を見ろ。何百万部、何千万部も売り上げてる創作者でさえ、アンチと呼ばれる人間はつく。神様と称された創作者の作品でさえ『つまらない』と評されることもある。
すべての人間が『面白い』と言う、誰一人『つまらない』と評する者がいない作品など、一つとしてない。
そういうものだ。
そして人間なんてのは弱い生き物だ。『面白いものは書けても本人のメンタルは豆腐』なんていう創作者だっている。それが現実だ。
余計なことを言わなくても売れない創作者は消え行くのみだ。商売はそんなに甘くない。
自分の好みじゃないからと叩くのは、創作そのものを萎縮させるだけの行為なんだよ」
などと、<仕事の時に出る作家先生モード>全開で熱く語る母親を、悠里は苦笑いを浮かべながらも受け止めていた。
彼女がそれを語るのは、悠里自身に、『自分が気に入らないから』という理由で他人を攻撃する人になってほしくないからだというのを、彼は知っているのだから。
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