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ほんもののつがい、にせもののつがい 2
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秋弦をどこでどう捕えようとも、銀嶺の国へ向かうのは間違いないだろう。
場合によっては、このまま銀嶺の国へ乗り込むことも辞さないという春之助に、楓は恐ろしい可能性をとても口にすることができなかった。
淨春院の話では、完全に神様を下ろすためには、人間の器以外は邪魔になる。命が危険にさらされると目覚め、そのまま死ねば神がその身体を乗っ取るということだった。
更姫の狙いが、秋弦ではなく秋弦に下りる真神だとすれば……秋弦の命を奪ってしまうかもしれない。
『楓。僕たち、ちょっと調べてみるよ』
『どうも、獣臭いからね』
右近と左近は、秋弦が消えたのは間違いなく妖術の類だと言い、周囲を探ってから追いかけると言う。
楓も何かできればと思ったが、伊奈利山を出たことがなかったので、同じ眷属以外のことは何がなにやらさっぱりだ。
それに、春之助を一人にするわけにはいかない。
春之助に何かあれば、秋弦がとっても悲しむ。
『相手は狼だからね。手遅れになってなきゃいんだけど』
『そりゃもう、ペロッと食べちゃうよね』
二人の言葉に、楓はピクリと耳を立てた。
『……手遅れって? 食べるって……?』
『うん? 何でもないよ』
『そうそう、何でもない!』
あきらかに何かある。
しかし、右近左近はあっという間に姿を消してしまった。
春之助は巧みな馬術で荒れた道を急ぎながら、独り言のように呟く。
「兄上は普段はとても優しくて、争いごとは嫌いだけれど、すごく強い。私は稽古で一度も勝てたことがないし、剣術だけじゃなくて柔術も強い。毒や妙な薬などにも詳しいから少しでもおかしいと思えば口にしないし、だから……きっと大丈夫だ。楓も、そう思うだろう?」
『はい、春之助さま』
春之助に狐の楓の言葉は通じていないが、春之助は返事を求めてはいないだろう。
「ただ、心配なのは……兄上が物凄く初心だと言うことだ」
春之助の表情が一気に暗くなり、楓は俄かに心配になる。
『はい?』
「女子の見え透いた罠に簡単にハマりそうで……。兄上は、好いてくれる相手にとても弱い。強く突き放せないところがある」
『それはつまり、秋弦さまが浮気するかもしれないということでしょうか?』
「兄上は、押しに弱いから……」
『押しに押されて、押し倒されるということでしょうか?』
場合によっては、このまま銀嶺の国へ乗り込むことも辞さないという春之助に、楓は恐ろしい可能性をとても口にすることができなかった。
淨春院の話では、完全に神様を下ろすためには、人間の器以外は邪魔になる。命が危険にさらされると目覚め、そのまま死ねば神がその身体を乗っ取るということだった。
更姫の狙いが、秋弦ではなく秋弦に下りる真神だとすれば……秋弦の命を奪ってしまうかもしれない。
『楓。僕たち、ちょっと調べてみるよ』
『どうも、獣臭いからね』
右近と左近は、秋弦が消えたのは間違いなく妖術の類だと言い、周囲を探ってから追いかけると言う。
楓も何かできればと思ったが、伊奈利山を出たことがなかったので、同じ眷属以外のことは何がなにやらさっぱりだ。
それに、春之助を一人にするわけにはいかない。
春之助に何かあれば、秋弦がとっても悲しむ。
『相手は狼だからね。手遅れになってなきゃいんだけど』
『そりゃもう、ペロッと食べちゃうよね』
二人の言葉に、楓はピクリと耳を立てた。
『……手遅れって? 食べるって……?』
『うん? 何でもないよ』
『そうそう、何でもない!』
あきらかに何かある。
しかし、右近左近はあっという間に姿を消してしまった。
春之助は巧みな馬術で荒れた道を急ぎながら、独り言のように呟く。
「兄上は普段はとても優しくて、争いごとは嫌いだけれど、すごく強い。私は稽古で一度も勝てたことがないし、剣術だけじゃなくて柔術も強い。毒や妙な薬などにも詳しいから少しでもおかしいと思えば口にしないし、だから……きっと大丈夫だ。楓も、そう思うだろう?」
『はい、春之助さま』
春之助に狐の楓の言葉は通じていないが、春之助は返事を求めてはいないだろう。
「ただ、心配なのは……兄上が物凄く初心だと言うことだ」
春之助の表情が一気に暗くなり、楓は俄かに心配になる。
『はい?』
「女子の見え透いた罠に簡単にハマりそうで……。兄上は、好いてくれる相手にとても弱い。強く突き放せないところがある」
『それはつまり、秋弦さまが浮気するかもしれないということでしょうか?』
「兄上は、押しに弱いから……」
『押しに押されて、押し倒されるということでしょうか?』
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