ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
42 / 697

昆虫の生態の調査だよ

しおりを挟む
「今回はジャカルタの近郊で昆虫の生態の調査だよ」

飛行機に乗り込み席に着くと、セルゲイがにこやかに告げた。すると、

「え~…?」

安和アンナが露骨に嫌そうな顔をする。彼女は虫があまり好きではなかったのだ。

一方、悠里ユーリは、

「分かった!」

と嬉しそうだ。彼は逆に昆虫などが好きだったから。

「じゃあ、安和は僕と一緒にショッピングだね」

ミハエルが言う。

「む~っ!」

なのに安和は不満顔だ。セルゲイと一緒じゃないのが納得いかないらしい。そんな彼女に、セルゲイが、

「せっかくの可愛さが台無しだよ♡」

ふわりとそよ風のような笑顔で言った。途端に安和は、

「は~い♡」

蕩けるような笑顔になった。本当にセルゲイのことが好きなのが分かる。

ちなみにセルゲイの年齢はすでに二百歳を超えている。年齢差二百歳の恋ということか。まあ、セルゲイとミハエルは、人間で言うところの従兄弟の間柄なので、血縁上は特に問題ないと思われる。

けれど四人の姿は、知らない者が見ればそれこそただ微笑ましい家族のそれにしか見えないだろう。やかましく騒ぐでもなくひたすら仲がいい。近くに座っていた老夫婦も、相貌を崩していた。

そして特に何事もなくジャカルタへと到着した。

熱帯気候のはずなのに、なぜか日本ほどは暑く感じないのが不思議だ。やはり日本はヒートアイランド現象が厳しいということだろうか。

まあそれはさておき、昼間はさすがに日差しが強いので、入国手続きを済ませ空港を出る時には、日差しを防ぐ上着を揃って着てフードを目深にかぶり、さすがにその恰好では目立つので気配を消して移動した。

夜までは空港近くのホテルで休み、日が暮れてからが本番だ。

「セルゲイ、セルゲイ、セルゲイ…!」

ホテルにチェックインして部屋に入ると、すぐさま安和がセルゲイに抱きついて駄々をこね始めた。

「虫なんかほっといてショッピングいこ~よ~!」

そんな安和にもセルゲイはとても優しい。決して怒らず、彼女の背中を軽くとんとんと叩きつつ、抱き締める。

「ありがとう、アンナ。デートのお誘いはとっても魅力的だ。心が揺らぐよ。だけどごめんね。僕も仕事をしなきゃいけない。でないとこうしてアンナと一緒に過ごす時間を作れなくなるんだ。

でも、仕事に行くまでの間は、一緒にいよう♡」

これもいつものことだった。セルゲイはアンナの気持ちを無下にはせず、ちゃんとこうして向き合ってくれる。だから彼女も、なんだかんだ言っても理解はしてくれるのだ。

「日暮れまではまだ間があるし、スイーツはいかがですか? 姫?」

「いくいく~♡」

そんな二人に、

「いってらっしゃい」

「僕達は部屋でゆっくりしてるよ」

ミハエルと悠里は手を振ったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...