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怪物

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その日も、また、大変なスコールだった。雷も激しく、何度も落雷があった。

「……」

ばんも、さすがにおとなしく雨宿りしている。他の動物達もだ。そんな中で、河にも落雷があった。それは、前回、落雷があった河とは別の、流れ的には支流に当たる少し小さい河だった。方向としても、逆になる。

再びアーマードピラルクなどに被害があり、河を流されていくのが見えた。そしてその中で、またもあの<不可解な河面のうねり>が。しかも今度は、陸に打ち上げられることなく、流されながら河の中でうねうねと蠢いている。

そしてしばらくして、落雷の影響で流されていた体長三メートルはあるアーマードピラルクが突然、水中に引きずり込まれた。と同時に水面が真っ赤に染まっていく。

かと思うと、次の瞬間、ザーンッ!!と水飛沫を上げながら何かが水中から屹立した。それはまるで木のようであった。周囲約一メートル。高さ約三メートル。頂上付近は、歪な形で三つに分かれていた。横方向には枝のようなものが二本伸び、片方の枝?にはアーマードピラルクが引っかかっていて、真ん中は短く丸い。

まるで、片手にアーマードピラルクを掴んだ人間の上半身のような……

いや、<人間>だ。木のように長く伸びたものの上に、人間の上半身が乗ったシルエットをしていた。しかも、胸が膨らんでいて、女性のようにも見える。

透明だが。

そう。それは以前にも現れた<透明なマンティアン>を連想させる姿をしていたのだ。

しかもそいつは、体長三メートルはあるアーマードピラルクを片手で軽々と掴んで持ち上げ、ぞぶりと胴に食らいついた。板皮類と呼ばれる装甲のような表皮を持つ古代魚に似たアーマードピラルクの表皮を引きはがし中の肉を露出させて、そこに食らいついていたのである。

もうその姿だけでも普通でないことは分かる。

加えて人間の女性のようにも見える体の腰から下は、やはり透明だが表面の様子から鱗のようなもので覆われているのも分かる。その腰から下の部分が、波打つように蠢き、河を進み始めた。それはまさしく<ヘビ>が泳いでいる姿そのものだった。

地球の伝説には、<ラミア>と呼ばれる、人間の上半身とヘビの下半身を持つ怪物の存在が描かれているそうだが、こいつはまさに伝説の怪物そのものの姿をしていた。

ヒト蛇ラミア

ここ惑星朋群ほうむでもそう呼ばれる<怪物>である。

あの<透明な何か>が、今度はヒト蛇ラミアに変化したということだ。

そして<透明なヒト蛇ラミア>は、アーマードピラルクを貪りながら河を泳ぎ、上陸を果たした。

ばんがいる密林がある地へと。

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