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旅立ち 4

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「さてと……最後の一戦だね」

 初めてブラッドフォードと対戦してから十五日。
 『気まぐれ亭』を訪れたメルリーナを迎えたゲイリーは、にっこりと微笑んだ。

「一勝一敗。今日で勝負が決まるけど、覚悟はいいかな?」

「はい」

 メルリーナは、胸に抱えたチェス盤をぎゅっと抱きしめた。

「ところで。今夜は、新たな乗組員が加わるかもしれないというんで、大勢押しかけているんだけど、びっくりしないでね?」

「え?」

 ゲイリーが半身になって奥を示せば、そこにはぎっしりと海賊が詰まっていた。
 ぜんぶで三十人くらいはいそうだ。

「うおっ!」
「子供だっ!」
「女か? 男か?」
「船長はやっぱ、××××だなっ!」

 好き勝手に喚くのは、ブラッドフォードと似たり寄ったり、ちょっとだらしなくシャツの襟を開き、ブーツにトラウザーズをきっちり入れず、だぶだぶしたままにしている若者たちだ。

 腰に大なり小なりの剣を帯び、体つきも船乗りというより戦士のような筋肉の塊で、かなりの威圧感だった。

「別に、メルを脅して勝利をもぎ取ろうとしているわけじゃないからね? どちらかというと、メルの味方だから」

「おうよ! 俺ら、船長が負ける方に賭けてるんだ!」
「船長を泣かせてやれ!」
「船長がイカサマしようとしたら、ケツ蹴り上げてやるぜ!」

 野次なのか激励なのかわからない声援を受けながら、今までで一番不機嫌そうな様子で、店の真ん中に設えられたテーブルで飲んだくれていたブラッドフォードの前に座る。

「お、お願い、します」

「……おまえ、ほんっとうに、いいんだな?」

 ぎろり、と黒い瞳に睨まれて、ビクリと肩を跳ね上げたものの、メルリーナはきっぱりと頷いた。

「は、はい」

 ブラッドフォードに負けてからの七日間。

 メルリーナは、嬉々として離れを訪れるオルガから、毎日ディオンとフランツィスカ王女の様子を聞かされた。
 港の視察に行った、貴族の邸で行われた舞踏会に現れた、馬車で遠出して美しい湖の側にある別荘で一泊した、街の人たちと交流し、庶民の入るような食堂で仲良く食事をしていたなど、日記に書けるくらいに事細かい報告を聞かされた。

 そして、フランツィスカ王女をリーフラント王国へ送り届けるために船に乗り込むディオンを遠くから見送った日、ブラッドフォードとの二戦目に勝利した。

 二戦目に勝利した後、メルリーナは離れにあったマクシムの遺品を綺麗に片づけた。
 
 マクシムの友人たちは亡くなっている人の方が多かったし、譲って喜ばれるようなものは殆どなかった。
 唯一、書き物机の引き出しの奥に押し込まれていた小さな木箱に入った、小さな銀の巻貝の中に一粒の真珠と青い宝石が埋め込まれた首飾りだけは、大事なもののような気がしたので、ラザールに預かってもらった。
 メルリーナが物心ついたときには既に亡くなっていた祖母の形見かもしれないと思ったが、確証がないままに、父ギュスターヴへ渡す気にはなれなかった。

 マクシムの衣服は、まだ当分着られそうなものは自分用に仕立て直し、家具などは売り払って旅費の足しにした。

 身の回りがすっかり片付いた頃には、ディオンはリーフラント王国に婚約の申し込みに行ったのだという噂が広がり、近々正式な発表があるだろうということをオルガから聞き、出来ればお祝いの言葉を述べるような事態にならないようにと願った。

 本当は、三回目の勝負に勝って、旅立つことが確定してから父に話そうと思っていたけれど、強引に見合いの相手を招き、その場で承諾させようとするソランジュに我慢出来ず、リヴィエールを離れることを告げてしまった。

 ソランジュは何にせよ、メルリーナがいなくなるならそれでいいと喜び、ギュスターヴは戻って来る気があるのかと尋ねた。

 未来のことなどわからないが、リヴィエールに戻ることはあっても、マクシムのいないイースデイルの邸に戻ることはないだろうと思ったので、二度と戻るつもりはなく、必要であれば相続権を放棄する旨の書類に署名すると答えた。
 結局、ギュスターヴは未だにその書類を用意していないが、後でねつ造するならそれでもいいと思っていた。
 
 メルリーナに残された大事なものは、ディオンから預かったチェス盤だけだったが、これも勝負が終わったら返すことになる。

 海の上にまで持って行きたいものは、何もなかった。
 
「じゃあ、始め」

 ゲイリーが持ち時間を図る砂時計を置き、メルリーナが先に一手指す。
 ブラッドフォードも迷いなく次を指し、砂時計は慌ただしく上下を入れ替える。

 駒の数が半分程度まで減ったところで、メルリーナは指す手を早めた。
 自分の持ち時間を短くし、出来る限りブラッドフォードに考えさせる時間を与えないためだ。
  
 ルアーリングで誘い、派手に駒を動かす一方で、ポーンを着実に進めてプロモーションでクイーンをもうひとつ得ようと画策する。
 一方のブラッドフォードも、ピンでメルリーナのナイトの動きを封じようとする。
 自滅への道、ツーク・ツワンクへ持ち込みたいが、うっかりしているとスキュアを決められそうになって、一度撤退。

 かなりの速さで指し進めるが、ブラッドフォードが迷う様子はない。

 久しぶりに全力で戦えることに、メルリーナはワクワクした。
 ブラッドフォードが相手なら、勝っても負けても満足するだろうけれど、今日だけは負けるわけにはいかない。

 まず、クイーンを犠牲にしてポーンでチェックをかけた。
 ブラッドフォードは、逆にポーンを犠牲にしてあっさりチェックを回避し、メルリーナのクイーンを奪う。
 その後も、ブラッドフォードはメルリーナの駒を着々と奪い、ビショップとルークとキングしか残らない状態となる。
 ブラッドフォードにはクイーン、ナイト、ビショップ、ポーンと一通りの駒が残っており、単純に見れば、メルリーナに勝ち目はなかった。
 
 ぎりぎりまで粘るフリをして、ビショップを動かしてチェックとするが、ブラッドフォードは再びキングを動かし、易々と回避する。

 メルリーナは、その一手を見て微笑んだ。

「……っ!」

 ブラッドフォードの舌打ちと共に、もう一度同じビショップを動かして、背後からキングを捕らえる。
 キングの逃げ道には、触れてもいないメルリーナのルークが効いている。
 どこへも、動けない。
 
「お見事」

 ゲイリーのひと言で、ブラッドフォードが叫んだ。

「う、あああああああっ!」

「うおぉぉぉっ!」
「勝ったっ!」
「やったっ!」

 固唾をのんで見守っていたたちは、メルリーナに賭けていたものも、そうでないものも何故か興奮して抱き合ったり殴り合ったりと大騒ぎだ。

 ひとしきり叫んだブラッドフォードは、魂が抜けたようにぐったりと椅子に座り込んで呆然としていたが、ゲイリーにワインの酒瓶を口に突っ込まれて我に返った。

「うぇほっ! 何しやがるっ!」 

「いや、浴びる程飲みたいんじゃないかと思ってね?」

 ブラッドフォードは、ゲイリーを睨んで瓶をひったくると、結局瓶から直接飲んだ。

「サクリファイスが得意なんだねぇ……捨て身の攻撃で油断させ、最後は動けなくなったと思わせて、油断したところで止めを刺す。実にあの航海長の孫らしい戦術だ」

 ゲイリーは、酔っ払いに壊されないようにと素早くチェスピースをしまいながら、メルリーナに微笑んだ。

「あの、お、おじい様のことも、知っているんですか?」

「直接は知らないけど、前リヴィエール公爵の乗る船には必ずその右腕と言われる航海長も乗っていて、二人が乗る船は海賊たちも避けて通ると有名だったからね」

「あのジジイどもは、海賊より性質が悪かった」

 ブラッドフォードの発言に、ゲイリーは「命の恩人に向かって」と呆れる。

「船が難破して漂流していたのを助けてくれたのには感謝してるが、その後、海賊船を襲って殴り込みかけるときに強引に手伝わされたんだぞ! あの当時の俺は、銃も剣も手にしたことのない、いたいけな少年だったんだ! それを、役立たずと腰抜けは海に放り込むと脅しやがって……おれがこんなんなったのも、あいつらのせいだ」

 ラザールとマクシムなら十分言いそうなことだ。

 ブラッドフォードが道を踏み外した原因の一端が二人にないとは言い切れず、メルリーナは、マクシムたちに代わって当時のブラッドフォード少年に詫びた。 

「ご、ごめんなさい……」

「メルが謝ることなんかないよ。完全な言いがかりだから。そもそも、難破船に乗っていたのだって、こっそり密航していたせいなんだから」

「え」

「それに、二人の洗礼を受けたおかげで、今のブラッドはそれなりの地位にいられるんだ」

 ゲイリーの言葉に半分頷きつつ、メルリーナは首を傾げた。
 海賊に地位なんかあっただろうか。

「それなりの地位……? ええと……その、ぶ、ブラッドさんは、海賊なのでは……」

 ブラッドフォードは目を剥いて驚き、次いでメルリーナにいきなり説教し始めた。

「海賊ぅっ!? 海賊船に乗る気だったのかっ!? 馬鹿か、おまえはっ! 海賊船に乗る女と言えば、そういう仕事に決まってるだろうがっ! それでなくとも、掠奪した船に女が乗っていたら、毎日突っ込んで、散々楽しんだ後、使い物にならなくなったら海に投げ込むかどこかの港の娼館に売り飛ばすんだぞ! そんな奴らの船に、ノコノコと乗る気だったのか、おまえはっ」

 ガミガミと怒鳴られ、責められ、メルリーナはカタカタと震えながら唇を引き結んだ。

 よく確かめなかったのは、メルリーナの落ち度ではあるが、ラザールが紹介する人間がひどいことをするはずはないと思っていたし、ゲイリーも腹黒いけれど、卑しいところはなかった。

 ブラッドフォードも、口も態度も悪いけれど、結局はメルリーナのお願いを聞き入れてチェスで勝負するあたり、ディオンに似てぶっきらぼうなだけで、中身はちゃんと優しいのだとわかっていた。
  
 世慣れたブラッドフォードから見ると、考えなしに思えるのかもしれないけれど、考えていないわけではない。
 
 だが、思ったことは声にならずに喉で詰まり、じわじわと熱くなる目の縁から盛り上がった涙が零れ落ちそうになる。

「うぉ、おい、な、泣くな……泣くなって!」

 慌てふためくブラッドフォードに、海賊たちが口々に叫ぶ。

「船長が、泣ぁかせたぁー」
「鬼畜だー」
「弱い者いじめしてるぅ」 
「ひーどいんだ、ひどいんだ!」

「てめぇらっ!」

 ブラッドフォードが殴るフリをすると、わっと逃げ出す。

「メル、ごめんね。ブラッドが子供で。叱ると怒るの区別がつかない馬鹿で」

 ゲイリーが懐から取り出した黒いバンダナを受け取り、目頭を押さえたメルリーナは、その肌触りに首を捻った。

 滑らかな肌触りは、高級素材に違いない。

「それ、安物だし、返してくれなくていいからね」

 絶対に、安くなんかない。
 改めて確かめてみれば、さりげなく模様が織り込まれていて、隅にはゲイリーのイニシャルが刺繍で入っている。 

「でも、あの……」

「僕は、この世のすべては自分のものだと思っているブラッドと違って、僕のものは君のもの、君のものは君のものだと思っているからね」

「俺は、俺のものは俺のものだと思っているだけだっ!」

 ブラッドフォードがごく真っ当な言い分を返せば、ゲイリーは冷ややかな視線を向ける。

「心の狭い男は、モテないよ?」

「別に、モテたかねぇよ」

「それはよかった。今後行く先々で、ブラッドは女嫌いだって言っておくよ」

「それとこれとは話が別だろうっ!」

 言い合う二人に、つい笑いを堪え切れずに噴き出したメルリーナを見て、ゲイリーがにっこり笑う。

「うん。笑っている方がいいよ。泣いていると、みんなあらゆる手を使って慰めたくなっちゃうからね。船では、笑っている方が安全だ」

 あらゆる手というのがどんな手なのかはわからないが、安全な方がいいに決まっている。
 メルリーナが素直に頷くと、ゲイリーは果実酒の入った杯を差し出し、乾杯しようと言い出した。

 賑やかな海賊たちも、ワインをなみなみと注いだ杯を掲げる。

「我らがヴァンガード号の新しい仲間に、乾杯っ!」
「乾杯っ!」
「かんぱーいっ!」

 次々と勝手にメルリーナのグラスにグラスをかち合わせてくる若者たちは、次々と名乗っていくが、とても覚えられそうにない。
 腕を組んで歌とも言えない歌を歌いながら次々と杯を空ける彼らの騒がしさに、店主はお手上げだとすっかり諦めているようだ。

「出航は明日の昼だが、準備は出来ているのか?」   
 
 ブラッドは、うんざりした顔をしながらメルリーナの状況を確認した。

「は、はい。あの、準備は着替えくらいで大丈夫ですか?」

「んぁ、いいんじゃねぇか?」

 ゲイリーが、基本的に面倒くさがりな様子のブラッドフォードに代わって、細かい説明を買って出た。

「大丈夫だよ、メル。足りないものがあれば、次の港で買えばいいし。船で仕事をしたらその分ちゃんと報酬も支払うし、基本的に船での食事はタダだから、十分賄えると思うよ」

「し、仕事って……あの、私に出来ることはありますか?」

 ただ船に乗るだけよりは、幾分肩身の狭い思いをせずにすむかもしれないと思い、メルリーナは問い返した。

「そうだねぇ……暇つぶしのチェスに付き合ってもらうのはもちろんとして……読み書きは出来るよね?」

「はい」

「じゃあ、色んな経費を計算する係の手伝いとか、船医の手伝いも出来るかな。あとは、みんなが家族や恋人に手紙を書いたり、届いた手紙を読んだりするのを手伝ってくれると有難いかも」

「はい」

「料理とかも……まぁ、慣れてきたらでいいから、そのあたりとかも手伝えるかな」

 少なくとも、自分に出来そうなことがあると聞いて、メルリーナはほっとした。

「大丈夫。何だって、やろうと思って頑張れば、出来るようになる。海の上でのことは、いくら陸で説明してもわからないからね。まずは……」

 ゲイリーの言葉に、メルリーナはマクシムの口癖を思い出して、くすりと笑った。

「乗ってみればわかる?」

「そのとおりっ!」

 返って来たのは、陽気なたちの陽気な声だ。
 不安はあるけれど、何とかやっていけるかもしれない。

 少なくとも、この雰囲気の中にいるのがメルリーナは好きだと感じた。

 しかし、そんなメルリーナに反し、ブラッドフォードは何故か疑わしいというように呟く。

「……ま、すんなり乗れれば、の話だが」

 どういう意味なのかと問い返そうとした時、ガンッというもの凄い音が響き、店の扉が勢いよく開かれた。

「メルっ!」

 一瞬で騒ぎは静まり、店中の視線が一気に集まる。 

 いつの間にかとっぷりと日が暮れた外の闇から飛び込んで来たのは、燃えるような赤い髪をして、空色の瞳を怒りと苛立ちに染めたディオンだった。 
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