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猪竜

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この日も、バドは、猪竜シシと遭遇し、攻撃を受けていた。

ちなみに、ヒト蜘蛛アラクネは、ばん以外の個体は基本的にバドに対してそれほど執着は見せない。襲い掛かってはくるものの、ばんの縄張りに逃げ込むと諦める。

これは、基本的に<獲物>として狙っているだけだからだろう。

一方、猪竜シシは雑食だが、基本的に自分より大きいものについては、危険を感じた時に身を守るために攻撃し、それでもし、倒せてしまった場合には食べることもあるという程度で、自分の側から積極的に仕掛けることはあまりない。

まあ、捕食者に見付かりそうになったところで、一応、その場から離れようとはするものの積極的に逃げるわけでもないので、結果的に見付かって身を守るために攻撃してくることも多いのだが。しかしなぜかバドに対しては、自分よりも大きく、身の危険を感じるような振る舞いもしないのに、突っかかってくるのである。

そして不思議と、他の地域に住む猪竜シシは、バドと同じ<ドーベルマンMPM>に対してそこまで攻撃的じゃないという。

もしかすると、自分達にとっての最大の<天敵>であるヒト蜘蛛アラクネの幼体と勘違いして襲ってきている可能性はあるだろうか。

実際、ヒト蜘蛛アラクネの幼体が猪竜シシに襲われて命を落とす例は確認されている。

いずれの理由にせよ、この地域の猪竜シシがバドを目の敵にしてるのは間違いなく、またもバド目掛けて突撃してきた。

しかし、待機状態で全高約百二十センチ。脚を思い切り伸ばしても百七十センチをわずかに超える程度の大きさでありながら、頭頂高約二メートル半、全長約三メートルのばんの攻撃を受け切ることができるバドに勝てるはずもない。

ひらりひらりと攻撃を躱し、疲れるのを待つ。逃げても良かったが、それだと<ばんの観察という役目>が果たせなくなるので、基本的にはその選択はない。攻撃を躱し続けて疲れて諦めるのを待つか、あまりしつこいようだと打ちのめして気絶させるかという対応になる。

なのにこの時は、バドに躱され行き過ぎたところを方向転換しようとした猪竜シシの首筋に、強烈な一撃。

「ギピッッ!?」

一声挙げただけでそのまま昏倒、痙攣を起こし始めた。どうやら頸椎が破壊されたようだ。

そんな猪竜シシの脇に降り立ったのは、ばんだった。バドを狙った猪竜シシを、人間のようにも見える部分の足(ヒト蜘蛛アラクネにとっての触角)の蹴りで倒してしまったのだ。

しかも、ばんは、倒れた猪竜シシを掴んで持ち上げ、首筋に喰らいついてとどめを刺し、そのまま貪り始めたのであった。

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