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第十話 恋愛

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翌日の金沢は雨が降っていた。

待ち合わせ場所にやってきた社長は、よそよそしく無口だった。

私は社員として社長に挨拶をすると一緒に取引先に向かった。

私たちは昨夜の出来事がなかったかのように振る舞った。

その状況は、出張から帰って来てからも続いていたが、出張から3日が経過した頃、私は社長室に呼び出された。

「急に呼び出して、すみません」
「いえ…要件は何ですか?」
「これを、由香里さんに渡してもらえませんか?」

社長は携帯電話会社のロゴが入った小さな紙袋を私に手渡した。

「はい…分かりました…」
「よろしくお願いします」

用件の済んだ私は社長室を後にした。

紙袋の中身は、既に電源の入っているスマホだった。

「ピコン」

新しいスマホにLINEが届いた。

送信者は「謙一」受信者は「由香里」となっていた。

『これから由香里さんには、この携帯で連絡をしますね』

社長は、まだ私のことを想っていてくれたようだ…嬉しい…。

『分かりました、謙一さん』

私は彼に返信した…。

その日から、私は謙一さんとLINEで会話をするようになった…勿論、女として…。

私は謙一さんから頂いたスマホの中では女でいられた。

彼は私に対する熱い想いを包み隠さず打ち明けてくれた。

私は初めて恋をした少女のように、彼とのやり取りにときめいた。

私は女としての幸せを感じていた。

ただ、謙一さんは由香里と会ってセックスをすることしか考えていなかった。

そして、言葉には出さないが、私の体も彼を欲していた。

しかし、私は男の格好で男に抱かれたいとは思っていない。

私が女になるには場所と時間が必要で、彼の誘いを断り続けるしかなかった。

私は5年前に購入した女性ホルモン剤を手に取ったが服用することはなかった。

それは、副作用があったからだ…男性が女性ホルモン剤を服用すると体が女性化するが、同時に男性としての機能を失う。

私自身は男性機能を失くすことに未練はなかったが、家庭のことを考えると躊躇してしまう…。

身勝手な私も、妻に対してそこまで身勝手にはなれなかった。

そして、その週の土曜日、私は社長からの依頼で出張に出掛けることになった。

勿論、架空の出張だ。

出張先は京都…いつもと違うのは、宿泊先がビジネスホテルではなくシティホテルのジュニアスイートだったことだ。

昼過ぎに一人でチェックインした私は女になる準備をした。

ムダ毛の処理を済ませた私は、入念にアナル洗浄をした。

この工程は本物の女性には必要のない事だったが、彼のペニスを受け入れることを考えると嬉しい気持ちになった。

これから彼に抱かれる…そう考えると、私のメイクは濃くなっていった。

少しでも綺麗に見られたいとういう想いが溢れていたからだ。

夕方になって部屋にやって来た謙一さんは、私を綺麗だと言ってくれて、優しく抱き締めキスをしてくれた。

「これ、買ってきたんですw 良かったら着替えてくれませんか?」

謙一さんはたくさんの紙袋を私に渡した。

一つ目の紙袋には洋服が入っていた。

「きっと似合うと思いますよw」

彼がプレゼントしてくれた洋服は、普段の私が着ないタイプのデザインだった。

女装はお金のかかる趣味で、普段の私の洋服はユニクロやGU等のファストファッションが主だった。

「こっちの袋には靴が入っていて、そっちは下着ですw」
「ここまでして頂いて…何か申し訳ないです…」
「いえ!気にしないでください!僕がしたくてしていることですからw」
「ありがとうございます」
「じゃあ、着替えが終わったら呼んでください!隣の部屋で待ってますw」

謙一さんは、私が裸を見られるのが苦手なことを覚えていてくれて、私を一人にしてくれた。

彼がプレゼントしてくれた下着は、ランジェリーと呼ばれる物だった。



黒のレースで出来ているランジェリーはどれも透けていて、ガーターストッキングがクラシカルな印象を与えていた。

この下着では豊尻パッドやガードルを装着出来ない…。

謙一さんの好みの下着は女装には不向きだったが、私は彼の色に染められることが嬉しく感じ、小細工をしないで直接下着を装着することにした。

女装歴の長い私はガーターストッキングを履いた経験があり、後ろのガーターベルトを少し横にずらして留めることがコツだと知っていた。

そうしないと、座った時にベルトの留め具が太ももに食い込んでしまうからだ。

鏡に映った私の下着姿は、如何にも、これからセックスをする女にみえた。

私は自分の下着姿に興奮し、本物の女性とは違う反応をしていた。

鏡に映った姿には女としての違和感があり、自分が変態であることを思い出させた。



私は鏡が見えない場所に移動し、ペニスが鎮まるのを待って洋服に着替えた。

謙一さんが買ってくれた洋服は3着あり、その全てがワンピースで、俗にキャバドレスと呼ばれる物だった。

セクシーなランジェリーのせいで豊尻パッドを装着出来なかった私は、小さなお尻と股間の膨らみを隠す為にフレアスカートのワンピースを着てみた。



鏡には普段と違う私の姿が映っていた。

髪型とメイクが少し地味かも…私はウィッグをカールしたセミロングのものと交換し、アイメイクとリップを派手にした。

そして、ピンヒールのパンプスを履くと、私の見た目は出勤前のキャバ嬢のようになっていた。

これでいい筈…でも、少し恥ずかしい…。

「あの…準備出来ました…」
「おお!凄く綺麗だ!」

私を見た謙一さんは大袈裟に驚き、私を強く抱き締め濃厚なキスをしてきた。

「服を脱いで下着姿を見せてもらっていいですか?」
「えっ…はい…」

私がキャバドレスを脱ぐと、謙一さんは舐めるように私を見てきた。

「恥ずかしいから、あまり見ないでください…」

私は女らしくない部分を手で隠した。

「恥ずかしがることないですよ!由香里さんは世界一綺麗です!」

彼はそう言うと私を抱き締めた。

私の下腹部には謙一さんの硬いモノが当たっていた。

「口でしましょうか?」
「いえ、それより…」

謙一さんは自分でズボンとパンツを脱ぎ捨てた。

彼のペニスは既にはち切れそうなくらい勃起していて、飢えた野犬がよだれを垂らすように、先端からは透明な体液が溢れていた。

「窓に手をついて」



私の腰を掴んだ謙一さんは、私のショーツを横にずらし、唾液を私のアナルに塗ると、立ちバックの体位で私の中に入ってきた。

うっ…一週間ぶりの挿入に痛みは無かったが、彼のペニスの分だけ膨らんだお腹が内側から圧迫される感じがした。

下着を脱がさないんだ…そうか、全裸にならなくてもセックスが出来る下着を選んでくれたんだ…嬉しい…。

「パン…パン…パン…パン…パン…」

彼が深く挿入する度に、お尻を打ち付ける音がした。

窓ガラスには、師走の京都の景色と彼が腰を振る姿が映っていた…。
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