上 下
28 / 697

君は本当に素晴らしい!!

しおりを挟む
第一子と第二子が年子で生まれて、正直、決して楽ではなかった。

もっとも、<年子>とは言ってもダンピールである悠里ユーリの知能及び精神の成長は早く、見た目は赤ん坊同然でもその振る舞いはみるみる洗練されていく。

二歳になる頃には、外見は二歳のままでももう小学生低学年くらいの様子にはなっていた。

加えて、安和アンナもダンピールだったため、同様に知能と精神の成長が早い。

「はい! ママ!」

食事の時には、一足先に手伝いを始めていた悠里の真似をして、食器を運ぶのを手伝ってくれたりもする。

「ありがと~♡」

そんな息子と娘の姿にアオはメロメロだ。

そして二人が寝ると、その寝顔を見ながら、

「正直、自分がこんなに子供を可愛いと思える人間だったことに驚いてる…

本音では心のどこかで不安だったんだ……私の両親と同じことをしちゃうんじゃないかって……

だけど、ミハエルのおかげでそうじゃなかった。

ミハエルがいてくれたから、私は両親と同じことをせずに済んだんだ……

ありがとう…ミハエル。本当にありがとう……」

目を潤ませつつ、囁くように言った。吸血鬼であるミハエルにはそれで十分に聞こえていた。

すると彼は、微笑みながら首を振って、

「ううん。それはアオ自身の頑張りがあればこそだよ。僕はほんの少し、その手伝いをしただけだ……

それに僕がアオの力になれるのは、アオが僕を受け止めてくれてるからだし……

僕の方こそありがとう……悠里と安和に逢わせてくれて……」

と応えた。

それから、お互いに見詰め合って、顔を寄せて、唇を触れ合せる。

こうして……



「わはは! またできたぞ!!」

右手に妊娠検査薬、左手は腰にやって、大きく胸を張りながら、アオが笑う。

半ばヤケクソ気味に。

さすがに今回は年子ではなかったものの、安和が生まれて一年ちょっと。二歳しか違わないことになる。

その知らせを受けて、セルゲイも三度掛けてけてくれた。

「素晴らしいよ! アオ! 君は本当に素晴らしい!!」

安和の時よりさらにテンション高くセルゲイが称賛した。

第一子に続いて第二子もダンピールであったにも拘わらずすぐにまた第三子。

『こんな素晴らしいことがあっていいのか!』

とセルゲイさえ思った。

とは言え、今度は、

「人間だね。普通の」

三度目の出生前診断の結果を受け取ったミハエルが言った。

それに対してアオは、

「そうか!」

笑顔で応えた。

人間だったから安心したというのとは違う。正直、もうどっちでも良かった。自分達のところに来てくれたのがただただ嬉しかった。

「今度はどっちかな。男の子かな、女の子かな」

出産は大変かもしれないけど、安和の時が結構楽だったので、もう怖くはなかった。

とにかくその時が待ち遠しいだけなのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後宮見習いパン職人は、新風を起こす〜九十九(つくも)たちと作る未来のパンを〜

櫛田こころ
キャラ文芸
人間であれば、誰もが憑く『九十九(つくも)』が存在していない街の少女・黄恋花(こう れんか)。いつも哀れな扱いをされている彼女は、九十九がいない代わりに『先読み』という特殊な能力を持っていた。夢を通じて、先の未来の……何故か饅頭に似た『麺麭(パン)』を作っている光景を見る。そして起きたら、見様見真似で作れる特技もあった。 両親を病などで失い、同じように九十九のいない祖母と仲良く麺麭を食べる日々が続いてきたが。隻眼の武官が来訪してきたことで、祖母が人間ではないことを見抜かれた。 『お前は恋花の九十九ではないか?』 見抜かれた九十九が本性を現し、恋花に真実を告げたことで……恋花の生活ががらりと変わることとなった。

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
キャラ文芸
【第8回キャラ文芸大賞にエントリー中、次回更新は2025年1月1日前後】 自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

じゃくまる
キャラ文芸
ボクの名前は夕霧暮葉。個人Vtuberの真白狐白をやってます。 普段は人とそんなに絡んだりしない人見知りな性格だけど、配信の時はビビりながらも色んなことに挑戦していくよ! そんなボクは少しだけ人と違うところがあるんだ。 どんなところかというと、オタクなことと人見知りなこと、そして種族が狐の妖種である妖狐だということくらいかな。 うんそう。ボクはみんなが噂に聞くことがある妖種なんだよ。 これはそんなボクの日常と配信を描いた物語。 のんびりしたりドタバタしたり、少しドキドキしたり時々異世界に行ってみたり。 みんなが楽しめるかわからないけど、ボクなりにみんなに見せていっちゃうからよろしくね!

荊軻断章

古崎慧
歴史・時代
戦国時代末期中国。燕国の楽士高漸離は、謎の旅人荊軻と出会う。音楽を介して深く結びつく二人だが、刺客として秦王(後の始皇帝)暗殺を強要された荊軻は一人旅立つ。 その後、荊軻の死を知った高漸離も秦へ向かい、そこで荊軻が再会を望みつつも果たせなかった彼の友人と出会う。 史記列伝荊軻の章で語られつつも正体が不明な、「荊軻の待ち人」について考えました。

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

【完結】ご懐妊から始まる溺愛〜お相手は宇宙人

七夜かなた
キャラ文芸
城咲和音は、23歳のフリーター 体調不良で受診すると、診断は「妊娠」だった。 でも妊娠するようなことをした覚えはまったくない。 驚いていると、突然黒尽くめの人たちに守られて現れたファンタジー世界のエルフのような美男子が、お腹の子の父親宣言をしてきた。 え、あなたとは初対面ですけど。 彼の名は「燕」 しかも彼は、地球外知的生命体、つまり宇宙人だった。 突然の妊娠からまさかの宇宙人との同居が始まった。

処理中です...