キツネつきのお殿さま

唯純 楽

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めでたしめでたし

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 むかしむかし。

 小さな小さな照葉の国の真ん中にある照葉城には、働きもののお殿さまが住んでいた。

 朝から晩まで、民の声に耳を傾け、民の暮らしに心を砕き、みなが心穏やかに過ごせるよう照葉の国を守っていた。

 照葉の国を治める代々のお殿さまは善良で賢く優しく、いつの時代も民に慕われていたが、なかでも十代目のお殿さまは、たいそう慕われていた。

 民たちは十代目のお殿さまを、親しみを込めて『キツネのお殿さま』と呼んでいた。

 お殿さまがキツネだからではない。
 お殿さまには、キツネの奥方さまがいて、キツネの子がたくさんいたからだ。

 奥方さまは、伊奈利山の神使で、お殿さまのことが大好きだからと人の姿になって嫁入りし、お殿さまもまた、キツネの奥方さまのことが大好きで、とてもかわいがっていた。

 キツネのお殿さまは、実は人ではなかったという話もあるけれど、二人はたいそう仲がよいつがいで、どこへいくのも一緒。同じ日にお隠れになった後も、仲良く照葉の国を見守っている。

 照葉には、照葉の外の遠い国からたくさんの人がやって来る。

 小伊奈利神社にお参りし、白狐と金狼が仲良く追いかけっこをしている夢を見ると仲の良い夫婦になれる『つがい』が見つかると聞いた人々が、たくさんやって来る。

 照葉の国にやって来た、金や赤、黒や茶の色とりどりの人々が照葉でつがいをみつけ、色とりどりの異形を残していく。

 秋の伊奈利山のごとく様々な色で描かれて、照葉の国はますます美しくなっているそうな。


 めでたし、めでたし。
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