この世界のアラクネは密林の覇者。ロボを従え覇道を生きる

京衛武百十

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食欲と殺戮衝動

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こうして三機のドーベルマンMPMを破壊したヒト蛇ラミアは、密林の奥へと一気に侵入した。目に付いた動物達を次々と殺し、食らいながら。そうやって常に食らい続けることで膨大なエネルギーを賄っているのかもしれない。

しかしその食欲と殺戮衝動は、完全に生物のそれを逸脱していただろう。生物学的に見れば有り得ない生態だと思われる。まるで、有機生命体の構造を持っているだけの<ロボット>のようだとさえ言えるだろうか。

進路上にあるあらゆる動物達を蹂躙しつつ、ヒト蛇ラミアはさらに進んだ。するとその先に立ちはだかる巨大な影。

ヒト蜘蛛アラクネだった。ばんではないが、ばんに勝るとも劣らぬ雰囲気を持ったヒト蜘蛛アラクネだ。

<人間のようにも見える部分>は男性のそれだったものの、本体尾部の形状を見る限り雌のようだった。だが、<人間のようにも見える部分>には無数の傷。手(触角)の指は何本も欠損し、苛烈な戦いを生き延びてきたことが窺える。

その<歴戦のヒト蜘蛛アラクネ>は、明らかに臨戦態勢だった。得体の知れない激しい攻撃衝動を隠そうともしない巨大な何かが迫ってきているのだから、当然だと思われる。

そしてヒト蜘蛛アラクネは、歯を剥き出して恐ろしい形相で、ヒト蛇ラミアを迎え撃った。互いに手を合わせるが、<力比べ>はしない。ヒト蛇ラミアはそのままぐわっと口を開けてヒト蜘蛛アラクネの肩口に食らいつこうとした。

だが、ヒト蜘蛛アラクネの方も心得たもので、自身の手(触角)で押し返し体を逸らし、ヒト蛇ラミアの牙を躱しつつ本体を回転させて、本体側の脚でラミアの胴に容赦のない蹴りを食らわせた。

「ゴアッッ!!」

この一撃にはヒト蛇ラミアも思わず声を上げた。タングステン並みの強度を持つ鱗に覆われているとはいえ、さすがにこの叩き付ける攻撃の衝撃そのものを完全には緩和できないようだ。

食ったものの一部が逆流し、口から溢れ出す。

それでもヒト蛇ラミアの戦意は少しも衰えない。怯まない。そのまま自身の長い胴を巻き付けようとする。が、これも、ヒト蜘蛛アラクネがすさまじい蹴りを連続で繰り出し、巻き付かせない。本能的に取りつかれるとマズいと判断したのかもしれない。

力もそうだが、戦い方が巧みだった。さすがにここまで生き延びてきただけのことはあるのだろう。

さらに激しく体を回転させて、ヒト蛇ラミアを周囲の木々に叩き付けてみせた。

「グハッッ!!」

もしかするとここまで全力で動き続けたことで、ヒト蛇ラミアとしてもさすがに疲れが出てきているのかもしれない。しれないが、

「ガアアッッ!!」

激しい戦意そのものはまったく衰えを見せることはなかったのだった。

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