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奇異にも見える
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洸にデレデレの椿はそれでいいとして、
「恵莉花と秋生も、学校はどう? 楽しい?」
日本にいた時にも頻繁に顔を合わせていたので特に訊く必要もなかったものの、ミハエルは二人にも尋ねた。
すると恵莉花がぐいっと身を乗り出して、
「うん、楽しいよ!」
笑顔で応えた。その名の通り花のような笑顔だった。
対して秋生は、
「まあまあかな……」
少し遠慮がちに応える。恵莉花と秋生は双子だけれども、顔は結構似ているけれども、性別も性格も違ってた。性別については二卵性双生児なので違っていても不思議ではないにしても、性格が正反対なのは面白い。
けれど、どちらも心根が優しいという点では共通してるので、特に心配はしていない。また二人は、椿と同じく<普通の人間>だった。そういう意味でも心配はない。
『まあまあかな』と秋生が応えたのも、あくまで彼なりの表現であって、実際には『大丈夫』と同じ意味だった。
そういう点についてもミハエルはよく承知している。彼にとっても我が子同然の存在だったから。
それもあって、恵莉花との話も弾んだ。彼女は学校であったことを、まるで自分の父親に報告するようにミハエルに話す。
「それでさ、チカってばレイジとケンカになっちゃって、今、絶交中なんだ。今期六回目の絶交。よくやるよね~」
友達のカップルが恒例のケンカをしていると、呆れたように話す恵莉花に、ミハエルは微笑みながら耳を傾けていた。自分に興味のない話だからといって疎かにしない。
ミハエルは、自分の家族と、家族同然のさくら達の話にはしっかりと耳を傾けてくれる。だから皆、ミハエルのことを信頼していた。
一方、ミハエルと一緒にパソコンの前に座っていた悠里は、
「僕にはそういうのよく分からないなあ。ケンカするくらいなら別れた方がいいんじゃないの?」
と、恵莉花の友達のカップルについて正直な感想を述べる。
けれど恵莉花は平然と、
「そう思うのは悠里がまだ恋をしたことがないからだよ」
返す。すると悠里も、
「恋ねえ、まあ、父さんと母さんみたいな激甘ラブラブカップルだったら本人達も楽しそうだから分かるけどさ。でも、『ケンカするほど仲がいい』っていうのは僕には理解できないよ」
応じる。
「そりゃミハエルとアオママを基準にしたらほとんどのカップルがアウトだよ。そっちが例外だって」
「だけど、仲がいいのに越したことはないだろ?」
「それはそうだけどさ。でも、うちのお父さんだってあんなだけど、ホントはお母さんにぞっこんなんだよ? ああうのもいるし」
「でもなあ……」
見た目にもいかにも高校生といった恵莉花と見た目には三歳くらいの悠里のそのやり取りは、知らない人間が見たら奇異にも見えるだろうけれど、それがこの<家族>には普通なのだった。
「恵莉花と秋生も、学校はどう? 楽しい?」
日本にいた時にも頻繁に顔を合わせていたので特に訊く必要もなかったものの、ミハエルは二人にも尋ねた。
すると恵莉花がぐいっと身を乗り出して、
「うん、楽しいよ!」
笑顔で応えた。その名の通り花のような笑顔だった。
対して秋生は、
「まあまあかな……」
少し遠慮がちに応える。恵莉花と秋生は双子だけれども、顔は結構似ているけれども、性別も性格も違ってた。性別については二卵性双生児なので違っていても不思議ではないにしても、性格が正反対なのは面白い。
けれど、どちらも心根が優しいという点では共通してるので、特に心配はしていない。また二人は、椿と同じく<普通の人間>だった。そういう意味でも心配はない。
『まあまあかな』と秋生が応えたのも、あくまで彼なりの表現であって、実際には『大丈夫』と同じ意味だった。
そういう点についてもミハエルはよく承知している。彼にとっても我が子同然の存在だったから。
それもあって、恵莉花との話も弾んだ。彼女は学校であったことを、まるで自分の父親に報告するようにミハエルに話す。
「それでさ、チカってばレイジとケンカになっちゃって、今、絶交中なんだ。今期六回目の絶交。よくやるよね~」
友達のカップルが恒例のケンカをしていると、呆れたように話す恵莉花に、ミハエルは微笑みながら耳を傾けていた。自分に興味のない話だからといって疎かにしない。
ミハエルは、自分の家族と、家族同然のさくら達の話にはしっかりと耳を傾けてくれる。だから皆、ミハエルのことを信頼していた。
一方、ミハエルと一緒にパソコンの前に座っていた悠里は、
「僕にはそういうのよく分からないなあ。ケンカするくらいなら別れた方がいいんじゃないの?」
と、恵莉花の友達のカップルについて正直な感想を述べる。
けれど恵莉花は平然と、
「そう思うのは悠里がまだ恋をしたことがないからだよ」
返す。すると悠里も、
「恋ねえ、まあ、父さんと母さんみたいな激甘ラブラブカップルだったら本人達も楽しそうだから分かるけどさ。でも、『ケンカするほど仲がいい』っていうのは僕には理解できないよ」
応じる。
「そりゃミハエルとアオママを基準にしたらほとんどのカップルがアウトだよ。そっちが例外だって」
「だけど、仲がいいのに越したことはないだろ?」
「それはそうだけどさ。でも、うちのお父さんだってあんなだけど、ホントはお母さんにぞっこんなんだよ? ああうのもいるし」
「でもなあ……」
見た目にもいかにも高校生といった恵莉花と見た目には三歳くらいの悠里のそのやり取りは、知らない人間が見たら奇異にも見えるだろうけれど、それがこの<家族>には普通なのだった。
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