51 / 97
透明なマンティアン
しおりを挟む
<透明なクロコディア>が去り、<透明なマンティアン>が去り、あれほど激しかった雷雨も去って残った<透明なアサシン竜>だったが、残念ながら動き出すことはなかった。鼓動も刻まれず呼吸もせず、ただの<透明な死体>であった。
すると、河から上がってくる者の姿が。クロコディアだった。先ほど河に入っていった<透明なクロコディア>とは違う、普通のクロコディアだ。それらは、河岸に倒れている<透明なアサシン竜>に気付くと、我先にと飛びかかった。透明ではあるものの、明らかに肉の匂いがするものが転がっているのだから、これを見逃す手もない。
クロコディアらは透明なアサシン竜の体を掴み渾身の力を込めて奪い合い、引きちぎり、貪った。それが透明であることなど、彼らには何の関係もなかったようだ。
そうしてわずか数分で、透明なアサシン竜はこの世から完全に姿を消したのである。
数人のクロコディアの小腹を満たして。
<透明なクロコディア>については、その後、消息は知れなくなった。死んだのか、それとも他の場所へと移動したのか、それも分からない。だが、そんなことを気にする者は、ここにはいない。
一方、<透明なマンティアン>の方は、森に潜んでいた。
マンティアンは、元々、アサシン竜に近い生態を持つ生き物だった。気配を消して森に潜み、気付かず近付いてきたものを捕えて食う。そういう生態である。
しかも、アサシン竜と同じく極めて高い隠密性を有していた。優れた個体であれば、姿が見えていても気付かれることがないほどなのだ。そう、視界には捉えているのに、認識できないのである。
そもそもそれほどの能力を持つのに加え、<透明なマンティアン>は、その体が透明であるがゆえに、一般的なマンティアンとは一線を画す存在となった。
元々高い隠密性が、さらに次元の違うものへと至っているのだ。
小鳥も、チップ竜も、容易く捕らえられ、透明なマンティアンに貪られた。
この透明なマンティアンについては、<インヴィ>と称することにしよう。
インヴィにとって密林は、それこそ<楽園>だったかもしれない。何しろ、ただ普通に潜んでいるだけで次々と獲物が手に入るのだ。
それは、こちら側の密林に住む生き物が、マンティアンという存在を知らなかったからだろう。マンティアンをよく知る生き物達は、その気配も知っている。匂いも知っている。だから警戒もする。しかし、本来ならマンティアンが存在しないはずのこちら側の生き物達には、その認識がないのである。
すると、河から上がってくる者の姿が。クロコディアだった。先ほど河に入っていった<透明なクロコディア>とは違う、普通のクロコディアだ。それらは、河岸に倒れている<透明なアサシン竜>に気付くと、我先にと飛びかかった。透明ではあるものの、明らかに肉の匂いがするものが転がっているのだから、これを見逃す手もない。
クロコディアらは透明なアサシン竜の体を掴み渾身の力を込めて奪い合い、引きちぎり、貪った。それが透明であることなど、彼らには何の関係もなかったようだ。
そうしてわずか数分で、透明なアサシン竜はこの世から完全に姿を消したのである。
数人のクロコディアの小腹を満たして。
<透明なクロコディア>については、その後、消息は知れなくなった。死んだのか、それとも他の場所へと移動したのか、それも分からない。だが、そんなことを気にする者は、ここにはいない。
一方、<透明なマンティアン>の方は、森に潜んでいた。
マンティアンは、元々、アサシン竜に近い生態を持つ生き物だった。気配を消して森に潜み、気付かず近付いてきたものを捕えて食う。そういう生態である。
しかも、アサシン竜と同じく極めて高い隠密性を有していた。優れた個体であれば、姿が見えていても気付かれることがないほどなのだ。そう、視界には捉えているのに、認識できないのである。
そもそもそれほどの能力を持つのに加え、<透明なマンティアン>は、その体が透明であるがゆえに、一般的なマンティアンとは一線を画す存在となった。
元々高い隠密性が、さらに次元の違うものへと至っているのだ。
小鳥も、チップ竜も、容易く捕らえられ、透明なマンティアンに貪られた。
この透明なマンティアンについては、<インヴィ>と称することにしよう。
インヴィにとって密林は、それこそ<楽園>だったかもしれない。何しろ、ただ普通に潜んでいるだけで次々と獲物が手に入るのだ。
それは、こちら側の密林に住む生き物が、マンティアンという存在を知らなかったからだろう。マンティアンをよく知る生き物達は、その気配も知っている。匂いも知っている。だから警戒もする。しかし、本来ならマンティアンが存在しないはずのこちら側の生き物達には、その認識がないのである。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【短編】交差するXと処刑するYの傾き
常に移動する点P
SF
時間法が制定され、過去への旅行が可能になった時代。
過去への干渉はご法度とされ、ただちに処刑される。
処刑を執行するのが、執行官。
三年前に起きた、自動車事故。
歩いていた女の子はかすり傷だった。
この事件をなかったことにしようと
最初に干渉したのは「タイムチェンジャー」という過去干渉を生業とする業者だった。
不思議なことに、この業者を処刑した執行官が今度は
自らタイムリープし、干渉をはじめたのだ。
事故がおこらないようにと立ち振る舞う。
この交通事故の六回目の過去干渉、
俺は執行官として派遣された。
皆が命をかけてまで
事故を阻止しようとし続けた理由がようやく
わかる。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる