ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

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人間を上回る知能を持ったライオン

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そうしてミハエルと悠里ユーリがビデオ通話で椿つばき達と話をしている頃、セルゲイと安和アンナはホテルのレストランで特大パフェを堪能していた。

と言うか、本当に大きい。向かい合って座った安和の体が隠れてしまうくらいに。

「食べ切れますか? 姫」

ふわりと微笑みながらセルゲイが尋ねると、

「もちろん! よゆーよゆー♡」

安和は自分の胸をドンと叩いた。そしてスプーンを手にして、もりもりと食べ始める。

その姿がまた可愛くて、セルゲイは笑顔になる。

そうして微笑みながらも、セルゲイは考えていた。

『本当にいい子に育ってくれた……よかった』

と。

『ダンピールは吸血鬼に憎しみを抱いて生まれてくる』

そんな<迷信>を覆すためとはいえ、それを覆せる根拠はそれなりにあったとはいえ、いわば、

<人間を上回る知能を持ったライオン>

が生まれてくるようなものだ。少なからずリスクがあったのも事実。

けれど、ミハエルとアオは、それを見事、制御してくれた。二人に対しては感謝しかない。

そして、当の悠里や安和に対しても。

『この子達は僕の研究を立証してくれた。その恩を返したい』

セルゲイがミハエル達を<自分の子供>として対外的には振舞うのは、そういう理由もあった。悠里ユーリ安和アンナが生まれた時には、

『自分の説が立証できるに違いない』

正直、そういう下心があったことも否めない。

けれど、今ではもう、そういうことは抜きにして、ただ、ミハエルの子供達と一緒にいることが楽しかった。子供達との時間が癒しだった。

もりもりと超特大パフェを胃に収めていく安和を見守りながら、セルゲイは思う。

『<常識>というのは時に恐ろしいものだ……実際には正しくなくても誰もが『そういうもの』と思い込み、結果としてその常識に当てはまるように振舞ってしまう……

過去の我々吸血鬼やダンピールによってもたらされた悲劇は、その常識に囚われ物事を客観視しようとしなかったことによって生じたものだ。

我々吸血鬼は人間を襲いその血を糧として喰らい、あるいは眷属として従えるもの、という常識を盲信していたことによって引き起こされてきた……

でも、生物学的に見れば、直接人間から吸血するのは必須ではなかったし、吸血することで人間が眷属になってしまうというのも必ず引き起こされることではなかった。

いずれも、現実から目を背けていたがゆえにもたらされた悲劇だった。

僕達はその事実を突き止めてしまった以上、『昔はそれが常識だったから』と甘えることは許されない。我々吸血鬼は、理性を持たない怪物ではない。それはダンピールも同じ。

知的生命体は、<事実>に向き合う勇気を持たなければならない。

確かに、自分達が<常識>として信じてきたことを疑うのは恐ろしいかもしれない。

けれど、事実と向き合うことをせず妄執に囚われた知的生命体は、この世界にとって危険な存在でもある。

人間も、自らを<霊長類>と称し特別な存在と長らく信じてきたけれど、それが思い上がりに過ぎないと気付きつつある。

僕達吸血鬼が、人間を、自分達よりも劣っている、<非力で下等で愚かな家畜>のように見下してきたことを過ちだったと気付いたように……」

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