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第一章
始業式
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始業式
「これからみなさんは2年生になります。高校生活にも慣れてきて意識もだらしなくなってきてしまう時期なので気を引き締めてください。こちらも厳しくしていきます。」
始業式が終わり、担任の話が始まった。ただでさえ始業式が退屈で眠かったというのにこれ以上長い話は聞きたくなかった。
「じゃあ次に自己紹介をしてもらいます。最初は...赤崎さん。」
名前順だとこのクラスでは一番というはついてない。一年のときは「赤井」がいたから二番目だった...あまり変わらないな。
第一印象を良くするためにも明るく振る舞うべきだが、菊はそういうガラではなかった。決して恥ずかしいからではない。
「赤崎菊。よろしく。」
それで終わり?と誰もが思ったが、終わってしまったので周りは拍手をするしかなかった。担任も何も言ってこないからこれでいいだろう。あいつのほうを見るとなぜか笑いをこらえているようだった。
そこから順に自己紹介が始まったが菊は興味がないのであさってのほうを向いて、睡魔と戦っていた。そしてあいつの番になった。
「初めまして~、といっても去年同じだった人もいるね。星野麗華って言います。れいかって呼んでね~よろしく~」
星野麗華。菊とは家がお隣さんでいわゆる幼馴染だ。幼稚園から高校の今に至るまでずっと一緒で、クラスが違うこともあったが家が隣だとあまり関係がなかった。高校を選ぶとき、家から近いところにしたかったが中の上ぐらいで入試が面倒そうだったから変えようと思ったが「ここにいこう~」と麗華に半ば無理やり勉強をさせられ一緒に通うことになった。
「はい、あとこれらのプリントを配ったら今日は終わりでーす。」
プリントの束を先生から受け取り、後ろに回すと後ろの席の人と目が合った。その瞬間、相手が少し怖がってるように見えた。眠たそうにしている顔が、睨んでいるように見えたのだろう。頑張って笑顔を取り繕うと相手は余計に怖がった。どうすれば良かったんだろう...
「あははは~。それはきくちゃんが悪いでしょ~?」
「うるせー言うなー」
帰り道、その時のことを麗華に話した。
学校が終わったすぐあと、麗華はクラスメイトに囲まれて色々話していた。菊はその輪に入るつもりはなかったので先に帰ろうとしたら、
「きくちゃん待って~」
と麗華が追いかけてきた。
「いいのかよ。あいつらと話してたんじゃないのか?」
「きくちゃんと帰りたいもん、また明日ね~って切り上げてきた~」
菊は内心、少し嬉しかったがばれると恥ずかしいので表に出さないよう気を張った。
怖がられた時のことを話した後、麗華はくすくす笑い出した。
「どうしたんだよ?急に笑い出して」
「自己紹介のこと思い出しちゃって。そりゃーあれだったら怖がられるかもな~って。去年もそんな感じだったの~?」
「別にいいだろー」
「それじゃあ友達出来ないよ~?」
「いらねえよ別に!」
実際、菊は友達は多くないし作る気もない。去年は麗華とは別のクラスだった。菊一人だと近づくなオーラが出てるからみんな近寄らないんだよとそのときも麗華に言われた。当の本人は、たまに自分のクラスに遊びに来る麗華と話しているくらいで十分だった。
(麗華と一緒にいるのは楽しいけど、こっから人が増えるっていうのは違う気がするんだよなー)
「あたしは麗華が隣にいてくれるだけで十分だからな」
「えっ...!」
麗華は意表を突かれたかのようにその場に立ち止まった。
「それって...えっと~」
「?」
菊は自分が言ったことを思い出した。
『あたしは麗華が隣にいてくれるだけで十分だからな』
(あたし、何言ってんだ!?)
急に恥ずかしくなり、菊の顔がぼっ、と赤くなった。
「ちっちがう!ただ友達とかいらないっていうのを言いたかっただけで他に意味なんてない!」
「そっそうだよね~...あははっ...」
少し残念そうな顔をした気がしたが、すぐいつもの笑顔になって
「ねえ、ほかの意味ってさ~ちなみに何があるのよ~?教えて~」
「ばっ、なんでもねえよ!」
「なに~照れてるの~?かーわいい~」
「かわいいゆうなー!あとほっぺたつんつんするなー!」
そんなことをしているうちに家に着いた。
「これからは同じクラスだね。よろしくね、き~くちゃんっ」
「うおっ、こんなとこで抱きつくなよー!」
「だって同じクラスだもん、うれしいでしょ~」
「ほぼ毎日あってるだろ」
「もうロマンがないな~」
そういって菊から離れたと思えば足早に家の前に行き、
「また明日ね~」
と小さく手を振って中に入っていた。
麗華はこのとき照れていたように思えたが——
(なんだあいつ...)
菊は気づくことはなかった。
(同じクラスかー、どうなるんだろうな...)
騒がしくなるだろうなと思うと同時に、少しの期待感を抱いて家に入った。
「ただいまー、今日の晩ごはんはー?」
続く
「これからみなさんは2年生になります。高校生活にも慣れてきて意識もだらしなくなってきてしまう時期なので気を引き締めてください。こちらも厳しくしていきます。」
始業式が終わり、担任の話が始まった。ただでさえ始業式が退屈で眠かったというのにこれ以上長い話は聞きたくなかった。
「じゃあ次に自己紹介をしてもらいます。最初は...赤崎さん。」
名前順だとこのクラスでは一番というはついてない。一年のときは「赤井」がいたから二番目だった...あまり変わらないな。
第一印象を良くするためにも明るく振る舞うべきだが、菊はそういうガラではなかった。決して恥ずかしいからではない。
「赤崎菊。よろしく。」
それで終わり?と誰もが思ったが、終わってしまったので周りは拍手をするしかなかった。担任も何も言ってこないからこれでいいだろう。あいつのほうを見るとなぜか笑いをこらえているようだった。
そこから順に自己紹介が始まったが菊は興味がないのであさってのほうを向いて、睡魔と戦っていた。そしてあいつの番になった。
「初めまして~、といっても去年同じだった人もいるね。星野麗華って言います。れいかって呼んでね~よろしく~」
星野麗華。菊とは家がお隣さんでいわゆる幼馴染だ。幼稚園から高校の今に至るまでずっと一緒で、クラスが違うこともあったが家が隣だとあまり関係がなかった。高校を選ぶとき、家から近いところにしたかったが中の上ぐらいで入試が面倒そうだったから変えようと思ったが「ここにいこう~」と麗華に半ば無理やり勉強をさせられ一緒に通うことになった。
「はい、あとこれらのプリントを配ったら今日は終わりでーす。」
プリントの束を先生から受け取り、後ろに回すと後ろの席の人と目が合った。その瞬間、相手が少し怖がってるように見えた。眠たそうにしている顔が、睨んでいるように見えたのだろう。頑張って笑顔を取り繕うと相手は余計に怖がった。どうすれば良かったんだろう...
「あははは~。それはきくちゃんが悪いでしょ~?」
「うるせー言うなー」
帰り道、その時のことを麗華に話した。
学校が終わったすぐあと、麗華はクラスメイトに囲まれて色々話していた。菊はその輪に入るつもりはなかったので先に帰ろうとしたら、
「きくちゃん待って~」
と麗華が追いかけてきた。
「いいのかよ。あいつらと話してたんじゃないのか?」
「きくちゃんと帰りたいもん、また明日ね~って切り上げてきた~」
菊は内心、少し嬉しかったがばれると恥ずかしいので表に出さないよう気を張った。
怖がられた時のことを話した後、麗華はくすくす笑い出した。
「どうしたんだよ?急に笑い出して」
「自己紹介のこと思い出しちゃって。そりゃーあれだったら怖がられるかもな~って。去年もそんな感じだったの~?」
「別にいいだろー」
「それじゃあ友達出来ないよ~?」
「いらねえよ別に!」
実際、菊は友達は多くないし作る気もない。去年は麗華とは別のクラスだった。菊一人だと近づくなオーラが出てるからみんな近寄らないんだよとそのときも麗華に言われた。当の本人は、たまに自分のクラスに遊びに来る麗華と話しているくらいで十分だった。
(麗華と一緒にいるのは楽しいけど、こっから人が増えるっていうのは違う気がするんだよなー)
「あたしは麗華が隣にいてくれるだけで十分だからな」
「えっ...!」
麗華は意表を突かれたかのようにその場に立ち止まった。
「それって...えっと~」
「?」
菊は自分が言ったことを思い出した。
『あたしは麗華が隣にいてくれるだけで十分だからな』
(あたし、何言ってんだ!?)
急に恥ずかしくなり、菊の顔がぼっ、と赤くなった。
「ちっちがう!ただ友達とかいらないっていうのを言いたかっただけで他に意味なんてない!」
「そっそうだよね~...あははっ...」
少し残念そうな顔をした気がしたが、すぐいつもの笑顔になって
「ねえ、ほかの意味ってさ~ちなみに何があるのよ~?教えて~」
「ばっ、なんでもねえよ!」
「なに~照れてるの~?かーわいい~」
「かわいいゆうなー!あとほっぺたつんつんするなー!」
そんなことをしているうちに家に着いた。
「これからは同じクラスだね。よろしくね、き~くちゃんっ」
「うおっ、こんなとこで抱きつくなよー!」
「だって同じクラスだもん、うれしいでしょ~」
「ほぼ毎日あってるだろ」
「もうロマンがないな~」
そういって菊から離れたと思えば足早に家の前に行き、
「また明日ね~」
と小さく手を振って中に入っていた。
麗華はこのとき照れていたように思えたが——
(なんだあいつ...)
菊は気づくことはなかった。
(同じクラスかー、どうなるんだろうな...)
騒がしくなるだろうなと思うと同時に、少しの期待感を抱いて家に入った。
「ただいまー、今日の晩ごはんはー?」
続く
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