55 / 97
憤怒の形相
しおりを挟む
その、<蛇のような細長い体をしたもの>は透明な何かに包まれていた。だから<蛇のような細長い体をしたもの>は、<透明な何か>の一部分であるはずなのだ。本来は。
しかし、蛮にはそれが理解できなくて混乱する。するが、少なくともそいつは自分にとっては<敵>であることも悟った。敵であるなら、容赦はしない。意味が分からなかろうが訳が分からなかろうが、とにかくぶちのめす。
それだけだ。
幸い、蛮にとっては目に見えているものしか認識できないわけじゃない。<透明な何か>が一瞬で移動して、彼の死角にあたるであろう位置から襲い掛かってきても、<流体センサー>が確実にそれを捉え、対処する。
「!?」
見えているはずのない位置からの攻撃にも完全に反応され、丸太のような脚が正確に自分目掛けて繰り出されたことに、<透明な何か>=インヴィも驚愕していた。
かろうじてその攻撃を躱し、距離を取る。
とは言え、
『決して勝てない相手ではない』
と、彼女は感じていたようだ。あの丸太のような脚の蹴りの威力は途轍もないが、速度自体は自分の方が圧倒的に上だったからだろう。ゆえに、相手の強さを知るためにも、インヴィは再び攻撃を仕掛ける。
「ギッ!」
小さく声を上げながら、彼女は改めて死角から攻撃を仕掛ける。
「ガッ!」
蛮も、歯を剥き出しながらそちら目掛けて蹴りを繰り出す。
が、インヴィはその蹴りを紙一重で躱して蛮の本体側に鎌を突き立てようとした。なのに、届かない。蛮が迫るインヴィと同じ方向に体を動かしたからだ。彼女の動きは確かに早いが、彼はそれを捉えることができている。
速度では負けていても、攻撃の<手数>なら負けない。体を移動させつつ、さらに蹴りを繰り出したのだ。六本もの脚があるからこその攻撃だった。
改めてカウンターの形で蹴りを繰り出され、躱しきれないと悟った彼女は体をひねることでその威力を受け流そうとした。
受け流そうとしたのだが、受け流しきれずにまるで独楽のように体が回転しつつ弾き飛ばされてしまう。
「ギギッ!?」
弾き飛ばされながらも空中で態勢を整え手足を広げて回転を緩和し、木の幹に<着地>した。
するとその彼女の眼前に、すさまじい憤怒の形相の蛮の顔が。蛮もこの巨体ではありつつ、決して鈍重なわけではない。吹っ飛んだ彼女目掛けて奔ったのだ。と同時に、インヴィの頭が横に弾ける。蛮の手(触角)による打撃だった。ちょうど、ボクシングのフック系のパンチに近いそれだ。
人間ならこの一撃で昏倒してもおかしくない、タイミングも角度も申し分ない完璧な一発であった。
しかし、蛮にはそれが理解できなくて混乱する。するが、少なくともそいつは自分にとっては<敵>であることも悟った。敵であるなら、容赦はしない。意味が分からなかろうが訳が分からなかろうが、とにかくぶちのめす。
それだけだ。
幸い、蛮にとっては目に見えているものしか認識できないわけじゃない。<透明な何か>が一瞬で移動して、彼の死角にあたるであろう位置から襲い掛かってきても、<流体センサー>が確実にそれを捉え、対処する。
「!?」
見えているはずのない位置からの攻撃にも完全に反応され、丸太のような脚が正確に自分目掛けて繰り出されたことに、<透明な何か>=インヴィも驚愕していた。
かろうじてその攻撃を躱し、距離を取る。
とは言え、
『決して勝てない相手ではない』
と、彼女は感じていたようだ。あの丸太のような脚の蹴りの威力は途轍もないが、速度自体は自分の方が圧倒的に上だったからだろう。ゆえに、相手の強さを知るためにも、インヴィは再び攻撃を仕掛ける。
「ギッ!」
小さく声を上げながら、彼女は改めて死角から攻撃を仕掛ける。
「ガッ!」
蛮も、歯を剥き出しながらそちら目掛けて蹴りを繰り出す。
が、インヴィはその蹴りを紙一重で躱して蛮の本体側に鎌を突き立てようとした。なのに、届かない。蛮が迫るインヴィと同じ方向に体を動かしたからだ。彼女の動きは確かに早いが、彼はそれを捉えることができている。
速度では負けていても、攻撃の<手数>なら負けない。体を移動させつつ、さらに蹴りを繰り出したのだ。六本もの脚があるからこその攻撃だった。
改めてカウンターの形で蹴りを繰り出され、躱しきれないと悟った彼女は体をひねることでその威力を受け流そうとした。
受け流そうとしたのだが、受け流しきれずにまるで独楽のように体が回転しつつ弾き飛ばされてしまう。
「ギギッ!?」
弾き飛ばされながらも空中で態勢を整え手足を広げて回転を緩和し、木の幹に<着地>した。
するとその彼女の眼前に、すさまじい憤怒の形相の蛮の顔が。蛮もこの巨体ではありつつ、決して鈍重なわけではない。吹っ飛んだ彼女目掛けて奔ったのだ。と同時に、インヴィの頭が横に弾ける。蛮の手(触角)による打撃だった。ちょうど、ボクシングのフック系のパンチに近いそれだ。
人間ならこの一撃で昏倒してもおかしくない、タイミングも角度も申し分ない完璧な一発であった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~
MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。
戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
************************************************
小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。
きのせ
SF
通学の途中で、空から落ちて来た美少女。彼女は、宇宙人に作られたアンドロイドだった。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らすことになったから、さあ大変。様々な事件に巻き込まれていく事に。最悪のアンドロイド・バトルが開幕する
トライアルズアンドエラーズ
中谷干
SF
「シンギュラリティ」という言葉が陳腐になるほどにはAIが進化した、遠からぬ未来。
特別な頭脳を持つ少女ナオは、アンドロイド破壊事件の調査をきっかけに、様々な人の願いや試行に巻き込まれていく。
未来社会で起こる多様な事件に、彼女はどう対峙し、何に挑み、どこへ向かうのか――
※少々残酷なシーンがありますので苦手な方はご注意ください。
※この小説は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、エブリスタ、novelup、novel days、nola novelで同時公開されています。
決戦の夜が明ける ~第3堡塁の側壁~
独立国家の作り方
SF
ドグミス国連軍陣地に立て籠もり、全滅の危機にある島民と共に戦おうと、再上陸を果たした陸上自衛隊警備中隊は、条約軍との激戦を戦い抜き、遂には玉砕してしまいます。
今より少し先の未来、第3次世界大戦が終戦しても、世界は統一政府を樹立出来ていません。
南太平洋の小国をめぐり、新世界秩序は、新国連軍とS条約同盟軍との拮抗状態により、4度目の世界大戦を待逃れています。
そんな最中、ドグミス島で警備中隊を率いて戦った、旧陸上自衛隊1等陸尉 三枝啓一の弟、三枝龍二は、兄の志を継ぐべく「国防大学校」と名称が変更されたばかりの旧防衛大学校へと進みます。
しかし、その弟で三枝家三男、陸軍工科学校1学年の三枝昭三は、駆け落ち騒動の中で、共に協力してくれた同期生たちと、駐屯地の一部を占拠し、反乱を起こして徹底抗戦を宣言してしまいます。
龍二達防大学生たちは、そんな状況を打破すべく、駆け落ちの相手の父親、東京第1師団長 上条中将との交渉に挑みますが、関係者全員の軍籍剥奪を賭けた、訓練による決戦を申し出られるのです。
力を持たない学生や生徒達が、大人に対し、一歩に引くことなく戦いを挑んで行きますが、彼らの選択は、正しかったと世論が認めるでしょうか?
是非、ご一読ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる