9 / 97
密林の暗殺者
しおりを挟む
同じヒト蜘蛛を殺して喰ったことについても、蛮は何の感慨も持ち合わせていないようだった。ヒト蜘蛛の感覚は、それこそ昆虫に近いものなのだろう。その中で彼がやや高度な思考を行っているだけである。他の普通のヒト蜘蛛はまさしく昆虫と変わらないのだから。
そんな蛮を、バドはどこまでも静かに観察する。
それから改めて悠々と自身の縄張りの見回りを続ける彼の後を追い、バドも移動を開始する。
しかしその時、バドの頭上に何かの影がよぎった。
異様に長い腕と真っ黒な体。シルエットは<テナガザル>と呼ばれる動物に近いようにも見えるものの、明らかに別の種。それが樹上からバドに飛び掛かったのだ。
ほとんど音もなく。まるで気配を殺し標的に襲い掛かる、
<暗殺者>
のごとく。
実際、暗殺者のようなその習性から、
<アサシン竜>
と呼ばれている動物だった。<竜>とつくことからも察せられるとおり、ヒト蜘蛛よりはボクサー竜に近い種である。おそらく、同じ祖先を持つ。
アサシン竜も肉食で凶暴な獣であった。これまた、油断しているとヒト蜘蛛でも危険な程度には。
何しろ、隠密性がすこぶる高い。完全に気配を消して風景に溶け込んでいると、その姿は見えているはずなのに気付かないことさえある。生身の人間など、それこそただの<餌>にすぎないだろう。
そんなアサシン竜がバドを狙ったのだ。
しかし、樹上からほとんど音もなく襲い掛かったアサシン竜を、バドは、苦も無く躱してみせた。
当然か。バドは動物ではなくロボットなのだ。各種センサーを装備し、人間とは全く異なった形で周囲を常に見ている。アサシン竜がどれほど気配を消してみせようと、赤外線カメラなどでは丸見えなのだから。
「!?」
アサシン竜は、自分に気付いた様子もないバドが攻撃を躱してみせたことに動揺した。
地面に降り立って慌てて体勢を整え周囲を窺うものの、すでにバドの姿はない。
「? !?」
急いで樹上に戻りつつ、周囲を窺う。
アサシン竜は、サルに近い生態を持ち、樹上を主なフィールドとしているが、半面、地上に降り立つと本来の力を発揮できないという特徴を持つ。地上はボクサー竜の方が圧倒的に有利で、それに対抗するために樹上に適応したのだろう。
また、群れを作らず単独で狩りをする。そういう点ではヒト蜘蛛にも似ていると言えるだろうか。
そのアサシン竜が、バドを獲物として狙ったのだ。もっとも、完全に失敗ではあるが。そもそも捕えられたところで、食べる部分もないわけで。
そんな蛮を、バドはどこまでも静かに観察する。
それから改めて悠々と自身の縄張りの見回りを続ける彼の後を追い、バドも移動を開始する。
しかしその時、バドの頭上に何かの影がよぎった。
異様に長い腕と真っ黒な体。シルエットは<テナガザル>と呼ばれる動物に近いようにも見えるものの、明らかに別の種。それが樹上からバドに飛び掛かったのだ。
ほとんど音もなく。まるで気配を殺し標的に襲い掛かる、
<暗殺者>
のごとく。
実際、暗殺者のようなその習性から、
<アサシン竜>
と呼ばれている動物だった。<竜>とつくことからも察せられるとおり、ヒト蜘蛛よりはボクサー竜に近い種である。おそらく、同じ祖先を持つ。
アサシン竜も肉食で凶暴な獣であった。これまた、油断しているとヒト蜘蛛でも危険な程度には。
何しろ、隠密性がすこぶる高い。完全に気配を消して風景に溶け込んでいると、その姿は見えているはずなのに気付かないことさえある。生身の人間など、それこそただの<餌>にすぎないだろう。
そんなアサシン竜がバドを狙ったのだ。
しかし、樹上からほとんど音もなく襲い掛かったアサシン竜を、バドは、苦も無く躱してみせた。
当然か。バドは動物ではなくロボットなのだ。各種センサーを装備し、人間とは全く異なった形で周囲を常に見ている。アサシン竜がどれほど気配を消してみせようと、赤外線カメラなどでは丸見えなのだから。
「!?」
アサシン竜は、自分に気付いた様子もないバドが攻撃を躱してみせたことに動揺した。
地面に降り立って慌てて体勢を整え周囲を窺うものの、すでにバドの姿はない。
「? !?」
急いで樹上に戻りつつ、周囲を窺う。
アサシン竜は、サルに近い生態を持ち、樹上を主なフィールドとしているが、半面、地上に降り立つと本来の力を発揮できないという特徴を持つ。地上はボクサー竜の方が圧倒的に有利で、それに対抗するために樹上に適応したのだろう。
また、群れを作らず単独で狩りをする。そういう点ではヒト蜘蛛にも似ていると言えるだろうか。
そのアサシン竜が、バドを獲物として狙ったのだ。もっとも、完全に失敗ではあるが。そもそも捕えられたところで、食べる部分もないわけで。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
未熟者の私には愛情とエゴの違いが分かりません……。
月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
誰かを特別に愛するということは、それ以外の者に対する差別ではないのか……。より多くの人から愛されている生き物と、みんなから嫌われている生き物と、マイナーで誰からも関心を寄せられない生き物と……。それらの生き物に対する人間の対応は全部同じでしょうか。
本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記
砂嶋真三
SF
WEB小説「巨乳戦記」を愛する男は、目覚めると太陽系を治めるモブ領主になっていた。
蛮族の艦隊が迫る中、夢だと思い込んだ男は、原作知識を活かし呑気に無双する。
巨乳秘書、巨乳メイド、巨乳艦長、そしてロリまでいる夢の世界であった。
――と言いつつ、割とガチ目の戦争する話なのです。
・あんまり科学しませんので、難しくないです。
・巨乳美女、合法ロリ、ツン美少女が出ますが、えっちくありません。
・白兵戦は、色々理由を付けて剣、槍、斧で戦います。
・艦隊戦は、色々理由を付けて陣形を作って戦います。
・わりとシリアスに残酷なので、電車で音読すると捕まります。
・何だかんだと主人公は英雄になりますが、根本的には悪党です。
書いている本人としては、ゲーム・オブ・スローンズ的な展開かなと思っています。
うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。
ハコニワ
SF
※この作品はフィクションです。一部、残酷描写が含まれてます。苦手なかたはご遠慮を……。
ある日、両親がゴミ箱に捨てられていたペットを拾った。でも俺から見れば、触覚の生えた人間!? 違う、宇宙人だ。
ペットは地球を侵略すると宣言。ど天然彼女たちの地球侵略が始まった。
幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
【弱体術師】に選ばれし者、それは最弱の勇者。
それに選ばれてしまった高坂和希は王国から迫害を受けてしまう。
唯一彼の事を心配してくれた小鳥遊優樹も【回復術師】という微妙な勇者となってしまった。
なのに昔和希を虐めていた者達は【勇者】と【賢者】と言う職業につき最高の生活を送っている。
理不尽極まりないこの世界で俺は生き残る事を決める!!
ストランディング・ワールド(Stranding World) 第二部 ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて新天地を求める~
空乃参三
SF
※本作はフィクションです。実在の人物や団体、および事件等とは関係ありません。
※本作は海洋生物の座礁漂着や迷入についての記録や資料ではありません。
※本作には犯罪・自殺等の描写などもありますが、これらの行為の推奨を目的としたものではありません。
※本作はノベルアッププラス様でも同様の内容で掲載しております。
※本作は「ストランディング・ワールド(Stranding World) ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて兄を探す~」の続編となります。そのため、話数、章番号は前作からの続き番号となっております。
LH(ルナ・ヘヴンス歴)五一年秋、二人の青年が惑星エクザローム唯一の陸地サブマリン島を彷徨っていた。
ひとりの名はロビー・タカミ。
彼は病魔に侵されている親友セス・クルスに代わって、人類未踏の島東部を目指していた。
親友の命尽きる前に島の東部に到達したという知らせをもたらすため、彼は道なき道を進んでいく。
向かう先には島を南北に貫く五千メートル級の山々からなるドガン山脈が待ち構えている。
ロビーはECN社のプロジェクト「東部探索体」の隊長として、仲間とともに島北部を南北に貫くドガン山脈越えに挑む。
もうひとりの名はジン・ヌマタ。
彼は弟の敵であるOP社社長エイチ・ハドリを暗殺することに執念を燃やしていた。
一時は尊敬するウォーリー・トワ率いる「タブーなきエンジニア集団」に身を寄せていたが、
ハドリ暗殺のチャンスが訪れると「タブーなきエンジニア集団」から離れた。
だが、大願成就を目前にして彼の仕掛けた罠は何者かの手によって起動されてしまう。
その結果、ハドリはヌマタの手に寄らずして致命傷を負い、荒れ狂う海の中へと消えていった。
目標を失ったヌマタは当てもなくいずこかを彷徨う……
「テロリストにすらなれなかった」と自嘲の笑みを浮かべながら……
病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。
べちてん
SF
生まれつき体の弱い少女、夏凪夕日は、ある日『サンライズファンタジー』というフルダイブ型VRMMOのゲームに出会う。現実ではできないことがたくさんできて、気が付くとこのゲームのとりこになってしまっていた。スキルを手に入れて敵と戦ってみたり、少し食事をしてみたり、大会に出てみたり。初めての友達もできて毎日が充実しています。朝起きてご飯を食べてゲームをして寝る。そんな生活を続けていたらいつの間にかゲーム最強のプレイヤーになっていた!!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる