78 / 97
食欲と殺戮衝動
しおりを挟む
こうして三機のドーベルマンMPMを破壊したヒト蛇は、密林の奥へと一気に侵入した。目に付いた動物達を次々と殺し、食らいながら。そうやって常に食らい続けることで膨大なエネルギーを賄っているのかもしれない。
しかしその食欲と殺戮衝動は、完全に生物のそれを逸脱していただろう。生物学的に見れば有り得ない生態だと思われる。まるで、有機生命体の構造を持っているだけの<ロボット>のようだとさえ言えるだろうか。
進路上にあるあらゆる動物達を蹂躙しつつ、ヒト蛇はさらに進んだ。するとその先に立ちはだかる巨大な影。
ヒト蜘蛛だった。蛮ではないが、蛮に勝るとも劣らぬ雰囲気を持ったヒト蜘蛛だ。
<人間のようにも見える部分>は男性のそれだったものの、本体尾部の形状を見る限り雌のようだった。だが、<人間のようにも見える部分>には無数の傷。手(触角)の指は何本も欠損し、苛烈な戦いを生き延びてきたことが窺える。
その<歴戦のヒト蜘蛛>は、明らかに臨戦態勢だった。得体の知れない激しい攻撃衝動を隠そうともしない巨大な何かが迫ってきているのだから、当然だと思われる。
そしてヒト蜘蛛は、歯を剥き出して恐ろしい形相で、ヒト蛇を迎え撃った。互いに手を合わせるが、<力比べ>はしない。ヒト蛇はそのままぐわっと口を開けてヒト蜘蛛の肩口に食らいつこうとした。
だが、ヒト蜘蛛の方も心得たもので、自身の手(触角)で押し返し体を逸らし、ヒト蛇の牙を躱しつつ本体を回転させて、本体側の脚でラミアの胴に容赦のない蹴りを食らわせた。
「ゴアッッ!!」
この一撃にはヒト蛇も思わず声を上げた。タングステン並みの強度を持つ鱗に覆われているとはいえ、さすがにこの叩き付ける攻撃の衝撃そのものを完全には緩和できないようだ。
食ったものの一部が逆流し、口から溢れ出す。
それでもヒト蛇の戦意は少しも衰えない。怯まない。そのまま自身の長い胴を巻き付けようとする。が、これも、ヒト蜘蛛がすさまじい蹴りを連続で繰り出し、巻き付かせない。本能的に取りつかれるとマズいと判断したのかもしれない。
力もそうだが、戦い方が巧みだった。さすがにここまで生き延びてきただけのことはあるのだろう。
さらに激しく体を回転させて、ヒト蛇を周囲の木々に叩き付けてみせた。
「グハッッ!!」
もしかするとここまで全力で動き続けたことで、ヒト蛇としてもさすがに疲れが出てきているのかもしれない。しれないが、
「ガアアッッ!!」
激しい戦意そのものはまったく衰えを見せることはなかったのだった。
しかしその食欲と殺戮衝動は、完全に生物のそれを逸脱していただろう。生物学的に見れば有り得ない生態だと思われる。まるで、有機生命体の構造を持っているだけの<ロボット>のようだとさえ言えるだろうか。
進路上にあるあらゆる動物達を蹂躙しつつ、ヒト蛇はさらに進んだ。するとその先に立ちはだかる巨大な影。
ヒト蜘蛛だった。蛮ではないが、蛮に勝るとも劣らぬ雰囲気を持ったヒト蜘蛛だ。
<人間のようにも見える部分>は男性のそれだったものの、本体尾部の形状を見る限り雌のようだった。だが、<人間のようにも見える部分>には無数の傷。手(触角)の指は何本も欠損し、苛烈な戦いを生き延びてきたことが窺える。
その<歴戦のヒト蜘蛛>は、明らかに臨戦態勢だった。得体の知れない激しい攻撃衝動を隠そうともしない巨大な何かが迫ってきているのだから、当然だと思われる。
そしてヒト蜘蛛は、歯を剥き出して恐ろしい形相で、ヒト蛇を迎え撃った。互いに手を合わせるが、<力比べ>はしない。ヒト蛇はそのままぐわっと口を開けてヒト蜘蛛の肩口に食らいつこうとした。
だが、ヒト蜘蛛の方も心得たもので、自身の手(触角)で押し返し体を逸らし、ヒト蛇の牙を躱しつつ本体を回転させて、本体側の脚でラミアの胴に容赦のない蹴りを食らわせた。
「ゴアッッ!!」
この一撃にはヒト蛇も思わず声を上げた。タングステン並みの強度を持つ鱗に覆われているとはいえ、さすがにこの叩き付ける攻撃の衝撃そのものを完全には緩和できないようだ。
食ったものの一部が逆流し、口から溢れ出す。
それでもヒト蛇の戦意は少しも衰えない。怯まない。そのまま自身の長い胴を巻き付けようとする。が、これも、ヒト蜘蛛がすさまじい蹴りを連続で繰り出し、巻き付かせない。本能的に取りつかれるとマズいと判断したのかもしれない。
力もそうだが、戦い方が巧みだった。さすがにここまで生き延びてきただけのことはあるのだろう。
さらに激しく体を回転させて、ヒト蛇を周囲の木々に叩き付けてみせた。
「グハッッ!!」
もしかするとここまで全力で動き続けたことで、ヒト蛇としてもさすがに疲れが出てきているのかもしれない。しれないが、
「ガアアッッ!!」
激しい戦意そのものはまったく衰えを見せることはなかったのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


凶竜の姫様
京衛武百十
SF
ここは、惑星<朋群(ほうむ)>。多数のロボットに支えられ、様々な特色を持った人間達が暮らす惑星。そこで鵺竜(こうりゅう)と呼ばれる巨大な<竜>について研究する青年、<錬義(れんぎ)>は、それまで誰も辿り着いたことのない地に至り、そこで一人の少女と出逢う。少女の名前は<斬竜(キル)>。かつて人間を激しく憎み戦ったという<竜女帝>の娘にして鵺竜の力を受け継ぐ<凶竜の姫>であった。
こうして出逢った斬竜に錬義は戸惑いながらも、彼女を見守ることにしたのだった。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
わたしの船 ~魔術整備師シルフィの往く航路(みち)~
みすたぁ・ゆー
ファンタジー
【メカ好きボーイッシュ少女の渡し船。あなたの心へ向けて出航します!】
17歳の少女・シルフィは魔術整備師および操舵手として、渡し船を運航するソレイユ水運に勤務している。
船の動力は魔鉱石から抽出した魔法力をエネルギー源とする魔導エンジン。その力でスクリューを動かし、推進力へと変換しているのだ。
だが、それは魔法力がない者でも容易に扱える反面、『とある欠点』も抱えている。魔術整備師は整備魔法を使用した『魔術整備』を駆使し、そうした機械を整備する役割を担っている。
ただし、シルフィに関しては魔術整備だけに留まらない。物理的にパーツを分解して整備する前時代的な『工学整備』の重要性も認識しており、それゆえに個人の趣味として機械と戯れる日々を送っている。
なお、彼女が暮らしているのはレイナ川の中流域にあるリバーポリス市。隣国との国境が近い防衛の要衝であり、それゆえに川への架橋は認められていない。右岸と左岸を結ぶのは渡し船だけとなっている。
ある日、その町に貴族の血筋だという12歳の少年・ディックが引っ越してくる。シルフィはソレイユ水運のイケメン若社長・フォレスとともに彼の昼食に同席することになり、それをきっかけに交流が始まる。
そして彼女は満月の夜、大きな事件の渦中に巻き込まれていくこととなる――
※タイトルの『わたしの船』は『渡しの船』と『私の船』のダブル・ミーニングです。
【第1航路(全19話)/完結】
【第2航路(全39話)/完結】
第3航路以降は未制作のため、一旦はここで『完結』の扱いとさせていただきます。投稿再開の際に執筆状態を『連載中』へ戻しますので、ご承知おきください。
――なお、皆様からの応援や反応が多ければ投稿時期が早まるかも!?
3024年宇宙のスズキ
神谷モロ
SF
俺の名はイチロー・スズキ。
もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。
21世紀に生きていた普通の日本人。
ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。
今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる