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パートナーとして子を持つ決断
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『たとえどんな状態にあっても人間は、品行方正、清廉潔白、理路整然を貫けて当然』
世の中にはそんなことを考えている者が多いようだが、それで他人を罵ったりしてる当人が、『品行方正、清廉潔白、理路整然を貫けて』ないではないか。
しかも、
『叩かれる原因を作った奴が悪い』
とか言って<他人の所為>にまでして。
けれど、ミハエルはそのおかしさを知っているから、この時のアオの態度についても、
『一時的なことだからね』
と気にしなかった。
そもそも、自分がアオを妊娠させたのが原因なのだから、それでアオを責めるのはおかしいし。
こうしてミハエルが<普通じゃない状態>のアオを受け止めてくれたおかげで、
「ごめん……ホントどうかしてた……」
アオも素直に謝ることができた。と言うか、そこで冷静になれば謝れるような彼女だったからミハエルに選ばれた面もあるのも事実。冷静になってもなおミハエルの所為にして、
『私は悪くない』
と言い張るような人物であればアオはパートナーに選ばれていない。
なにしろ、
『吸血鬼であるミハエルを受け入れて彼の子を宿す決断をした』
のは他ならぬアオなのだから。
双方共に自分で選択してパートナーとして子を持つ決断をしたのだ。
『どちらに責任がある』
のかではなくて、
『どちらにも相応の責任がある』
のが事実である。一時正気を失ってつい八つ当たりしてしまう程度なら止むを得ない一面もあるものの、正気を取り戻してなお自分の責任を認めない相手とは長く一緒にいるのは難しいかもしれない。
こうして、悪阻が収まった時点で一旦は平穏な状態に戻ったものの、今度はお腹が大きくなってきてそれがまたアオの負担となった。
そうなるとまた、精神的に不安定にもなってくる。
「う~……うあ~……重い…しんどい……寝られない……」
ソファーに座ると逆に息苦しくなる気がして座ってられないので、床にマットを敷いてそこに横になったまま、アオは呻き声を上げていた。
これもまた妊娠につきものの事態。
だからやっぱりミハエルはそんなアオをただ労わった。
が、自分と違って平然としているミハエルを見てると、
「なんで女ばっかりこんな思いしなきゃいけないの? 男も妊娠したらいいのに…! てか、どっちが妊娠するか運で決まればいいのに……!」
とも口走ってしまった。
「ははは、そうだね」
アオの無茶苦茶な妄言にもミハエルは動じない。なにしろ当のミハエル自身が、
『代われるものなら代わってあげたい』
と思っていたのだから。
けれど、どんなに願っても代われないのは現実。ならば、彼女の八つ当たりを受け止める程度のことはしたかった。
「ありがとう…アオ。愛してる……」
彼女の体をそっと撫でながら、ミハエルはアオを労わったのだった。
世の中にはそんなことを考えている者が多いようだが、それで他人を罵ったりしてる当人が、『品行方正、清廉潔白、理路整然を貫けて』ないではないか。
しかも、
『叩かれる原因を作った奴が悪い』
とか言って<他人の所為>にまでして。
けれど、ミハエルはそのおかしさを知っているから、この時のアオの態度についても、
『一時的なことだからね』
と気にしなかった。
そもそも、自分がアオを妊娠させたのが原因なのだから、それでアオを責めるのはおかしいし。
こうしてミハエルが<普通じゃない状態>のアオを受け止めてくれたおかげで、
「ごめん……ホントどうかしてた……」
アオも素直に謝ることができた。と言うか、そこで冷静になれば謝れるような彼女だったからミハエルに選ばれた面もあるのも事実。冷静になってもなおミハエルの所為にして、
『私は悪くない』
と言い張るような人物であればアオはパートナーに選ばれていない。
なにしろ、
『吸血鬼であるミハエルを受け入れて彼の子を宿す決断をした』
のは他ならぬアオなのだから。
双方共に自分で選択してパートナーとして子を持つ決断をしたのだ。
『どちらに責任がある』
のかではなくて、
『どちらにも相応の責任がある』
のが事実である。一時正気を失ってつい八つ当たりしてしまう程度なら止むを得ない一面もあるものの、正気を取り戻してなお自分の責任を認めない相手とは長く一緒にいるのは難しいかもしれない。
こうして、悪阻が収まった時点で一旦は平穏な状態に戻ったものの、今度はお腹が大きくなってきてそれがまたアオの負担となった。
そうなるとまた、精神的に不安定にもなってくる。
「う~……うあ~……重い…しんどい……寝られない……」
ソファーに座ると逆に息苦しくなる気がして座ってられないので、床にマットを敷いてそこに横になったまま、アオは呻き声を上げていた。
これもまた妊娠につきものの事態。
だからやっぱりミハエルはそんなアオをただ労わった。
が、自分と違って平然としているミハエルを見てると、
「なんで女ばっかりこんな思いしなきゃいけないの? 男も妊娠したらいいのに…! てか、どっちが妊娠するか運で決まればいいのに……!」
とも口走ってしまった。
「ははは、そうだね」
アオの無茶苦茶な妄言にもミハエルは動じない。なにしろ当のミハエル自身が、
『代われるものなら代わってあげたい』
と思っていたのだから。
けれど、どんなに願っても代われないのは現実。ならば、彼女の八つ当たりを受け止める程度のことはしたかった。
「ありがとう…アオ。愛してる……」
彼女の体をそっと撫でながら、ミハエルはアオを労わったのだった。
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