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ほんもののつがい、にせもののつがい 22
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洗いざらい秋弦の浮気について角右衛門に話してしまった楓は、一晩木こり小屋で過ごした後、再び山を登っていた。
急勾配の山を天狗のような勢いで飛ぶように登っていく男たちに、楓はすっかり感心してしまったが、角右衛門も負けてはいなかった。
「照葉の武士は、十分足腰を鍛えるために山歩きもするのだ」
腰を痛めてなければ、もう少し早く歩けるという角右衛門も楓にしてみればまるで平地を歩くかのごとく、スタスタと登っているように見える。
『さすが、角右衛門さまです』
「うん? 褒めてくれたのか?」
角右衛門がでれっと相貌を崩す。
すっかり打ち解けたせいか、狐姿の楓の言うこともわかるようになったらしい。
『はい』
「まだまだ、殿を野放しにはしておけんからな」
養育係として、秋弦が妻を貰い、無事に子をなしてからでなくては引退できぬという角右衛門は、今回の浮気騒動もさっさ祝言をあげるように自分が言うべきだったと反省しているらしい。
城へ戻り次第、嫁を迎える支度を万事整えるつもりだと宣言している。「殿に任せておいては、何年先になるかわからぬ」と言う。
あっという間に山門まであと一里ほどまで来たところで、森の中に狼の遠吠えが響き渡った。
「来たな」
角右衛門は歩を早めていつでも刀を抜けるように鯉口を切り、辺りを窺いながら長く伸びていた隊列を縮めろと指示する。
二列になって左右を確かめながら進んでいると、茂みが揺れ、黒い狼が飛び出して来た。
「山門まで走れっ!」
次々と飛び掛かって来る狼たちを斬り捨てながら、山道を先に駆け上がったのは火縄銃を持った者たちだ。
山門から見下ろすようにして狼たちを狙い撃ちにしていく。
角右衛門と共に山門に辿り着いたところで、楓はあることに気が付いた。
『駄目ですっ! 違う狼です!』
まさに矢を放とうとしていた弓手を角右衛門は慌てて止めた。
「どうした?」
『後ろから追い上げてくるのは、きっと味方です』
狼たちは、山門目掛けて駆け上がって来るが、その後ろからそんな狼たちを追い立てるように駆けて来る銀色の狼がいた。
「ということは……寺へ追い込む気か」
角右衛門が振り返ると、そこには更姫と春之助、そして秋弦がいた。
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