ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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ネットワーク

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今回、セルゲイは利用しなかったけれど、日本にも少なくない吸血鬼がいて、ネットワークが形成されている。

アオが悠里ユーリ安和アンナを産む時にミハエルが利用した『互助会的な』それだ。

実は、ミハエルが日本に来るまでは意外なほど日本には吸血鬼が少なかった。やはり文化の違い、感性の違いが大きくて、何気にハードルが高かったらしい。

しかも、日本に元々住んでいた吸血鬼もいたものの、こちらもまたメンタルがいかにも日本人らしく余計なことに関わってトラブルが起こるのは好まないという面があり、吸血鬼同士あまり関わり合いになろうとしないところもあったのである。

セルゲイも日本には生物学者として研究のために何度か訪れてはいたものの、あまり関わって欲しくないという、日本生まれの吸血鬼達の意図を汲んで、関わるのを避けてきたのもあった。

けれど、ミハエルが日本に来てアオと事実上の結婚をして幸せに暮らしているという話が広がると、日本に興味を抱く外国在住の吸血鬼が増えてきたのだ。

実は吸血鬼は、長命で環境の変化にも強い反面、一度気に入った暮らしができると、それをなるべく続けよう、変えるにしてもなるべく似たような環境をという傾向がある。

なので日本に生まれついた吸血鬼は日本から出たがらないし、日本以外に生まれた吸血鬼は、世界でもいろいろな意味で特異な部類に入る日本に対しては、興味は持ちつつも実際に住むとなると尻込みするという一面もあったようだ。

日本以外の国に住む吸血鬼の目には、日本は、

<謎に満ちた異世界>

にも見えるのかもしれない。

そんな日本にミハエルがやってきたのは、彼的には実は結構な冒険だったりもする。

しかしそのおかげでアオに出逢えたので、彼としてはまさに大成功だった。

そしてミハエルが人間の女性と結ばれてダンピールが生まれ、なのにそのダンピールはまったく吸血鬼を憎んでいないという事実は衝撃をもって受け止められた。

ここまでくると、元々興味は持っていたこともあり、比較的フットワークの軽いタイプの吸血鬼から日本に移り住む者が出始めたのだという。

しかも、一度動き始めれば果断なく事を進めるのも吸血鬼の特性なので、ミハエルがアオと事実上の結婚をしてから僅か数年で、<互助会的なネットワーク>が日本にも設立されることとなった。

なお、ミハエル以前にも同様の事例がなかったのか? と言われれば、ないこともなかったものの、当時は今ほどのネットワーク環境が整っていなかったことも影響してるようだ。

人間側の技術の進歩が、吸血鬼の在り方にも影響を与えた事例だとも言えるだろう。

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