キツネつきのお殿さま

唯純 楽

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ほんもののつがい、にせもののつがい 18

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「も、貰うもの?」

「金銀財宝、油揚げなど、何でもよい。殿は、楓殿の大事なものを貰ったのだから、お礼を返すべきだろう?」

「でも……」

 何かがほしくてしていたわけではない。

 楓が何もいらないと首を振ると、角右衛門は優しく笑って諭した。

「何か、思い出になるものでも貰えばよい。なに、子種でもかまわん」

 子種、と聞いて楓は自分が秋弦に投げつけた言葉を思い出し、青くなった。

「でも……もしかしたら……もうないかもしれません」

「は?」

「秋弦さまに、子種が枯れてしまえばいいと言ってしまいました! 私には母さまのような術は使えませんが、『言霊(ことだま)』は試したことがないので……もしかしたら……」

 どういうことだと目を丸くする角右衛門に、震える唇を開いて呪いをかけてしまったのだと告白すると、周囲から息を呑む音とひそひそ囁く声が聞こえてくる。

「やばいだろ」
「子種だけがなくなるなら、別にやばくはないだろう?」
「いや、でも不能になってたら……?」
「別の相手限定ということも……」
「うわぁ、うちの奥方には絶対知られたくない……」

 角右衛門は心なしかちらりと視線を下腹部に走らせたものの、怯える男たちを「情けないっ! 子種くらい、気合で何とかせんかっ!」と一喝した。

「角右衛門さま……どうしましょう……」

 楓が再び泣きべそをかくと、角右衛門は「だから待て」と言う。

「更姫との件がすっきり片付くまで、待つことだ」

「……でも」

「悩むことなど何もない! 共寝してみて、子ができれば子種はあるということだ」

「でも、秋弦さまが私とは共寝したくないと言ったら……」

 肝心の問題はそこなのだと楓は訴えたが、角右衛門は自信たっぷりに言い切った。

「襲えばよい。殿は、押しに弱い」

「…………」
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