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憤怒の形相
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その、<蛇のような細長い体をしたもの>は透明な何かに包まれていた。だから<蛇のような細長い体をしたもの>は、<透明な何か>の一部分であるはずなのだ。本来は。
しかし、蛮にはそれが理解できなくて混乱する。するが、少なくともそいつは自分にとっては<敵>であることも悟った。敵であるなら、容赦はしない。意味が分からなかろうが訳が分からなかろうが、とにかくぶちのめす。
それだけだ。
幸い、蛮にとっては目に見えているものしか認識できないわけじゃない。<透明な何か>が一瞬で移動して、彼の死角にあたるであろう位置から襲い掛かってきても、<流体センサー>が確実にそれを捉え、対処する。
「!?」
見えているはずのない位置からの攻撃にも完全に反応され、丸太のような脚が正確に自分目掛けて繰り出されたことに、<透明な何か>=インヴィも驚愕していた。
かろうじてその攻撃を躱し、距離を取る。
とは言え、
『決して勝てない相手ではない』
と、彼女は感じていたようだ。あの丸太のような脚の蹴りの威力は途轍もないが、速度自体は自分の方が圧倒的に上だったからだろう。ゆえに、相手の強さを知るためにも、インヴィは再び攻撃を仕掛ける。
「ギッ!」
小さく声を上げながら、彼女は改めて死角から攻撃を仕掛ける。
「ガッ!」
蛮も、歯を剥き出しながらそちら目掛けて蹴りを繰り出す。
が、インヴィはその蹴りを紙一重で躱して蛮の本体側に鎌を突き立てようとした。なのに、届かない。蛮が迫るインヴィと同じ方向に体を動かしたからだ。彼女の動きは確かに早いが、彼はそれを捉えることができている。
速度では負けていても、攻撃の<手数>なら負けない。体を移動させつつ、さらに蹴りを繰り出したのだ。六本もの脚があるからこその攻撃だった。
改めてカウンターの形で蹴りを繰り出され、躱しきれないと悟った彼女は体をひねることでその威力を受け流そうとした。
受け流そうとしたのだが、受け流しきれずにまるで独楽のように体が回転しつつ弾き飛ばされてしまう。
「ギギッ!?」
弾き飛ばされながらも空中で態勢を整え手足を広げて回転を緩和し、木の幹に<着地>した。
するとその彼女の眼前に、すさまじい憤怒の形相の蛮の顔が。蛮もこの巨体ではありつつ、決して鈍重なわけではない。吹っ飛んだ彼女目掛けて奔ったのだ。と同時に、インヴィの頭が横に弾ける。蛮の手(触角)による打撃だった。ちょうど、ボクシングのフック系のパンチに近いそれだ。
人間ならこの一撃で昏倒してもおかしくない、タイミングも角度も申し分ない完璧な一発であった。
しかし、蛮にはそれが理解できなくて混乱する。するが、少なくともそいつは自分にとっては<敵>であることも悟った。敵であるなら、容赦はしない。意味が分からなかろうが訳が分からなかろうが、とにかくぶちのめす。
それだけだ。
幸い、蛮にとっては目に見えているものしか認識できないわけじゃない。<透明な何か>が一瞬で移動して、彼の死角にあたるであろう位置から襲い掛かってきても、<流体センサー>が確実にそれを捉え、対処する。
「!?」
見えているはずのない位置からの攻撃にも完全に反応され、丸太のような脚が正確に自分目掛けて繰り出されたことに、<透明な何か>=インヴィも驚愕していた。
かろうじてその攻撃を躱し、距離を取る。
とは言え、
『決して勝てない相手ではない』
と、彼女は感じていたようだ。あの丸太のような脚の蹴りの威力は途轍もないが、速度自体は自分の方が圧倒的に上だったからだろう。ゆえに、相手の強さを知るためにも、インヴィは再び攻撃を仕掛ける。
「ギッ!」
小さく声を上げながら、彼女は改めて死角から攻撃を仕掛ける。
「ガッ!」
蛮も、歯を剥き出しながらそちら目掛けて蹴りを繰り出す。
が、インヴィはその蹴りを紙一重で躱して蛮の本体側に鎌を突き立てようとした。なのに、届かない。蛮が迫るインヴィと同じ方向に体を動かしたからだ。彼女の動きは確かに早いが、彼はそれを捉えることができている。
速度では負けていても、攻撃の<手数>なら負けない。体を移動させつつ、さらに蹴りを繰り出したのだ。六本もの脚があるからこその攻撃だった。
改めてカウンターの形で蹴りを繰り出され、躱しきれないと悟った彼女は体をひねることでその威力を受け流そうとした。
受け流そうとしたのだが、受け流しきれずにまるで独楽のように体が回転しつつ弾き飛ばされてしまう。
「ギギッ!?」
弾き飛ばされながらも空中で態勢を整え手足を広げて回転を緩和し、木の幹に<着地>した。
するとその彼女の眼前に、すさまじい憤怒の形相の蛮の顔が。蛮もこの巨体ではありつつ、決して鈍重なわけではない。吹っ飛んだ彼女目掛けて奔ったのだ。と同時に、インヴィの頭が横に弾ける。蛮の手(触角)による打撃だった。ちょうど、ボクシングのフック系のパンチに近いそれだ。
人間ならこの一撃で昏倒してもおかしくない、タイミングも角度も申し分ない完璧な一発であった。
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