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アサシン竜
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アサシン竜にとってバドは、非常に奇妙な動物に見えただろう。しかし、まったく周囲を警戒する様子もなくただ漫然と佇んでいるその姿は、<間抜けな獲物>にも思えたのかもしれない。
だがそれは、<ロボット>というものを知らないからこその誤解だった。ロボットは、普通の動物のように一つないし二つ程度の感覚器官を用いて周囲を認知しているわけじゃない。
ドーベルマンMPMは、ロボットとしては非常に簡素なつくりで、その<簡素なつくり>そのものをコンセプトとして成立しているロボットではあるものの、仮にも複数のセンサー類を搭載しそれらを同時に作動させて周囲を常に把握しているのだ。だから、頭上から接近してくるアサシン竜のことも、頭をそちらに向けなくても接近し始めたその時点からすでに捉えている。
ゆえに、アサシン竜が飛び掛ったと同時に身を躱してみせる。
「!?」
必殺の一撃のはずだった攻撃を躱されて、アサシン竜は地面に降り立った。すると慌てて近くの木まで走って上り始める。
アサシン竜は、樹上生活に適応したものの逆に地上ではやや不利だった。特に、素早く地上を駆け群れで狩りをするボクサー竜などは、地上にあっては非常に相性の悪い相手なので、遭遇しては困るからだ。
ただしその分、木に登れないボクサー竜は、樹上のアサシン竜には手も足も出ないが。
一方、バドの方としては、アサシン竜は観察対象ではないので、そもそも相手をする理由がない。自分が捕食されることを心配しないといけない生き物とは違うのだ。
が、アサシン竜の攻撃を躱すために動いたことで、察知されてしまった。
ヒト蜘蛛に。蛮に。
見れば、蛮が、猛然とバド目掛けて走ってきている。それこそ、恐ろしい形相で。さっきから何かの気配を感じていたのがようやく確認できたので、『ぶち殺し』に来たのだ。
「!?」
アサシン竜は慌てて木に登り、それから木から木へと飛び移って、脇目も振らずに逃げ出した。いくら凶暴といえど、体高約一メートル、体重三十キロほどのアサシン竜では、ヒト蜘蛛と真っ向勝負では相手にならない。あくまで隙を突ければ勝てることもあるというだけで、存在を悟られてしまったらその時点で勝ち目などないのだ。
ならば、逃げる。とにかく逃げる。人間のように<プライド>などという糞の役にも立たないものに命など賭けはしない。生きていてこそすべてに意味があるのだ、死ねば他の生き物に食われて糞になるだけなのだから。
もっとも、この時、蛮が狙っていたのはバドであって、アサシン竜のことなど意識の隅にも存在しなかったのだが。
だがそれは、<ロボット>というものを知らないからこその誤解だった。ロボットは、普通の動物のように一つないし二つ程度の感覚器官を用いて周囲を認知しているわけじゃない。
ドーベルマンMPMは、ロボットとしては非常に簡素なつくりで、その<簡素なつくり>そのものをコンセプトとして成立しているロボットではあるものの、仮にも複数のセンサー類を搭載しそれらを同時に作動させて周囲を常に把握しているのだ。だから、頭上から接近してくるアサシン竜のことも、頭をそちらに向けなくても接近し始めたその時点からすでに捉えている。
ゆえに、アサシン竜が飛び掛ったと同時に身を躱してみせる。
「!?」
必殺の一撃のはずだった攻撃を躱されて、アサシン竜は地面に降り立った。すると慌てて近くの木まで走って上り始める。
アサシン竜は、樹上生活に適応したものの逆に地上ではやや不利だった。特に、素早く地上を駆け群れで狩りをするボクサー竜などは、地上にあっては非常に相性の悪い相手なので、遭遇しては困るからだ。
ただしその分、木に登れないボクサー竜は、樹上のアサシン竜には手も足も出ないが。
一方、バドの方としては、アサシン竜は観察対象ではないので、そもそも相手をする理由がない。自分が捕食されることを心配しないといけない生き物とは違うのだ。
が、アサシン竜の攻撃を躱すために動いたことで、察知されてしまった。
ヒト蜘蛛に。蛮に。
見れば、蛮が、猛然とバド目掛けて走ってきている。それこそ、恐ろしい形相で。さっきから何かの気配を感じていたのがようやく確認できたので、『ぶち殺し』に来たのだ。
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ならば、逃げる。とにかく逃げる。人間のように<プライド>などという糞の役にも立たないものに命など賭けはしない。生きていてこそすべてに意味があるのだ、死ねば他の生き物に食われて糞になるだけなのだから。
もっとも、この時、蛮が狙っていたのはバドであって、アサシン竜のことなど意識の隅にも存在しなかったのだが。
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